私が欲しいのはあなただけでしてよ。 ダーギル王子の手引きで通された部屋に入ると、すぐさま私はヴィックを求めた。 ここまで我慢できただけ私は頑張ったと思う。 今の私が完全に発情状態だと理解しているヴィックは私を慰めてくれた。ほぼ下着姿の私を丸裸にすると、普段みたいに焦らしたりそういうことはなしに、私の体の中で渦巻く熱を発散すべく、あますことなく快感を与えてくれた。 「あぁ……んっヴィックぅ」 ヴィックの口や手が熱く火照った私の身体を鎮めようと愛撫してくれるけど、余計に身体が熱くなっていく。 何度も何度も軽く達してはその度に熱が発散されたはずなのに、全く欲がおさまらない。悪化して余計に欲しくなって苦しくなる。 「リゼット、水を」 「ん、」 脱水を心配されて水を飲まされた。 彼の唇から口移しで流し込まれた水が喉を潤してくれる。発熱してびっしょり汗をかいた私はおそらく脱水症状一歩手前状態だっただろう。 だけど私は水よりもヴィックが欲しかった。 彼の舌を逃すまいと吸い付きチュッと音を立てて解放すると、私は至近距離から彼の薄水色の瞳をじっと見つめ懇願した。 「入れてぇ、奥が寂しいのぉ」 足を大きく開くと、すっかりぐずぐずに溶けきって男を求めている秘部を見せつける。指じゃ全然足りない。届かない場所を突いて慰めてほしい。 普段の私なら絶対にこんなことしない。それほどあの香は強力だった。 ヴィックはいつになく積極的な私をじっと見て、小さく喉を動かしていた。 彼はぼそりと「私の妻に手を出そうとした男……絶対に許さない」と呟くと、求めているものを与えてくれた。 ずぷりと侵入した熱杭は、すっかりヴィックの形になじんだ私の膣内にぴったり収まった。 「ああああ──っ!!」 普段よりも敏感になった体は、ヴィックを受け入れるとすぐに絶頂した。 目の前がきらきらと輝いて、暴力的な快感が脳内を焼き焦がす。 ぎゅううとヴィックから子種を絞ろうと膣内が蠕動する。自分の意志ではコントロールできない激しすぎる衝動で頭がおかしくなりそうだ。 早くこれから解放して欲しい。 「くっ……」 ヴィックが低い声で呻いた。一番奥深くで押し込むようにして精を吐き出されて、一瞬だけ充足感を味わったけど、すぐにまた飢餓感が訪れる。 足りない。 もっと。 私はヴィックの体を押し返すと、彼の分身に触れた。 吐精されたばかりのそれはまだ芯が残っている。お互いの分泌液で濡れている状態だけど構わなかった。 躊躇いなく口に含むと、舐めたりしゃぶったりして愛撫した。 私の突然の行動にヴィックはあんぐりしていた。 「どこで覚えたの。こんなこと」 ひどく冷静な声で尋ねられ、私は上目遣いで彼の表情を伺った。 声の割にヴィックの目は興奮しており、私と目が合うと口の中で愛撫しているものがびくっと震えるのが伝わった。 「ヴィックにしかしないよ。気持ちよくない?」 舌で舐めるところを見せながら聞くと、彼が眉根を寄せながら「最高だよ」と言ってくれたので嬉しくて頑張った。 そして硬さを取り戻したそれでもどかしい身体の奥を擦ってもらおうとヴィックの腰の上に乗りあがると、ヴィックがじっと私を見つめてきた。 強すぎる視線だ。穴が開いてしまいそうである。 「……はしたない私は嫌い?」 「好きに決まってるだろう。積極的な君もたまらなく愛おしいよ」 入口に切っ先がくっつくだけで快感が走る。 「──っ!」 快感でびくびくと全身が震える。 いつ終わるんだ、この性欲地獄は。怪しいお香で操られた性欲で体が壊れてしまうんじゃないか。頭がおかしくなりそうだ。 彼の上に乗って腰を動かしながら、イッてもイッても収まらない衝動が苦しくて涙が出てきた。 もうこんなの嫌だ。早く収まってよ。 嗚咽を漏らしながら動いていると、ヴィックが私を抱き寄せてきた。 「大丈夫、大丈夫だよ、私が受け止めてあげるから」 限りない性欲に私が苦しんでいると察してくれたのだろう。なだめるその声は優しくて、私は彼の胸にすがって泣いた。 「たすけて、もうやなの」 「リゼット、泣かないで。ほら一緒に気持ちよくなろう?」 ヴィックは私をベッドに横たえると、たくさんキスして、たくさんの快楽を与えてくれた。 リゼットかわいいね、愛しているよと言われるたびに幸福感に包まれて、快楽だけじゃカバーできなかった部分まで補われているようだった。 丁寧に優しく体の奥まで愛してくれ、私は数えきれない絶頂を体感した。 「ヴィックぅ、すきぃ、大すきぃ……」 「私も愛しているよリゼット」 イキすぎていい加減頭が馬鹿になりかけた私が舌足らずに愛を囁くと、ヴィックはそれはそれは美しい微笑みで私に口づけを贈ってくれた。 宣言通り、彼は最後まで付き合ってくれた。 私の激しい性衝動は私が意識を失うまで続き…… いつになく長い長い夜だった。 ◇◆◇ 「けほっ」 翌日、自分が咳き込んだことで目が覚めた。 重い瞼を開くと、今ではすっかり見慣れたヴィックの美しい寝顔が眼前いっぱいに広がった。 私は喉を抑えながら身体を起こした。 ずきりと至る所が痛み、動くのも億劫である。 外から差し込む光を見ながら、今は何時だろうとぼんやりする。 「ん……リゼット……身体は、どう?」 私が身じろいだことで目が覚めた様子のヴィックは寝ぼけ眼で尋ねてきた。 「もうすっかり……はっ!」 確認されて思い出したが、私は昨晩とんでもないことに巻き込まれ、とんでもないことをしでかした気がする。 「ヴィックごめんー! 綺麗な肌に私はなんてことを!」 ヴィックの身体はすごいことになっていた。白い肌にたくさん所有印が散り、首筋には歯型まであった。 私は獣か。噛む必要があったのか。 怪しいお香で理性が無くなっていたとはいえ、擁護されることではない。寝台の上で土下座して謝ると、ヴィックは小さく笑っていた。 「たまにはリゼットから積極的に攻められるのもいいね。またしてほしいな」 懐の広い旦那様は、昨晩の狼藉すら愛おしいとばかりに私に甘い甘い笑顔を振りまいた。 そんな、またなんて無理だよ、恥ずかしくて…… 「忘れて……」 私は熱い顔を手のひらで隠して悶えた。 くそう、これもそれもあの第8王子のせいだ!! |