創作語り

無題3

シトリーの暴走に気を取られ、天井に潜む存在を見逃していた。咄嗟に銃口をそちらへ向けようとするも、それよりも先に降ってきた男がシトリーの首元にナイフの切っ先を押し付け、ニュクスの動きを静止させる。下手に動けば、その場でシトリーの喉を掻き切るつもりなのだろう。ニュクスは舌打ちし、銃を構えたまま思考を巡らせた。犠牲を厭わず任務を遂行するか、任務を諦め投降するか。最悪、自らの身を差し出して二人を解放してもらう取引も考えた。だが確実ではない。相手が隙を見せない限り、この状況を打破する術が見当たらない。

「ったく、鳥野郎が鬱陶しくて仕方がなかったんだが仲間が潰してくれて助かったぜ。被害も出たが、テメエ等の首で帳消しになりそうだしなあ。ついでに銀月が手に入るってんなら最高の状況だと思わねえか?」
「俺はついでかよ」

扱いが些か雑な気がするが、今はそれについて考えている余裕はない。こめかみが引きつるのを感じながら、ニュクスは相手の出方を伺った。

「ま、これで葬儀屋連中に一矢報いることが出来るぜ。目障りだったンだよ、この街で幅利かせてよォ!」
「……ッ!」

有利な状況で気分が高揚しているのか、ナイフを持つ男の手に力が入り、先端がシトリーの首に食い込む。未だ疲弊して動けないシトリーの口から掠れた声が漏れた。普段の彼ならば、この程度の男など相手にもならないだろうに。

「楽には死なせねえよ。今までの恨み、たっぷり返させてもら……ーー」

状況が好転するビジョンが見えない。やはり、命の選択をしなければならないか。ニュクスが腹を括ろうとした瞬間、シトリーの上に伸し掛かっていた男の体が突然横に吹っ飛んだ。

2023.07.30 01:09

無題2

それからシトリーはあっという間に残りの敵を殲滅して見せた。彼の異端の力はいわゆる降霊術で、精霊を自らの身に憑依させ、一時的にその力を行使できるようになるというものだった。強い力を宿すことが出来るが、憑依する精霊の属性は能力を行使するまで分からず、体に掛かる負荷も尋常でないため、使い所が難しいといつかシトリーが言っていた。

「はっ……ァ、はあっ……っは……」

シャベルを『床』にめり込ませ、シトリーはその場に屈み込み、荒い呼吸を繰り返す。憑依したのは雷の精霊だったらしく、全身に雷を纏ったシトリーは身体能力を飛躍的に向上させ、目の前にいる敵を容赦なく叩き潰していった。幸い、敵と味方の区別はついていたようで、その鉄の塊がニュクスの頭部に振り下ろされることは無く、命拾いしたとニュクスは安堵の溜息を漏らした。流石にあのシャベルで頭部をかち割られたら生きていられない。

「……レラ、イエ」

能力が切れ、精霊も去っていったことで冷静さを取り戻したのか。シトリーは掠れた声でレライエの名を呼んだ。倒れているレライエは、意識を失っているのか反応がない。

「レライエッ……ーーッ!?」

ふらつく足取りでシトリーがレライエの方へ向かおうとした、その時だった。天井から黒い影が降ってきて、シトリーの上に圧し掛かった。

「随分好き放題やってくれたじゃねえか、墓守野郎がァ!」

2023.07.27 23:49

無題

一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
あのレライエが、背後を取られるなんて思わなかった。

「かッ、は……!」

刃物を突き立てられ、声にならない悲鳴と共に吐血する。ポタ、ポタタッと血が床に滴り、やや遅れてその身が崩れ落ち、倒れた。

「ーーレライエッ!」

離れたところで応戦していたシトリーがそれに気付き、彼の名を叫ぶ。その声を聞いて、ニュクスも状況を理解した。前衛のシトリーに、遊撃のニュクス、そして後衛のレライエ。後方に控えるレライエならば大丈夫だろうと。完全に油断していた。前方にばかり気を取られていたのがまずかった。
夥しい量の血がレライエを中心にじわじわと広がっていく。それと同時に、ニュクスはシトリーの顔が青ざめている事に気付いた。目は大きく見開かれ、武器であるシャベルを持つ手が震え、明らかに動揺しているのが分かる。その動揺の仕方にニュクスは眉を顰めた。

「あ、あ……ぁ……」

眼の前の敵は何とか処理できているようだが、周囲の状況が見えなくなってしまっている。これはまずい。今夜の仕事はもう完遂できないかもしれない。下手をすれば全滅だ。銃撃の効かないニュクスはまだ何とかなるが、遠距離攻撃に対応する術を持たず、レライエの支援に頼っていたシトリーが倒されるのは時間の問題だ。そうなれば後戦えるのはニュクスだけ。戦闘を続けるか、脱出するか。敵の総数が分からない以上、ニュクス一人で戦うのは得策とは言えない。脱出するにしても、動揺しているシトリーと負傷者のレライエを抱えて敵の包囲網を抜けるのはかなり厳しい。認めたくないが、これは詰みというものではないだろうか。

こうなったら玉砕覚悟で重機関銃を全方向にぶっ放すか。発砲を続けながらニュクスが思考放棄をしかけた、その時だった。

「うあァ"あああああああああああああああああああっ!」

獣の咆哮にも似た叫び声と共に、シトリーの全身は雷に包まれ、黄金色に輝いた。

2023.07.26 23:51

兄弟の話

ニュクスはいない。ジェレマイアも一人っ子。マスターはいたかもしれない。キコはいた。ユリシーズもいた。現在進行系で居ると言えるキャラがほとんどいない。双子であるシトリーとレライエくらい。

シトリーとレライエには実は他にも兄弟がいる。でも二人はその事実を知らない。物心つく頃には孤児だったから。中立都市に兄弟がいる事も知らない。ちなみにその兄弟、なんと本編内に出てたりする。誰かはまあ、言わなくても分かるんじゃないかなあ的な適当なアレ。ナハトではない。

2023.07.05 23:39

生体兵器の祖

最初期に生み出された個体の中でも特に強い個体には『王』の称号が与えられた。竜王、獣王、水獣王、空獣王など。彼らは今でも生きているとされ、中立都市を治める大魔女は竜王か、その系譜ではないかとされている。また、獣王は多くの子孫を残しており、中立としにも何人かその子孫が住んでいるという噂がある。

2023.07.04 23:42

ニュクスは刃物を振るえない

料理するとか、日常の場面でなら使えるけど武器としては握れない。握って、人や動物に振ろうとすると手が動かなくなる。本人曰く原因は不明。まあ戦闘においては銃があるから十分だとか。ジェレマイアはそもそも血を見たくないのでナイフとかは持ちたくない人。リュウトの太刀は大太刀通り越してモンハンのアレレベル。シトリーは職業上の理由で刃物は持たない。レライエはカトラリーより重いものは持てない(大嘘)キコは元騎士なので実は剣を持ってる。が、持ち歩かないのでいざという時の戦闘は異端の力で生み出した血の剣。

2023.07.03 23:43

東の魔女

東エリア管轄の魔女で大学の理事長で異端者で魔術の心得もあると設定大分モリモリなんですがその割には煮詰まってないんですよね。とりあえず異端の力は刃を操る能力。ニュクス(銃使い)の刃物版。小型ナイフから大剣まで使いこなす。


どうでも良いけどあるナイフの名称が思い出せなくてモヤモヤしてる。画像検索しようとしても出てこない。なんだっけ。

2023.07.03 23:36

キコの話

生まれは王国。貴族ではないが代々医者を輩出する由緒ある家系に生まれる。兄が二人おり、彼らが家督を継ぐことになっていたが、医者の家系なので後継ぎでないキコも幼少より医学を叩き込まれる。
成人すると同時に騎士団に入団。衛生兵として戦場の最前線へ送られる。現場は想像以上に過酷で、休む時間はほとんどなく、同僚と共に負傷者の対応に追われた。物資もなかなか補充されず、やがて現場の衛生兵だけでは全員を診ることが難しくなり、命の選択を迫られるようになる。救える命を救い、救えぬ命を捨てた。運び込まれる騎士たちの姿は壮絶で、敵である帝国が放つ生体兵器に蹂躙された彼らの苦しむ様は徐々にキコを含めた衛生兵たちの精神を削っていった。手遅れな者はせめて苦しまぬようにと止めを刺し、そうでなくても手が回らないばかりに苦痛を長引かせてしまう彼らに初めこそ罪悪感を抱いたが、やがてその感覚も麻痺していった。
ある日、手術が必要な騎士に対し、道具が揃えられない状況に陥る。眼の前の騎士は腹を割かれ、内臓が今にも零れそうな状態だった。せめて針と糸があれば。そう思った瞬間、キコは持っていた書類で指先を切ってしまう。すると、指先から滴る血は糸を通した針となった。血を変質させる異端の力。偶然の発現だった。驚くよりも先に手が動き、その騎士の手当は何とか成功させることができた。これは、使える。王国では異端者は自然界から見放された者として忌み嫌われる。だが、なりふり構っていられない。今はただ、目の前の命を救うことだけを考えれば良い。キコは自身の力を用い、騎士たちの治療にあたった。それにより、救える命は増えた。
しかし、やはり異端者は赦されざる存在。治療を受けた者か、力を行使する瞬間を見られたか。内部告発により、キコは捕らえられ、異端審問にかけられる。救ってきた仲間から拷問を受け、自白する前に戦場に設けられた簡易な裁判で死刑判決を言い渡された。火あぶりの刑に処す。仲間のために、心身が疲弊しても尽くしてきたつもりだった。異端の力を使ったのは、そんなにいけない事だったのか。見捨ててしまえば良かったのか。絶望に打ちひしがれ、虚無を抱えたまま火を放たれた。慈悲すら貰えなかった。異端者は苦しんで死ねということか。燃え盛る炎の中、熱と痛みに悶絶し、意識が遠のく中。離れたところから騎士たちの悲鳴が上がった。敵襲、敵襲と叫んでいるようだったが、何があったのか知る前に意識を失った。

その後、キコはある人物によって救助され、一命をとりとめた。全身、特に顔半分に酷い火傷を負っていたが、その人物の懸命の手当によって救われた。お人好しなその人物は死にたかったなら殺してあげるし、生きる意志があるなら逃亡の手助けをするとキコに告げた。どうしたいか自分でも分からずにいると、その人物はできれば生きていてほしいと言う。それなら生きようと決め、キコはその人物の手配により中立都市へと流れ着いた。医師免許はないので、闇医者として南エリアで暮らすことになった。この時、生まれたときに与えられた名は捨て、キコと名乗ることにした。

2023.07.03 00:15

魔法使いになれなかった魔術師

ユリシーズはどうして魔法使いに固執するのかという話。

生まれは中立都市。王国にルーツを持つ夫婦の間に生まれる。両親は精霊崇拝の精神が強く、魔法使いに強い憧れを抱いていた。が、その割に魔術への理解は乏しく、自分たちが精霊に選ばれなかった=魔法使いになれなかったことが無自覚なコンプレックスとなっていた。
ユリシーズには歳の離れた姉がいたが、姉はそんな両親の異常性に早々に気付いて蒸発。残されたユリシーズは両親から魔法使いになりなさいと物心つく頃より言われて育つ。魔法使いになれば両親は自分を認めてくれる、褒めてくれる。いなくなってしまった姉に代わって自分が両親の期待に応えなければ。幼いながらもそう思い、毎日自然界、精霊に対する理解を深めようと本を読み、魔術の知識を身につけた。いつ精霊に見初められ、魔法使いになっても良いように、魔法を制御できるようにと。遊ぶこともせず、暇さえあれば本を読む。魔術の練習をする。自然と触れ合う。物覚えは良く、子供ながらに優秀な魔術師となるものの、魔法使いになることはなく成長していく。両親はそんなユリシーズを見て「貴方はとても優秀だからきっと立派な魔法使いになる」と事あるごとに言う。周囲も、勉学において優れた成績を修めるユリシーズの未来を期待した。
天才だったわけじゃない。魔術の知識だって、「普通の子供」であることを犠牲にして得たものだった。ただ認められたかった。期待に応えたかった。気づけば膨大な知識と技術を身につけた、最強の「魔術師」となっていた。学校は成績優秀で飛び級しまくり。その後異例の若さで東エリアの大学教授に。最早中立都市に限らず、王国でも右に出るものは居ないほどの実力者。そう、「魔術」に関しては。結局、最強になってもユリシーズは魔法使いにはなれなかった。
魔法使いとしての力の顕現は人それぞれ。幼少期の者もいれば、晩年死ぬ間際の者もいる。だから、ユリシーズにだって可能性はあるはず。だからこれからも、精霊と自然界に対する理解を深めることをやめない。やめられない。やめるわけにはいかない。すでに両親は他界している。魔法使いになれなかったからと言って誰かに責められるわけではない。罪でもない。悪でもない。それでも、幼少期からの期待が呪いとなって、今もユリシーズの精神を追い詰めている。



そんな矢先に大学で教え子となったのがジェレマイアで、魔術師としての成績は落第レベルなのに風の魔法使いでユリシーズの情緒がぐちゃぐちゃになるのはまた別の話。

2023.07.01 23:52

中世ファンタジー風の話

四人の騎士の話を色々練ってはああでもないこうでもないと修正してる。形にしようかどうしようか。白銀の狂詩曲とはまた違った性癖詰め込んだ感じになると思うんだけど。BL前提。もう少し考えてからにするか。

2023.06.26 23:19
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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