140字SSまとめ | ナノ
Diary

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 浮遊する自我
足が地面に着かないの、と君は怯えた顔で言う。見上げる君は、青白く細い体をぶるぶる震わせ宙に漂っている。零れた涙でさえもかたちを失い、空中に霧散した。空気病。重さだけを失う病だ。藻掻いても何も拠り所が無いのは辛いだろうと思う。風船の如く君が空に消える日を、看取る勇気など僕には無い。

(130204)


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2013/03/27 (06:51)


 凍える臓腑
君の口から吐き出されるのは、小さな丸い氷の粒。体液の汚わらしさは無い。僕はその背中を摩ることが出来ない。微かな体温でさえ溶けてしまう病だ。僕はただ、床に這い蹲る華奢な身体を見つめることしかできない。荒い息でさえ、きらきらとした雪の欠片になって消える。きっと何時かは君も同じように。

(130204)


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2013/03/27 (06:51)


 怒れる光
彼女に触れる者はいない。青白い小さな雷が常に彼女を取り巻いているからだ。彼女は孤独な瞳で僕を睨む。獣のように。他者を拒むことが堪えられないのか。涙を湛えたその眼は僕を捉え、怒り、悲しみ、責め続ける。彼女が最期、フィラメントが切れるように消えてしまうことを、僕は伝えられないでいる。

(130204)


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2013/03/27 (06:50)


 翼と骨
君の薄っぺらな背中に、翼が生えてきたのは何時だったろう。元々骨張っていたそこに、ふわふわの羽毛が現れたとき君は、おかしな話ね、と笑ったが。もう羽ばたける程に大きくなった翼は、小刻みに震える。恐ろしいのだろう。残酷な病だ。君が飛んで行ってしまうのは分かっている。僕には君を救えない。

(130203)


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2013/03/27 (06:49)


 枝生える骸
めきめきと水を吸い上げるように、君の額からは枝が伸びる。正真正銘の植物。まるで角の如く。枝が育つ度、君は真ん丸の瞳からぽろぽろ涙を零し、歯を食いしばって痛みに耐える。哀れな病だと思う。だがそれ故美しい。いつか一本の木に成り果ててしまうのを僕は知っているけれど、未だ言えないでいる。

(130203)


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2013/03/27 (06:49)


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