140字SSまとめ | ナノ
Diary

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 手紙
畳まれた紙をそっと広げると、かさりと乾いた音がした。癖のある筆に思わず笑みが零れる。文字をなぞる度に、花の匂いがふわりと香る。この玉章にどんな匂い袋を添えていたのだろう。嗚呼、愛しいあの人に会いたいな。たった紙一枚にあの人の世界が一杯に溢れているけれど、同じ紙一枚がこんなに遠い。

(121205/更紗さんより)



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2012/12/11 (07:19)


 ほうじ茶
紺色の暖簾をくぐると、看板娘の明るい挨拶が飛んでくる。席に着くと、ほかほかと湯気の立つ焙じ茶。これこそ、普段の私にとっての唯一の癒しだ。優しいおかみさんに、職人気質の店主。そして良い具合に古色の付いた内装。日々、取引先と格闘する企業戦士である私にとっては、この定食屋は正に楽園だ。

(121204/きよさんより)


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2012/12/05 (07:32)


 霧雨
さわさわと細やかな風が木々を揺らす。曇り空を見上げると、霧のような雨がしっとりと顔を濡らした。肺一杯に空気を吸い込む。雨の匂い。緑の匂い。花の匂い。空の匂い。虹の匂い。世界はこんなにも美しく、有機的だ。私はこんな天気の日が好き。世界をこの胸に抱ける贅沢を、私だけが知っているのだ。

(121203/八束さんより)



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2012/12/05 (07:32)


 ハイヒール
ぴかぴかの真新しい、真っ赤なハイヒール。夜の町を歩くと、石畳と触れ合う度に軽快な音が響く。すれ違う男達は皆物珍しげに、女達は羨望の眼差しで私を見る。顔をしかめるおじ様には、ひらりと手を振ればイチコロなの。ふしだらだなんて言う人もいるかしら。いいえ、最近の女は自由に闊歩するものよ。

(121203/更紗さんより)



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2012/12/05 (07:31)


 充電
ぱちぱちと、弾ける光が身体に満ちる。私と世界を繋ぐ色とりどりのプラグ。ニンゲンにはきっとわからないでしょうね。繋がる度に、美しい幻影を見るの。言い表せない、極彩色の情報のかけら。ニンゲンは夢と言うかしら?いいえもっと素敵なものよ。ケーブル一本の脆弱な結合で、電気人形は楽園を見る。

(121202/比恋乃さんより)


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2012/12/05 (07:30)


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