Diary
▼ 七竃
私はまだ熟さぬ青い実だけれど、赤くなったなら、きっと貴方摘んでくれますか。少女だからとあしらわないで。白くて地味な花だけど、私だって花咲くのだから。そこらの花よりよっぽど丈夫です。貴方の心の炎で七度焼かれたとて、きっと耐えてみせるもの。ね、迎えに来てね。私、待つわ。強い女だもの。
(130117)
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2013/03/27 (06:40)
▼ 椿
とうに切り倒した筈の庭の椿が、夜な夜なぼう、と浮かび上がる。花を血の気の無い女の首に変えて、ぽとりぽとりと落ちるのだ。俺を許せ。恨めしいか。憎らしいか。そうだろう。お前と死出の旅路に出られぬことを未だ怨んでいるのだろう。許せ。意気地無しと罵られようと、俺は首を落としてなるものか。
(130117)
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2013/03/27 (06:39)
▼ 紫陽花
ねえ、貴方に似ている花があるの。雨に似合いの花。貴方みたいに簡単に色が変わって、花びらが大きくて美しいのよ。でも本当はそれ、花じゃないの。本当の花はね、もっとちっぽけで目立たないわ。土によって咲く色が違うの。赤と青、真逆で綺麗だけれど毒を持ってるの。そんな所まで貴方に似るんだわ。
(130117)
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2013/03/27 (06:39)
▼ 胡蝶蘭
私を夜会の花と言った男がいた。そうよ、私は花。甘い匂いの香水、モスリンたっぷりのドレスに、ふわふわのレース。それからベルベットのリボンに、真っ赤なハイヒール。どれもこれも私を飾る物でしかない。蝶の振りをしてワルツを踊って、間抜けな男に根を伸ばし、それはそれは綺麗な花を咲かせるの。
(130117)
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2013/03/27 (06:38)
▼ ガーデニア
雨の中香る、白い花。楚々としたあの人を思い出す。上品、可憐。それでいて底抜けに明るく、奔放で情熱的。白いパラソルをちょいと傾げて、花の香りを振り撒きながら、あちらへこちらへ猫のように蝶のように。私だけが知るだろうか。少しばかり得意気な気分になる。外側だけでは分からない本当の姿を。
(130117)
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2013/03/27 (06:38)
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