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ガラガラ――
バズーカで壊された建物が音を立てて崩れている。
住人が居るかどうか何てこの子供には知ったこっちゃない。もし居たらごめんなさい、居なかったらラッキー、そんなものだった。
幸い今回はラッキーの方だったようだが。
「これはいったいどういう事でィ」
バズーカを置き近くにいた斉藤に聞く。
「よく分からない物には迂闊に触らない方が良い…みたいな?」
「なるほど」
(分かったのか?)
斉藤の言葉に頷いた沖田を見て原田と永倉は心の中で突っ込む。
「!」
白煙の中で何かが光る。数本の苦無が飛び出してきた。沖田は一歩前に出て抜刀すると金属音と青い光を放ちながらそれを弾き落とす。
ガランガランと音を立てて苦無が地に落ちていった。
「……山崎はこんなに力強かったかねィ」
予想外に腕が痺れたのか顔を歪め刀を見る。細かい刃こぼれができていた。
「右之の言葉でパワーアップされてスーパー山崎3に進化したからなぁ」
永倉が原田を睨みつつ言う。沖田は刀の峰を肩に乗せると「へぇー」と呟いた。
「じゃあ俺はスーパー総悟4でィ」
山崎が宙を飛び四人に向かって苦無を放った。四人がそれぞれ四方に分かれ飛んで避けると苦無は地面に刺さる。着地をし赤い目を光らせて周りを見渡すと地を蹴り忍刀を横に構えて手負いの永倉に襲いかかった。
永倉は腰を落として刀の両端を持ち縦に構えそれを防ぐ。忍刀と鞘が当たった衝撃で体が後ろへ下がるが何とか歯を食いしばり足に力を入れ耐えた。右足からは血が滴り落ちている。
間を空けずに山崎がもう片方の手に忍刀を持つと永倉の脇腹を目掛けて白刃を振り上げ突き刺す――が、横から斉藤が体当たりをしてきたのでそれは叶わず忍刀が手元から離れ地に転がった。
二人はもつれあって地面を転がる。斉藤が山崎の両手を地面に押しつけ上に伸し掛かる事で止まった。
「山崎!!いい加減にしろっ!!」
斉藤は上体を起こし下にいる赤い目を見据えながら悲鳴に似た声で叫ぶ。
「取り返しのつかない事になるよ?!戻ってこい!!」
「終!!危ねぇ!!」
原田の叫びに弾かれたように後ろを振り返る。山崎の膝下から仕込んでいたであろう刃が出ており斉藤の背中に向かって膝蹴りのように突き刺してきた。
「っ!!」
咄嗟に身を捻って交わすが避けきれず脇腹を斬りこまれる。噴き出す血を手で押さえ山崎の上から転がり落ちた。血が点々とその後を続いている。
山崎は立ち上がり斉藤に追い打ちを掛けようと苦無を構えたが、沖田が鞘を投げつけ手から落とす。
原田がチッと舌打ちをすると山崎に近寄り胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「お前は真選組副長直属の監察方だろ!!んなよく分からん石に負けてどうすんだ!!副長の顔に泥を塗る気か?!」
「右之!」
永倉が離れろと声を上げようとしたが、 山崎の動きが止まっている。
これは――
「副長だ!副長の名前をだせ!!」
もう山崎を元に戻すにはこれに賭けるしかない。
「副長がストレス発散の場所が無くなるって泣くぞ!」
「誰が副長の煙草とマヨネーズの買い溜めに行くんだ!」
「死ね土方ァ!!」
「…何か違わない?特に最後」
副長の名を出せば良いと思っているのか山崎という人物をいったいどこに位置づけているのか、思わず斉藤は三人に突っ込みをいれる。
しかし山崎には効果があったらしく動きが止まったまま何もしてこない。
「んあぁ?公衆の面前で副長副長と叫びやがって……つか総悟、死ねって何だコラ」
しかもご本人登場。
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