140字SSまとめ | ナノ
Diary

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 椿
ぽとり、と雪の上に落ちる花。鮮やかな色のそれは、首を落とされたあの人に少し似ていた。同じ名を持つ私とは似ても似つかぬ、大振りの美しい花。あの人の良く愛でた花。成る程、私が首を切られれば良かったのだろうか。愛しいあの人の為ならば、せめて散り際だけは花の名の通りに。

(121209/140ss冬の陣「椿」)



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2012/12/11 (07:21)


 君のいなかった世界
まどろみの中で、僕は分岐点を間違えたようだ。振り返る幼い日の思い出、少年の時の記憶、青春時代のアルバム。どこを辿っても、君の姿が見当たらない。今、僕の隣には誰もいない。君は僕の心が作り出した人なのかい?頬を叩かれて目を覚ますと、微笑む君の顔。良かった、あれは夢だったんだね。

(121209/Mariaさんより)



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2012/12/11 (07:21)


 前髪
近頃私は浮かれるようだ。幸せなのは、切り揃えられた前髪の、林檎の下に見える時。まだあどけない横顔が、私を捉えて笑う時。指を絡ませ、はにかみながら語る時。白く丸いその頬が、薔薇の色に染まる時。風が彼女の前髪を、さらりと撫でて揺らす時、私は少しく嫉妬を覚える。

(121208/比恋乃さんより)



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2012/12/11 (07:20)


 ダイヤモンドダスト
目を覚ますと、針で刺すような寒さが顔を襲う。眠い目を擦りながら窓の外を見ると、金色と虹色が混ざり合ってきらきらと輝いている。急いで隣の妹を起こして、その光景を二人で眺めた。天上の世界はこんな風景なのだろうか。妹はうっとりした目で、天使が来るかもね、と言って、私と二人で笑いあった。

(121207/更紗さんより)



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2012/12/11 (07:20)


 鏡
薄い硝子に水銀を塗っただけの板が、どうしてこんなに私を苦しめるのだろう。覗き込む度映るのは、あの子と同じ顔。殺してやりたい程憎いあの子と、全く同じ私のこの顔。まるで、呪いだ。嫌だ、嫌だ、嫌だ。思い切り殴り付けたら、蜘蛛の巣みたいに皹割れた。歪んだ顔はまるで、私を嬲るあの子の笑顔。

(121205/カンノ秋衛さんから)



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2012/12/11 (07:19)


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