呟く様な詞に応え、果実が光る。

「ありがとう。」

ぽとぽとと落ちて来たそれらを、ミノンは風で優しく受け止めた。一連の動作の終わりで小さく息を吐く。

「……これでどうですか?」

「す……すごいアル!どうやったアルか、今の!!すごいアルよ!しかも全部完熟アルね!ありがとうアル!」

クイナは大興奮で実を集めながら、何度も何度も礼を言った。手伝いつつミノンが恥ずかしそうに微笑む。

「これでみんなにおいしいフルーツ食べさせてあげられるアル!ミノンのお陰アルな!すごいアルよ!」

「お役に立てて……良かったです。」

「さっそく帰るアルよ!あ、あの木にお礼言わなきゃアルね!」

前掛けいっぱいに抱える果実を落とさない様に一礼すると、クイナはドタドタと道を戻り始めた。今度は念(テレパシー)で礼を言い、ミノンも後を追う。

「あ、お帰りなさいクイナ、ミノン!無事で良かった……あっ、お鍋の火、こんな風で大丈夫だったかしら?」

皆のもとへ戻ると、ずっと火の番をしていたダガーが出迎えた。やはり一人では難しかったらしく、隣にはフライヤが薪を持って立っている。だが彼女なりには懸命に頑張っていたのだろう。慣れない暑さに晒された肌は玉の様な汗を浮かべている。

「……まあ!どうしたの、それ!」

「その果実を採りに行っていたのか?」

「そうアルよ〜とってもおいしいフルーツアルね!火の勢いはカンペキアル、もう消しても良い頃アルよ!」

ミノンの差し出した籠に果実を入れると、クイナはさっとミトンを嵌めてスープの具の煮え具合を確かめた。満足そうに頷き、火を弱め始める。

「みんな〜!できたアルよ!!」

待ちわびた朝食に、朝から元気いっぱいの面子から歓声が上がったのは言うまでもないだろう。離れたところの5人が来るまでの間にクイナはスープを盛り付けし、フライヤはパンを準備し、残る2人は果実を洗いにかかる。かけっこといっていち早く走って来た年少組3人が配膳を手伝い、あっという間に準備が整った。

「おお、今日も美味そうであるな!さすがはクイナなのである!」

「あっ、ボクこのスープ大好き!とろとろしてるやつだよね?」

「そうアルよ〜ワタシの傑作のひとつアル!気に入ってもらえててよかったアルね!」

「エーコこのフルーツはじめて見たわ!あまいの?すっぱいの?」

「城にいた時に一度だけ食べたけれど、とっても甘いわよ。でも、そうね……甘酸っぱいかしら?」

「ふふ、野生のものの方が美味いと思うぞ。熟し方が違うからな。」

次々と席に着く面々。いつかは解けない警戒から拒否の色を見せていたサラマンダーも、いつもと変わらない仏頂面で座る。以前は食べることを拒む様に躊躇っていたミノンは、笑顔で小さく切られたパンと控えめな量のスープの前に座った。──だが誰も口を付けようとしない。

みんなを見守る様に立っていたジタンが、最後に座る。皆それを待っていたのだった。ジタンもそれをわかっていて、いつもの様に……しかしやはり少し改まった気持ちで口を開く。

「それじゃ、今日もこうして全員で、うまいメシが食えることに感謝して……。」

いつからこの習慣を始めたのかは定かではない。だが今では──いたく自然なことだった。

今ここにいられる幸せと、日々の糧への感謝を込めて。


いただきます!




fin.



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