家族

11

一ヶ月前と同じ光景が私の目の前に映る。

ベットの上にあるのは緑色の石。確か憎いあの黒い集団の人に渡した筈――



『主ハオモシロイアソビヲオシエテクレタ...ナゼ我ヲテバナスカ』



あぁ…逃げられないのか。ならとことん堕ちてやろう。私にはもう何もない。

















山崎ご乱心騒動の次の日の朝、畳の上では昨日の騒動元が寝そべっていた。杉原が背中に湿布を貼っている。

「痛い…」
「そりゃあ、あんだけ動いたら筋肉痛になるわ」
「すぐ筋肉痛になるのは若い証拠。私ぐらいの歳になると数日後にくる」

側にいた永倉がケタケタと笑い井上が茶を啜る。
その横では沖田が山崎の隊服をバサバサと揺らしたり眺めたりして「どこにあんだけ武器が入ってたんでィ」と言いながら首を傾げていた。


建物半壊三件出したものの負傷者は永倉と斉藤だけで一般市民は無事だった。しかし理由は何であれ騒ぎを起こしたのは間違いない。山崎には三ヶ月の減給処分が言い渡された。土方曰く「これだけで済んだのは近藤さんのおかげ」だそうだ。


「はい、終わりー」
「ありがとうございます」

山崎は杉原に礼を言うと「アイタタタ…」と言いながらゆっくり起きあがった。

「江戸東第二高等学校だったっけ?」

斉藤が地図を広げて山崎に聞く。

「はい。制服着てましたから……ちょっ、沖田さん。服返して下さいよ」
「四次元ポケットでも仕込んでんのかィ?おかしい。絶対おかしい」
「沖田さんのバズーカも同じようなものでしょ」

服を沖田から奪い返しそれを着る。

「いっちょ行ってみるかなぁー…女子高生かぁ…」
「捕まるようなことはするなよ」

ヘラッと笑う藤堂を永倉はちらりと見、釘を刺した。

「狂った山崎が真っ先に親子を狙ったんだが、やっぱ何か関係あるんかね?」
「んー…全件の被害者が家族だからねぇ。あるかも」

斉藤が地図に目を落としたまま永倉の問いに答える。すると沖田は山崎の方を向き「どうなんでィ。狂った人」と聞き山崎は「覚えてませんよぉ…」情けない泣きそうな声で答えたのだが。

「永倉さーん、杉原さーん、時間ですよー。武田さんは先行っちゃいました」

丘が襖から顔を出す。湿布を片づけていた杉原が「今行く」と立ち上がり永倉も「おう」と返事をすると刀を杖代わりにして立ち上がり腰に差した。一応太股を負傷しているのだが人員不足なので休めない。

「見回り行ってくるわ…あ、副長」

杉原に続いて永倉が部屋から出ようとすると土方が入ってきた。

「あぁ…見回りか。原田は帰ってきたのか?」
「えぇ。即行自室に入って爆睡しましたけど」

騒動に参加した原田は夜勤だったので完徹したようだ。土方は「そうか」と呟くと辺りを見渡す。

「…近藤さん知らないか?」
「いや、そういえば見てませんねィ」
「まさかこんな時に志村家には行っていないと思うが」

溜め息をつき斉藤の元に寄る。

「山崎の話によると、例の石の持ち主だったと思われる女性は江戸東第二高等学校の生徒らしいです。今日は平日ですし学校もあるでしょうから恐らく登校しているかと思いますよ」
「重要参考人で呼ぶ必要があるな。藤堂、山崎、その女連れてこい」

土方の言葉に山崎は「うーん」と唸る。

「ついて来てくれるかなぁ…何か凄い怯え……ヒッ!」
「俺が連れてこいと言ってるんだ。何が何でも連れてこい。分かったら返事!!」
「はいぃぃぃ!!!!!!!!」

鬼の形相で睨みつけられ筋肉痛とは思えない機敏な動きで立ち上がり青ざめた顔で敬礼をする。

「ヤクザのボスかよ…」
「やっぱり山崎はこうでなくっちゃね」

呆れた顔で二人を見る藤堂と苦笑する斉藤。その横で沖田は何やら服をあさっていた。

「総悟…何をしている?」
「高校行くんでしょ?制服着るんでィ」
「お前も行く気か。つかそんなん着なくていいわぁ!!!いや、いっその事その空の頭マシになるよう勉強してこいやぁぁ!!!!!」





戻る

- ナノ -