Diary
▼ 明け方の夢
鳥の呼び声は遠く、花の香が微かに匂う水辺では緑の蛙が此方を伺う。空を見上げると、濃紺のビロードに零れ落ちそうな星の光。絡繰り仕掛けの月が、丁度太陽と入れ替わった。きりきりと軋む音に合わせて、蝶が飛び交う。此処は何処だろう。これは夢かしら?いえいえ、美しい微睡みと現の間の時間。
(121202/藤森凛さんより)
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2012/12/05 (07:30)
▼ マシュマロ入りココア
幼い私にとって、ふかふかのベッドは唯一の領土であった。ぬいぐるみ達はさながら衛兵で、パジャマは王女のドレスだった。他の子よりも出来ないことは多かったけれど、ママの話す物語と、パパの作るお料理があるから平気だった。何よりのご馳走は、パパの作るとっておきのマシュマロ入りココア!
(121201/更紗さんより)
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2012/12/01 (16:27)
▼ 白磁
彼女の腕はするすると滑らかに美しい。しかし、ひやりと冷たく生気がない。人形のような女だと人は言おうか。否、確かに人形なのだ。反魂によって呼び戻した彼女は別の生き物になってしまったけれど、私はそれでも生涯彼女を愛するだろう。つるりとした頬を撫でると、嬉しそうに微笑んだ。
(121201/Mariaさんより)
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2012/12/01 (13:02)
▼ 仮面
こつこつ、と鑿の音が響く。心許ない蝋燭の明かりに揺らめくのは、若い女の面。白く磨かれた肌は滑らかに炎を照り返す。男は一心に振るう仕上げの手を止め、赤くふっくらした唇をなぞる。そして徐に、面をその顔へ当てた。最上の木地はぴたりと肌へ吸い付く。はて、面妖な。未完成の面はもう外れない。
(121130/mapleさんより)
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2012/12/01 (13:02)
▼ 鬼火
夕闇の中、薄の野原へ妹が駆けて行く。あれはなあに、と幼い声が聞く。指差す先には大きな光が飛び回る。蛍かしら、いやそんな季節ではなかったろうに。つと手を伸ばすと、青く炎のように揺らめいた。慌てて妹の目を袂で隠す。見てはいけない。あれはヒトの触れて良いものではないのだから。
(121130/御陵さんより)
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2012/12/01 (13:01)
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