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「とりあえずこの二部屋は好きに使っていいから、それぞれどっちの部屋にするかは悠仁と名前が決めて」


見事学長である夜蛾に合格をもらえた悠仁と名前は、五条に案内されて空き部屋だという二つの部屋を紹介された。

2、3年生達は今出払っていていないらしいが、それもすぐに会えるようになるとのことで。


「隣は恵の部屋だから、何か困ったことがあったら恵に聞いてもいいよ。明日迎えに行くもう一人の子と合わせて、一年は君たち四人だけだからね」

「少なっ!」


四人!?と驚く悠仁に、それだけ呪術師って少ないんだよねえと笑う五条。


「その中でも君たち二人はかなりの有力候補だからね!期待してるよ」

「四人中の有力候補といわれても…」

「そうそう、明日は名前ちゃんの服とか、生活用品とかも見に行こうね」

「…え?」


突然話を振られて驚く名前だったが、五条の言葉の意味を理解した瞬間、ぶんぶんと首を振った。


「私、お金持ってないので…」

「何言ってんの。そんなの僕のポケットマネーから出すに決まってるじゃない!!」


可愛い子はお金の心配なんてしなくていいんだから!と続ける五条に、パパ活の現場を見たような複雑な気持ちになる悠仁。


「ていうか名前ちゃん、ちゃんとご飯食べてる?ウエストガリガリだったんだけど」


先程引き寄せた名前のウエストラインを思い出した五条が名前にそう問うと、お腹が空いたら食べますと返す名前。


「あーその発言はね、一日3食を守らない子の発言だ」

「3食…?皆3食も食べてるんですか?」

「あー…」


五条に話したという名前の生い立ちや長寿についての驚愕話は悠仁も本人から聞いた為学校等の教育機関に通ってない事なども知っていたが、それがまさかこんな所で意識させられるとは…と固まる二人。


「うん、そう。普通は皆ね、一日3食食べるの」

「すごいですね!」

「名前ちゃんはまず食生活から正していこうね」


呪術以外での基礎からだねと笑う五条と、絶対に名前を健康体重にしよう!!と固く決意する悠仁。


「あぁ、到着したんですね二人」


不意にかけられた声に全員が振り向くと、そこには寝巻き姿の恵が立っていた。


「名前久しぶり」

「俺には…!?」


名前にだけ名指しで手を上げる恵に、涙目で自分の方を指差す悠仁。


「恵も明日はお出掛けだから、準備しておいてね」

「例の子のお迎えですよね?」

「そそ」

「ちょっ!!伏黒!!何で普通に名前触ってんだよ!!」


スタスタと普通に名前に近寄り、その髪をくしゃりと撫でる恵から慌てて悠仁は名前を奪い取った。

その光景を見て仲良いねー君たちと手を叩く五条。

こうして悠仁と名前の入学一日目は無事に終わったのだった。


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