140字SSまとめ | ナノ
Diary

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 捩花
ぐるりと回る紫色の小さな花は、私の心を掻き乱すようで。螺旋を何回巡っても、私の気持ちはあの人に届かない。――お慕い申し上げております。レコォドみたいに呟いたけれど、言葉はくるりと地べたへ落ちた。私、何だか憂鬱よ。薄紫を見るだけで、ぽろりと涙が出てくるの。あの螺旋、憎らしいったら。

(130117)


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2013/03/27 (06:34)


 かすみ草
束ねた白いこの花を、私に似ていると言ってくれたのは貴方だったかしら。私すっかり舞い上がってしまって、すっかりこの花が好きになってしまって。柄にもなく、お庭に種を蒔いたの。この花がいっぺんに咲いたら、真っ白なリボンで花束を作って貴方に贈るわ。赤い糸よりもずっとずっと、素敵なことよ。

(130117)


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2013/03/27 (06:33)


 金木犀
風に揺らぐ橙が漣のように、私の鼻腔を掠めた。――ああ、もうそんな季節だったか、と懐かしくなる。幼い頃、散る花を星のようだと言ったあの少女は、今はどうしているのだろう。金木犀の下、揺れる鞦韆、ひらめく袂、波紋の如く広がるあの香り。互いに背を押し合い、遊んだ日々が呼び戻された。

(130117)


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2013/03/27 (06:31)


 死ぬ
耳を澄ませ、目を凝らせ。それはただ静かにお前をじっと見ている。お前のたましいそのものに張り付いて、息を潜めているのだ。それは黒い虫の羽。もしくは鈍色の鎌。あるいは白い骨の音。さらさらと砂が零れ落ちるように、それはお前の喉元へ確かに手を掛けている。この世界で、誰も逃れることはない。

(130116)


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2013/03/27 (06:30)


 生きる
這い蹲うように、歌を歌うように、泣き叫ぶように、息を止めるように、私たちはそれを貪り、楽しみ、吐き捨て、謳歌する。見ろ。私たちの後ろにそれは続く。逃れることも出来ず、静かに私たちの後をついて回るのだ。切り離せば、二度と戻らない。それは世界の何処か、誰かが欲し、誰かが捨てた、何か。

(120116)


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2013/03/27 (06:30)


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