傷つけ愛 | ナノ


▽ 29話



さっきアタリくんたちと口喧嘩した
アタリくんとは喧嘩したのは久しぶり


僕がいきなり口出ししたのはアタリくんとナナシが仲良く喋っていたのが無性にイラついたからだ。


「マルコスさん、水ですよ」

「ん、ありがと」


僕はアダムから水の入ったコップを受け取った。


「…なぜさっきマルコスさんはあの2人が会話中に口出ししてしまったのですか?放っておけばいい話なのに」

「なんか無性にイラついたから」

「もしかしてアタリさんが元親友だったからナナシと話しているのが気に食わなかったからでしょうか?」

「うーん、よくわかんないや」


自分自身よく分からなかった。
二人が喋っているのを見て最初は

(あの2人なんかしゃべってる、そういえばナナシ生きてたんだ)


って、思ってた。

アタリくんと喋っているナナシの顔は笑顔だった。

それを見て僕は何故か腹が立った


心がモヤモヤした
そして何より自分自身驚いた事は


そのアタリくんに腹が立ってしまったことだ


その感情は自分にもよく分からなかった


「…ナナシは笑えば可愛いんですけどね」

「えっ、」


ボソッと、アダムの呟いた言葉は僕の耳がしっかり聞きとらえた


「聞こえちゃったみたいですね…まぁ笑えば顔が、ですけどね」

「…そう言われてみれば確かにね」


確かにナナシは笑えば可愛い
可愛いのは認めるけど

…僕は大嫌いだ


リリカちゃんが怖がっちゃうから

約束守ってくれなかったから

助けてくれなかったから

…ナナシのお父さんが最低な人だったから


なのに今までのこのことここまでやってきたナナシが何よりも許せない

どうせ家族に愛されてたんだろ、大切にされてたんだろ


ここに来たナナシはころっと、何も知らないような顔をして来た


僕たちの約束なんて何一つ覚えていなかった


だからナナシは嫌いだ、大嫌い


「…おお、マルコスとアダムじゃないか調子はどうだよ」

「え…?」


背後で嫌な声が聞こえた。
僕は驚いた。

ふとアダムの顔をみた

アダムも顔が凍りついていた。
顔色が悪い


この声の正体、それはもう二度と聞きたくない声。

僕は振り向いた
…やっぱりだコイツだった。


「…ま、マスター、よくお元気で」


僕はできる限りの笑顔でそう応えた


「…たく、この前遊びにここに来たらよぉ、メグメグに手叩かれたんだぞ?ほら、まだ赤くなってる」

「…本当ですね」


あれは叩かれて当然だ。
このマスターがリリカちゃんに近づこうとしてメグメグちゃんが怒って思いっきり叩いたんだ


メグメグちゃんは凄い。

今までこのマスターに心の傷に残る事を沢山されてきたのにマスターに歯向かおうとしている


後でここに来たヒーローだから心の傷は浅いのかもしれないが僕は凄いと思う。

それに比べて僕は弱虫だ。


「あとで調教してやんねぇとなぁ…」


ニタァ…と、とても気持ち悪く笑う

見ているだけで目が腐りそうだ。


この場所で同じ空気を吸っているだなんて思いたくもない。


なんでまたここに来たんだよ、

さっさと消えろよ、このクズ野郎。


お前さえいなければ良かったのに、

お前さえいなければ皆助かったのに


…お前さえいなければナナシはこんなに嫌われなかったのに


なんだよ、僕ナナシの事なんでそういう風に思ってるんだよ、

今まで「憎い」「ウザイ」「消えろ」だなんて言ったし思ったのに


いや、違う、ナナシはコイツと血が繋がっているからこそ嫌われているんだ。

家族だっから。

だからそういう風に思えるんだ。だから嫌われて当然だ


だからそう、コイツさえいなければ良かったんだ



「…なんだよマルコス、その目は」


いつの間にか表情に出ていたのかマスターを不機嫌にしてしまった。


これはまずい


「…マルコスさんはちょっと寝不足なんです。許してやってください」

「アダム…」


アダムが庇ってくれた


「チッ、今回ばかりな、おい、酒持ってこい」


マスターは僕に命令した

「アダムありがとう」
そう小声で伝えて僕は酒を持って行くために食堂へと向かった


…リリカちゃん達にはコイツに会わせたくないな

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