140字SSまとめ | ナノ
Diary

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 マーブル模様
幼い頃の話。おやつの時間、台所から漂う甘い香りが好きだった。特に、母の秘密のマーブルケーキ。私は、見る度に違う模様のそれが大好きで、いつも母にまとわり付いて作り方を覚えてやろうと思っていた。今では私も母親になった。けれど、あのレシピは結局教えてもらえなかったなあ、と思い返す。

(130327/湖田さんより)


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2013/04/27 (00:04)


 恋文
馬鹿な男と笑われるかもしれぬが、小生、この恋文に一生を掛けたと言っても過言ではあるまい。嗚呼、可憐な花よ。毎朝見かける黒髪の、何と艶艶したことか。パラソルに、鮮やかなる着物、そもそも少女たる要素の全てに縁の無い小生である。袂にそっと、手紙を滑り込ませるだけのこと、何という恐怖か。

(130327/更紗さんより)


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2013/04/27 (00:03)


 月を見る
ひたすらに土を掻き分ける。爪が欠けて血が滲んだ。痛い、いや、痛くない。やらなくてはならないことがある。僕は君に謝らなくては。随分時間が経ってしまったけれど。虫の声、風の音。僕を急かしているようだ。こつん。軽い音と共に見えた白い骨。ようやく君に会えた。ご覧、丸い月が僕らを見ている。



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2013/03/27 (09:50)


 砂糖細工の女
死んじゃう前に私を食べてね、と君は笑った。天辺から爪先まで、君の身体は甘い匂いに包まれている。脆く柔らかな砂糖菓子になってしまう少女病。死に急ぎ、刹那に生き、発作的に恋をする少女の為の病である。ぽきりと折れそうな細い指。奇妙な手触りの肌。つい僕は君の白い腹にナイフを入れたくなる。

(130204)


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2013/03/27 (06:53)


 砂の城
宝石染みた緑色の瞳をぎらつかせて、私の全てはもう駄目なのでしょう、と君は言う。僕は真実を直接伝える勇気を持たない。けれど知っている。数日前から崩れ始めた君の身体は、やがて砂の如く細かく砕け、後には結晶化した眼球だけが残るのだ。こんなことを伝えたくない。だからその笑顔が僕には辛い。

(130204)


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2013/03/27 (06:52)


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