傷つけ愛 | ナノ


▽ 27話



今までの涙を全て流してしまったのかもう目からは涙は出てこなくなった


かなりの時間泣いてしまった
その時間Voidollは何も言わないで抱きしめてくれていた

それが凄く安心した
貴方は独りじゃない私がいるよ、とVoidollは口で言わなかったがそんな事を伝えていたような気もした。


「Voidoll、ありがとう」

「イイエ、ソレホドレデモナイデスヨ」

とてもVoidollの眼差しは暖かかった
心もとても暖かくなった


でもそんなときにこの雰囲気をぶち壊すサイレンが鳴った


ビー!ビー!


いきなり機械室の機械が鳴り出した


「…マタデスカ、ナナシサン、私ガイウマデココカラデナイデクダサイ!」


それだけを言い残してVoidollは急いで部屋から出ていった


…まただ、Voidollは何かを隠しているようだ
まるで私を何かから守るかのように


そう考えるといてもたってもいられなくなり、Voidollの後を急いで追った。が、それは遅く、もうVoidollは見えなくなった

私はすぐには諦めることが出来ず、ほかの場所を探すことにした


「…ナナシ!」


横から私を呼ぶ声が聞こえた

急に呼ばれてびっくりしてすぐに振り向いた


「アタリ…?」


その人物はアタリだった
アタリの姿を見て私はアタリに申し訳ない気持ちになった

死ねなかった事がとてつもなく今、申し訳なかった


「お前ッ…生きて…」

「…死なくてごめんね、生きててごめんなさい。」

まず勝手にその言葉が自身の口から出た
私は頭を下げた


「チッ…」


舌打ちが聞こえた
やっぱりこんなの許されない


「頭上げろよ」


ぐいっと顔を自身の顔が見える様に私の顔を上げた


思っていたっていた言葉とは違う事を言われて私は驚いた
そして私は頭をしっかり上げた


「生きててよかった…ごめん、俺が悪かった」


更に驚いた、私は固まってしまった


生きててよかった…


小さくボソッとそう聞こえたような気がした

多分気のせいだ
そして10秒後、ようやく口が開いた


「な、なんで謝るの、私が悪いのに」

「いや、お前は悪くない、俺が悪かったんだ本当にごめん」


アタリは頭を下げた


「頭上げてよ」

「嫌だ、こうしねぇと俺の気がすまねぇんだよ」

「やめてよ、私なんかに謝らないで」


そう私が言うとアタリは頭を上げた


そのときのアタリの顔はとても悲しそうな顔をしていた


「“なんか”なんて言うなよ、」

「…」

「何度も言うけどお前は悪くないんだよ」


なんで急にそんな事言うの?
私がすべて悪いのにどうして?


「私の方がずっと今までいい思いしてきたんだ、なんでそんな事言うの!アタリは悪くない!」

「いいや、お前も、俺も、過去にお互い何があっただなんて知らないんだ。だからお前がいい思いしてきただなんて言いきれないんだよ、だからそれを勝手に決め付けて追い込んでナナシの痛みなんて分からないのに殺そうとした俺が悪いんだ」

「…」


正直何も言い返せなかった

だって私はアタリ、それにみんなの事なんて何一つ知ってもいないんだ
私も決めつけていたんだ



「…俺のことは一生許さないでくれ、この出来事は俺が犯した過ちだ」

「そんなことないし、アタリは悪くないよ」

「お願いだ、許さないでいてくれればそれでいいんだ。」


そのときのアタリの目は必死だった


「たのむ…!」


なんでアタリはそこまでするのだろうか
アタリは悪くない筈なのに

しかし、ここまで言われて断ってしまうと心も痛むしアタリも嫌がる


「…分かった、今回の出来事でのアタリは一生許さない」

「よかった…」

「でも、アタリも私を許さないで」

「なんでだよ、お前は悪いことなんて一つもしてねーだろ」

「した」

「何がだよ」

「私はみんなの事を分かろうとしていなかった、勝手に決めつけていたんだ、だからアタリと一緒、私も悪い。だから一生私の事も許さないで」


アタリは小さい溜息をついた


「そういうことじゃねーんだよ」

「正直私はアタリが悪いだなんて思ってないよ」


アタリは一瞬その言葉について考えた


「…つまり一緒だって言いたいんだろ」


私は頷く

その通りだ。
私は自分が悪いと思っている。しかしアタリは自身が悪いと思っている。

つまり私が一生このアタリの事を許さないという約束をするならば、私は逆にアタリに一生この私を許さないという約束をしなければ交渉しないという話だ。


「…という事はこれを俺が断ったらお前が俺の事一生許さない、事が無くなることになるんだよな?」

「うん」

「…よくめんどくせぇこと考えたな」


アタリは大きなため息をついた


「しょうがねぇ、約束するか」


わたしは素直に喜びを感じた
これはいったい何に対しての喜びなのだろうか。


アタリと近づけたこと?
アタリと互いに想いを共通した事?
ただ単に約束が出来たから?


…でも何か違う。


この喜びは暖かい。嬉しい。
ここにきて初めて喜んだ。

きっと私はアタリと少しでも仲良くなれたから嬉しいんだ。
ちゃんと話せたから嬉しいんだ。


…でもなんでアタリはいきなりこうなったのだろうか、こんなのいつも通りのアタリじゃない。別に悪いとは思わないが、どうしてなのだろうか。

私がバグで意識が無かったあいだ、アタリは私の肉体が死んで本当に死んだと思って嬉しかった筈だ。


「…アタリ、どうしていきなり私にそんな態度になったの」

「そう思うか?」

「…自惚れかもしれないけど…そう思う。」

「…まあ、そうなのかもしれないけどな」


アタリはゆっくり口を開いた


「お前が倒れて、死んでしまったと思ったら急に怖くなった。

最初はその自分の気持ちはきっと自分のせいで死んだから自分のせいになるのが怖いんだ、
なんて思っていた。

…お前が倒れてから時間がたって心に穴が空いたような、何か足りないような、失いたくないものを失ったという感覚が浮き出てきた。
それからもう少し時間が経ってようやく気がついたんだ

心は満たされている筈なのに悲しくて寂しくて心が空いていたのは俺はまだナナシを失いたくなかった。その気持ちに気づいたんだよ」


「アタリは私のことそうやって思っていてくれたの…?」

「あ、いや…なんか変な事言ってごめんな、忘れてくれ」


アタリは恥ずかしそうにそっぽを向いた


「変なことなんかじゃないよ、そう思ってくれるだなんて私はそれだけで嬉しいよ、本当にありがとう」


すごく、心が暖かい。心の氷が溶けだしたみたいだ
また泣きそうだ

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