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その女子は、肉倉名前は、類稀なるダイナマイトボディの持ち主だった。
オイラが目をつけないはずもない。
八百万と並び、オイラの夢にまで出張った事は数知れねぇ。
あのふくよかな乳!
ムッチリと張り出したケツ!
ちゃんと太いムチムチ太もも!
なのに見たかよ、あのヒーローコスチューム。
何だっけか?素肌に触れりゃあ肉塊にしてしまえる?とんだチート個性である事は間違いねぇ。
オイラのくっつく、よりも遥かに役立ちそうだ。
ヘソも、太もももバッチリ素肌!
ショートパンツじゃねぇ。ホットパンツだ!
ここはポイントが高ぇぞ……
時折見えんだよなぁ……あの、尻の付け根が……特に、蹴られる瞬間によぉ、見えちゃいけねぇモンが、見えてんだよなぁ……!
しかもあの肉体のグニョグニョ見たかぁ?
あれが自由に動かせる?
はぁー、……オイラは自分の個性が催眠系でないことをこんなにも呪ったことは無かった!!
肉×八百
これはもう堪んねぇな……
手を触手みてぇにグニョグニョうねらせて、八百万ッパイをあーんなことやこーんなことやにして、八百万のエッッロいコスチュームの股下から……ハァー、それを妄想しただけでオイラのリトルミネタはもうバンバンザイだ!!


それはそうと、体育祭だ。
オイラは表彰台に登る練習をしこたま積んできた。死角はねぇ!
教室へつくと、もう殆どの奴らが揃っていて、相澤先生も入ってくる頃。
少し遅れて入ってきたのは肉倉で、どっかぎこち無い歩き方をしている。
多分、先生も含めて皆気付いてる。
それでも何も言わない、それってさぁ、つまりさぁ、……パンチラ狙いか?

先生の引率のもと、辿り着いた1-A体育祭控室。
各々が好きなように過ごしている中、やっぱ気になったから、オイラは肉倉の腰を下ろしているベンチに同じように腰を落ち着けた。
壁に頭を押し付けて、集中しているらしい。

「……なぁ、調子悪いのか?保健室、……行くか?」

ゴクリ、と喉が音をたてるが、大丈夫だ。聞かれてはいないはずだ。
オイラをちら、と見てから控室の真ん中に向けた視線は、ゆっくりと皆を捉えていっているらしい。

「大丈夫よ、問題ないわ」

長い睫毛がバサリと振り下ろされてまた目が開く頃には、いつもの不敵な笑みがその肉倉の顔を彩っていた。

「他人の心配を出来るだなんて、余裕なのね。躓かないことを、祈っているわ」

相変わらず、厭味ったらしい言葉を吐く唇は、肉倉が言葉を吐くたびにぽってりとしたその厚さを強調する動きを魅せる。
やっぱりオイラは、ゴクリ、と喉を鳴らす事になる。
肉倉の視線を追いかけると真っ赤な鋭い、それこそ敵みたいな獰猛さを孕んだ目が一対見える。
思わずさっきとは別の意味でオイラは喉を鳴らし、肉倉をちらりと見るが、その目に向けて、こっちもまた、ギラギラとしたど迫力の眼光を飛ばしているから、そ、と離れる事にしておいた。

「な、なぁ上鳴ぃ、アイツら、やべぇよ……おっかねぇ、堅気の顔じゃねぇよ……」
「は?今更だろ」

オイラの言葉に半目の上鳴が二人を見た。

「仲良いよなぁ」
「何がどうしてそう見えんだよ!おかしいだろ!お前の目ン玉!」


そうこうしていると、飯田がいつもの如くフルスロットルだ。

「皆 準備はできているか!?もうじき入場だ!!」

その後、轟と緑谷の宣戦布告合戦が起きつつも、入場ゲートを無事くぐる事になった。
コッソリと手を振って、オーディエンスへの歓声への礼も欠かさないオイラは流石だろ。





最初の難関__とはいえ、轟の凍らせたアイスロードだが、を突破したオイラは、次なる目的の相棒を探していた。
そして、見つけ出す。
肉を足場にして飛び回る精肉の肉倉、身体から某を作り出す、創造の八百万!やっぱこの2強だろ!!

「くらえオイラの必殺……GRAPE……ぶへぁ!」

死角だった!
横腹をしこたま殴りつけられ、コロコロコロと転がっているうちに、肉倉は先へと行ってしまい、もう選択などはできやしねぇ、でもオイラには残された希望がある。
それは、八百万!お前だ!!
イケる!お前なら追いつける!!
ある種この手の競技なら最強クラスだろ!
ほら、おっぴろげ具合も最高だぜ!
でっけえ乳が、溢れんばかりだ!
それならロボ・インフェルノもクリアできるだろ!!!


ザ・フォール
そう題された地獄の谷間も、八百万が頑張るから問題ねぇ!!


___________


「てめェ宣戦布告する相手を!間違えてんじゃねえよ!」

一面地雷原!怒りのアフガン そう題された広場を走り抜ける前から怒声が聞こえる。

先頭の二人に比べると私はどうしても機動力には劣る、そう思っていたから、有り難い。
きっと、ここなら先程よりも簡単に追いつけるわ。

腕を突き出し、肉を足場にトランポリンの容量でだんだん高く上がっていく。

『ここで先頭がかわったー!!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!』

プレゼントマイク先生の放送にも、熱が籠もり始めていた。
ある程度の高さまで行くと一気に落下地点を見定める。
地雷原終着はもう、すぐ!と、言うところで、大きな爆発音。
そして私のすぐ横を、ソレは追い抜いた。
私を追い抜き、爆豪君と轟君を足場に、また爆風を利用して一気に先頭にその背中は躍り出た。

「ふ、ざけないで!!」

もう場所を見定めるだとか、言っている場合じゃないわ!
一気に、降下!
五点着地で衝撃をやり過ごせば良いわ!
足を着いたのは、私達を追い抜いた緑谷君の直ぐ側。
ここなら、いける!

『おおっと!ここで!もう一人の刺客うう!!!喜べリスナー!ゴール前のバトルだぁ!さあ、運命は誰の手だぁぁあ!!』

ガキン

大きな音が響き、右の足がクンと、引っ張られる。

(負ける、負けて、しまう!!)

もう、なりふり構っていられなかった。
無理くりに個性で足の骨に当たる、鉄骨を筋肉繊維で補強し、走る。
ひん曲がった鉄が、足の中でアチラコチラの肉を傷付けているのがわかる。

「っ、ぁ、あ!!」

アナウンスで、緑谷出久の名前が叫ばれた。

は、は、と切れる息もそのままに、壁に背を擦り付けてズキズキと痛む右足をなで上げる。
ゴツゴツとしたものを感じるから、もう限界だろう。

脳無や、手の敵__死柄木弔らに壊された足は、とびきり頑丈に作られたものだった。
けれどその後のものはあくまでも借り物。
それが度重なる訓練や演習授業で、金属疲労を起こしていた。
折れるまで時間の問題だったのだ。
そこに、先日の演習。
瓦礫に押し潰されないように、と肉壁を作り上げてカバーをしたけれど、想定以上のサイズの瓦礫が落ちて来た。
肉は沈み、足にダメージを受けていたのだ。
恐らく、あの時。
あの時にイッてしまったんだわ。

そもそも、関節等の接続も全部私自身の個性で賄っているから、通常の義足に比べて遥かに馴染みやすい。けれど、その分負荷は金属部の中でも一部ばかりに溜まりやすいだろう。
次の演目自体では、……
そこまで考えて頭を振った。

棄権

その言葉が、頭の中をグルグルとめぐり続けている。


掲示された名前の並びにぎゅ、と唇を噛み締めた。
同着、3位。

こんな所で、燻っていてはいけないのに。
こんな所で、たち淀んでいては行けないのに。
泥のように重くなろうとする心を幾度も叱責して、ぎゅ、と唇を引き結ぶ。

「まだ、やれるわ」


われんばかりの歓声があたり一面に轟く中、
第二の演目が発表されようとしていた。


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bkm


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