17.5
まるで狼煙が上がるように、オールマイトが炊いた発煙筒から煙がくゆる。

肉倉と麗日、葉隠に切島、障子と常闇が、モニターには映っていた。
今開始されたレースは、モニターに切り取られて映し出される。

オイラは爆豪に上鳴、青山に蛙吹とだったが、爆豪の圧勝に終わった。もう、ゴールに行くのが馬鹿らしくなるくらいに一瞬の出来事だった。って言うのはちょっと言い過ぎで、まぁでも相当速かった。
機動力に関しては、もう少し考えたほうが良い。オイラの課題だ。

兎に角、何か参考になるものはあるか、という建前をもとに、オイラは齧り付くようにモニターを見ていた。
さっきは八百万が想像したパラグライダーが胸元から出る瞬間。あれが一番の見どころだったぜ。

「誰が一番なるだろな?」

瀬呂が緑谷に聞いている。
本当はお前も見たいのはそこじゃねぇだろ?正直になれよ!
オイラのイチオシポイントを教えてやる。
良いか?肉倉は乳に見せかけて、尻だ。
あのプリッと張り出したケツは、サイッコーにそそりやがる。
ほら見ろよ、
ぁああ、ほら!!ほら見ろよ!!
パンツの隙間から、見えてんだよなぁ!今日もやべぇ……
食い込んでんだよなぁ、尻ッたぶに!

「はぁ……意外。そこが良い……!水色ッ……!!」
「……肉倉か?」

こそ、と耳打ちして来る上鳴は、もしかするとオイラ、一番仲良くできるヤツな気がするんだよなぁ。

「どう、だろう……純粋に見れば肉倉さんが圧倒的に優位に立てると思う……麗日さんもだけど、上空から物事を見られる、って言うのは今回の救助訓練においてはかなりポイントが高いと思うんだ!その上で、この入り組んだ地形を物ともせずに移動できる手段のある肉倉さんがやっぱり有利、かな。
でも障子くん。以前凧のように風を利用して少しだけ飛んでいるところを見たんだ!それに彼の筋力は侮れない。跳躍した上で飛べば、いや、でもどうだろう……切島君と葉隠さんは純粋に走るしかないんだもんな……そこをどうにかした方が良いのだろうか?……いや、でもちょっと待てよ……麗日さんもそういう意味では……麗日さんは無重力を自身に使っての滞空時間が勝負、か……それがもしものになれば……そうなったら麗日さん、本当にすごいぞ……!!」
「黙れや!うぜぇ!!」

緑谷のいつものぶつぶつと呟く声と、爆発音が響く。
どうだって良いが、そこの煙は許せねぇ!モニターに、かかるだろうが!!!いつか罰があたれ!



結果として、肉倉がトップでこの救助訓練は幕を閉じる事になる。
なるが、肉倉はオールマイトと何言か話し、襷もかけずに静かにそこを後にした。
オイラ達の居るモニタールームに戻ってからも、一人静に壁際に腰掛け、膝を立てていた。
オイラは居ても立っても居られなかった。
膝を立てて座ってんだ。
一人寂しそうに見えるその姿を放って置くわけには行かねぇ。
それはヒーローのする事じゃあ、ねぇよな?!
もう、どういう状況か、わかるよなぁ?!
わかんだろ?!!

「し、肉倉、……具合でも悪ぃのか?」

オイラはできるだけ静かに、地に蹲りながら問う。
本当は答えなんて求めちゃいない。なんなら、このまんま落ち込んでてもいい。オイラはずっとそばにいてやれる!

「問題ないわ」

いつものように静かに返ってきた言葉に、オイラは頷く。

「そろそろ蹴飛ばすわよ」

その言葉にも、静かに頷く。

「どけや」
「っでえ!!」

いつの間にか授業は終わっていたらしく、ドア近くの壁に座り込んでいた肉倉の元へと、ちげぇ。モニタールームから出るためにやってきた爆豪に蹴飛ばされたオイラはコロコロと転がっちまう。
今に見てろ!覚えてやがれ!待ってろオイラの桃源郷!!

「懲りねぇなー、お前」助けろよ!瀬呂ぉ!
「あんまフザケてんなよー」黙れ切島ぁ!
「ウケる」覚えてろよ上鳴電気!!
「本当最低ー」
「最低だわ、峰田ちゃん。行きましょ、名前ちゃん」
「うんうん行こ!名前ちゃん」
「私飲み物を購入してから参りますわ」
「おけおけー!先行っとくねぇ!」触れてすらくれなくなったじゃねぇか!!

皆が皆更衣室へと向かい、あまりの痛さにめそめそと泣いちまったオイラを優しい砂藤が「あんまり馬鹿なことすんなよ」なんて嗜めて、「だめだよ峰田君」なんて言いながらオイラを緑谷が抱えあげるが、お前らだって人に言えねぇ性癖の1つや2つや3つあんだろ、って。思うんだ。
棚上げしてんじゃねぇぞ。
尾白!やれやれって顔してるお前みたいなやつが!凄かったりすんだろ?!
覚えてろよ、女子!
オイラはこんな事じゃめげねぇ!泣かねぇ!挫けねぇ!!



ロッカーのズラリと並ぶ男子更衣室。
もう積年の汗やなんやのニオイがこびり付いて取れやしねぇそこを一刻も早く出ようと皆がそそくさと着替えている。
クセェからだ。爆豪じゃ無くてもそう言う。間違いねぇ。とても、クセェ。とてもじゃないが、深呼吸はしんどい空間だ。
普段饒舌な上鳴ですら黙々と着替えてる。
あ、違うか。コイツら自身もクセェのか。そうだな。そりゃそうだ。
それはオイラも例外ではなかった。
オイラがくせぇって訳じゃねぇ。
ここが臭いのはオイラも一緒って意味だ。
無かったんだが、手が、壁に貼り付けてある古めかしいビラの一枚を掠めた事で事態は変わる。

「んだぁ?これ……20……は?5年以上前のじゃねぇか」

そりゃ、古めかしいわけだ。
外しといてやるか。
ぴら、とテープをオイラは捲ってやった。
ほら、優しいオイラは皆のためにやったんだ。
日付を間違えちゃいけねぇだろ?
優しさ100パーだ。間違いはねぇぞ。
オイラもうっかり間違えちゃいけねぇしな。

でもオイラのその正しい行いを、神は見ていた。
見てたんだ!!
オイラはとんでもねぇもんを見つけちまった。
見つけちまったんだ!!
今日の全てはそこからだ。
なんなら人生これからだ!!
こっからが試合だぞ、峰田実!!
さっきまでの暗い気分はおさらばだ!
なんてこった!
ここの向こうはパラダイス!女神と天使のおわす国!
オイラの為のサンクチュアリ!
そこにオイラを混ぜてくれ!

「おい緑谷!!やべぇ事が発覚した!!こっちゃ来い!」

オイラだけで独り占めなんて、出来るわけがねぇ!
さっき助けられたからな!礼は必要だろ!
いい事すれば神様色々見せてくれるんだろォォ?!
さすが神様!仏様!今後も一生リスペクト!地の果てまででもワーシップ!!
オイラはなんならミサに行く!!!
オイラは意気揚々と緑谷を手招いた。

「見ろよこの穴ショーシャンク!
恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!
隣はそうさ!わかるだろう?!女子更衣室!!」

砂藤、上鳴らが息を飲む。
見えたぜ?尾白!おめぇもだ!
ほら皆、好きじゃねぇか!安心しろ!!
オイラも、とっても大好きだ!!!
うるせぇ飯田!黙ってろ!
むっつりしたメガネしやがって!どーせ内側から覗いちゃいけねぇもん覗いてるクチだろが!そんなお前に止める権利はねぇぞ!!

「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為なんだよォォ!!」

あぁあ!ほら!
見ろよそこは、シャングリラ!行こうぜ皆で、ハライソへ!!

「八百万のヤオヨロッパイ!!芦戸の腰つき!!肉倉のど迫力臀部!!葉隠の浮かぶ下着!!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァァァア!!!」

トスッ

きゃぁぁぁぁぁぁぁああ!

なにがあったかは、オイラの口からはあまり言いたくねぇ。
が、ただただ目が、爆発した。以上だ。


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bkm


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