「…あら、ミノン?脱がないの?」

ミノンが着替え始めていない事に気付き、ガーネットが聞く。

「え…っと…。」

「…やっぱり部屋に戻る?無理する事はないわ。」

「やだ!一緒に入るの…!」

「あの…えっと…。」

戸惑いながら言葉を濁し続けるミノン。見かねたフライヤと、事情を知るベアトリクスが間に入る。

「…ミノン。足湯だけでもどうじゃ?」

「折角来たのですから、入らなくては損ですよ。」

「…はい。」

ミノンはホッとした様に頷いて足袋だけを脱ぐと、小さなタオルを手に風呂場へ向かった。



「すご〜い!広いわ!」

大きな露天温泉に感動するエーコ。

「体を流してから入るのじゃぞ、エーコ。」

「うん!」

「………。」

ミノンは丁度良い石に腰掛け、足を温め始めた。

「綺麗な景色…ここを勧めてくれた貴族に、お礼を言わなくちゃ。……あら?どうしたの?ミノン。」

先程までぼんやりと山々を見ていたミノンが、何故か男湯の方を向いている。

「…どうやら、ジタン様達も入られた様ですね。」

「あら、本当?よくわかったわね。」

「気配で。……。」

短く溜め息を吐くミノン。手に光球を用意済みだ。

「覗き魔退散…。」

男湯と女湯の間の壁の上に向かって球が発される。

「ぎゃっ!」

案の定?ジタンの悲鳴。どうやら覗き魔がいた様だ。

「…風よ…。」

足場から落ちた時に頭を打たないよう風の術で受け止めたのは、流石ミノンというべきだろうか。



「…ミノンか…思わぬ敵がいたぜ。」

崩れた足場への取っ掛かり(主に桶)の中からジタンがむくりと起き上がる。

「馬鹿者…少し目を離した隙に。陛下を覗こうとしたと知れれば、後でベアトリクスのショックかホーリーは逃れられんぞ。」

心底呆れた口調で吐き捨てるスタイナー。ほとんどの人間なら一撃の元に沈むであろう脅威の技を淡々と並べられ、ジタンが顔を青くする。

「お…おっさんだって見たいだろう?ベアトリクスもいるんだぜ?」

「全く。このエロ猿が…貴様はもっとマシな事に頭を使えば良いのだ。全く、後でミノン殿にはお礼を言わなければ。」

「ちぇ…もう一度やってみよっかな…。」

桶をかき集めるジタン。

「……やめておけ。」

「なっ…何だよサラマンダー!」

「ジタン…ボク、ジタンが怪我したら嫌だな…。」

「…ビビ……わ…分かったよ。」

純粋なビビの言葉が一番罪悪感を感じさせたらしい…ジタンは大人しく風呂に戻ると、ぶつぶつ言いながら鼻まで沈んだ。



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