▽ 28話
「そんな大した事言ってねーよ」
アタリは頬を掻きながらそっぽを向いた
「…こんな風に思っていてくれたのVoidollとアタリくらいだから私にとってはすごく嬉しいんだ」
アタリはそう聞いた瞬間、複雑な顔をしていた
「お前…今まで…」
そうアタリが言いかけた時だった
「あっれぇー?アタリくんとナナシじゃん、ナナシ生きてたんだ、いらないところで運使ったよねー、ところでなんで仲良く喋っているのかな?」
前方にいるマルコスがアタリの声を遮った
そのお陰でアタリは何を言いかけていたのか分からなかった
マルコスの隣にはやはりアダムもいる
「マルコスには関係ねーだろ、何しに来たんだ」
「別に?楽しそうな話が聞こえてきたから僕達も参加してみようと思ってね」
「どうせ、ロクなことねーんだ」
「酷い言いようだねどうしてそんな風に言われなくちゃいけないのさ」
「だってお前まだナナシの事分かってねえだろ」
「…そんな事言ったらアタリくんもでしょ?」
「そんな事…」
「“ない”とでも言いたいの?どうせアタリくんだってナナシも、僕も、みーんなの事なんて全然知らないクセに」
「でもアタリは私の事を知ろうとしてくれているんだよ」
「いきなりでしゃばって何なの?お前だってなにもしらないじゃんか」
「…そうだね、私は何も知らないよ」
「…取り敢えず貴方は喋らないでください。俺の耳が腐る。」
そうアダムは言った
しかし何故かそこまで傷は付かなかった
それは多分アタリが居るからだ。
もう、独りじゃないから。
「それは謝るでも喋らせて」
そう言うとアダムとマルコスは何故か大人しくなった
「皆の事なんて何一つ知っていないのは本当の事。でも、知ろうとする事は悪いことじゃないよ、知ろうとしないほうより全然数億倍もいいよ」
「だから何?何が言いたいの?」
「…私を馬鹿にしたり悪口言ったりするのは別に問題ないよ、でもアタリを馬鹿にしたり悪口言ったら絶対に私は許せないよ」
もちろん私は傷がつかないわけでもないけど慣れているから馬鹿にされたり悪口言われたり、精神的に痛めつけられたり、もちろん暴力なんてものも、
アタリが傷つくよりも数百倍いい。
「綺麗事ばっか言ってくれるじゃんか」
「…私はただアタリを酷い目に遭わせたら許せないって言いたいだけだよ」
そう私が言うとアダムとマルコスは飽きれた嫌な顔をした
「いつの間にそんなに仲良くなったのでしょうか」
「どうせ仲良しごっこでしょ」
「それがいつまで続くかどうかなんですよね」
「たしかにね…どうしてアタリくんはそんな風になっちゃったのか僕には理解不能だよ」
「頭をうってしまったのでしょうか、それとも洗脳されたのでしょうか」
「チッ…」
アタリは凄く怖い顔をしていた
今でも2人に襲いかかりそうなくらいに
「アタリをそんなふうにいわないでってば!」
「…だからそういうのウザイ、目障り、本当にやめてくれる?」
「てめぇ…」
「あーあ、くだらない話してたら喉乾いちゃった、僕はこれで失礼するね」
そしてマルコスはアダムと一緒に行ってしまった
「…アタリ、ごめんね」
「なんでお前が謝るんだよ」
「だって私のせいでアタリは…」
「なーに、そんなの全然いいんだよ、お前、きっと今まで辛かったんだろ。だからお前に比べたら全然問題ないだろ」
「なんでそう思うの」
「だってさっきのだって普通じゃ充分辛い筈なのにお前は自分にたいして全然…とも言えないが気にしてなかっただろ」
「そんな事ないよ、強がってるだけかもしれないし」
「自分に自信持てよ」
と、そうアタリは言った
「それじゃ、俺もそろそろ、失礼するぜ」
それを言い残してアタリは去っていった
「自信…か」
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