06.少年少女




ガヤガヤと声がし、机でうたた寝をした事に気付き慌てて身だしなみを軽く整え正座をし麩が開くのを待つ。
少しすると音を立て襖が開く。


「まだ起きてたのかィ」
「おかえりなさいませ。沖田さん。」
「そこはご主人様だろィ」
「えっ・・・、ご、ご主人様・・・?」
「・・・・・・はぁ」
言われた通りご主人様と言うも、つまらなそうにため息1つ。・・・思い出した、沖田さんは嫌がれば嫌がるほど満足するんだった。
「総悟早く風呂に入ってこい、それ付けたまま女性の部屋に入るのはダメだろ?」
ただいまと優しい声で声を掛けてくれるのは近藤さん。パァと自然に笑みが零れ駆け寄ればおかえりなさいと伝える。近藤さんは、兄が居ればこんな感じなのだろうなと思わせてくれる。顔を見ただけで安心するのだ。ゴリラと言われてるらしいけど、私は豪快に笑ったりちょっとおかしな行動を取る近藤さんが大好きだ。




討ち入り後や仕事を終えると何となくあいつの部屋を覗くようになった。怪しい行動をしていないかどうかを監視するという形で。でも、その意図をあいつは気付いて居るはずなのに、徐々に俺が来る頃に正座で待つようになった。
様子を見る限り、隠し事や怪しむところは無く、竜人族の特性を出さないように必死に生きているように見えた。でも、まだ完全に信用出来ない自分もいる。あいつも俺の事を怖がっている。しょうがない、会った直後に刀を向けられれば誰だって怖いだろう。近藤さんにはこれ以上不安や怖さを与えてはいけないということで俺なりに優しくしてるつもりだ。近藤さんの指示が無ければこんな女さっさと外に放り出すつもりだったのに・・・。
今は近藤さんに嬉しそうに駆け寄るこいつを見るのがつまらなく感じている。



(なんでィ・・・)
舌打ちすれば言われた通り、隊服や顔に付いた返り血を洗いに風呂場へ足を向けた。
すると、背後から控えめに「沖田さん!」と声を掛けられる。


「沖田さん、あの、」
これ、と渡されたのは1枚の絆創膏。頬に傷があるのだと思ったのだろう。返り血だと手の甲で拭き取れば安堵の表情を見せてくる。

「沢山、ついてたので、良かった・・・」
「・・・・・・あんた」
「はい?」
「俺の事、怖くないのかィ?」
「・・・最初は。でも、今は怖くないです。沖田さん、優しいから」
にこりと先程近藤さんに向けていた笑顔を俺にも向けた。
ああ、そうか。俺はこいつのこの顔を、見てみたかったのかもしれない。


「沖田さん?」
急に黙り込む沖田さんの様子に、どうしたのだろう、どこかやっぱり痛むのかと思い慌てると、おでこにピンっとデコピンをされ、痛さと不思議さで顔をあげれば目の前にはただの少年が立っていた。不信感も何も無い、気だるそうな目をした普通の少年が。


この時から、私と沖田さんとの関係は変わった。
お互い、恐怖や疑いも何も無い、ただの歳の近い少年と少女に。




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