Diary
▼ 魚の病
君の美しい脚が、ぱらぱらと剥がれだしてから、七日目。白磁のように滑らかだった肌は、少しずつ薄青く透き通った鱗に変わってしまった。触るとひんやりとした。今に私は魚になるわね、なんて笑っているが、僕は寂しい。人魚病だ。僕は知っているのだ。君はいつか、魚のように水を求めて行ってしまう。
(130203)
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2013/03/27 (06:44)
▼ 花を吐く
軽い咳の音と共に、君の口からは極彩色の花びらが零れ落ちる。臓腑が花に変化する奇病があるというが、君は、そんな大層なものではないさ、と笑う。見ているこちらの思いも知らないで。君からは花の匂いがする。息が詰まりそうな程、甘く、濃く、熟れた香り。多分、死と虚無の香りなのだろうなと思う。
(130203)
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2013/03/27 (06:44)
▼ 水仙
私に良く似た綺麗なお花。気高く咲き誇る白い花。幾度眺めても、飽きないくらい。自惚れ?いいえ、私が私を愛することが、どうして罪になるかしら。だって私は美しいもの。例え花に変えられても良いのよ。こんなにも誇らしげに咲けるのならば。愛しい愛しい、私の化身。私が死んだら、手向けてね。
(130118)
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2013/03/27 (06:42)
▼ 薔薇
僕を薔薇と言ったのは、誰だったか。何度傷付いても、誰も彼も僕を手に入れようと藻掻いてる。棘も蔓も持っているつもりだけれど。可笑しいね。僕を掴むその手、痛くないの?たましいの流す生温い血は、僕を美しくする。花の如く生きよう。僕は何に似ているだろう。情熱、嫉妬、純潔、それとも愛情?
(130118)
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2013/03/27 (06:41)
▼ 彼岸花
そら、足元を舐めるように咲く赤い花。炎のように、境界を分かつ花。越えてはならぬ。それは迷えば戻れぬ彼岸のしるし。彼の岸は恐ろしい。悪鬼が舞うぞ、道具が笑うぞ。亡者が浮かれ、呵々大笑。見てはならぬ、聞いてはならぬ。あれは先遣りの鈴の音ぞ。岩で塞げ。此岸の花の影、穢れがやって来る。
(130117)
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2013/03/27 (06:41)
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