コーラス☆始まりのオペレッタ 4e 





零…は何か色々動いてたみたいですけど、ぼくは比較的淡々と仕事を済ませてました。歌姫役として今回のぼくは押し込められた。……えぇ、いいですけどね!女装は慣れてますからね!!身支度を整えて高いヒールを履いて、舞台に出ると、衣更くんが満足そうに頷いていました。

「晦さ…んじゃなかった。朔間先輩。準備は大丈夫ですか?」
「…言いにくいでしょうし、晦でいいですよ。最終の打ち合わせの通りに進めていきますよ。」
「じゃあ、みんな集まってくれ。」

そう招集がかかったので、ぼくは穏やかな顔をしてたら、零に腰を抱かれた。…うん、きみは同じ血が繋がってるのでやめておいた方がいいですよ?こんななりをしてますが、ぼくは男の子なわけですし。ぺしりと叩き落としておくのも忘れません。凛月さんがちょっと楽しそうですよね。こういうのを見ると。

「【オペレッタ】の段取りについて改めて説明する。」

衣更くんの最終的な説明は、パフォーマンスや楽曲についてはぼくたち朔間の兄弟に任せるので、賑やかしや最低限の踊りをメインとしているらしい。まぁ、学院側としては外部での実績になるので、彼らも頑張るのでしょう。子飼いくんが吠えてますけど、そんな様子を横目にぼくは欠伸を一つ。本番前に大量にカフェインを摂取したので眠くならずにいれるでしょう。ソロで始まるので、ぼくはそっと発声しながら今回の参加者を見る。朔間さん関連で子飼いくんと羽風くん、凛月さん関連で鳴上さん。それから生徒会3人と、朔間家兄弟とぼく。喉も立派な楽器であるので大体マスターしてオクターブが増えた関係で、ぼくが今回のソプラニストやカウンターテノールとして扱われる。今回の【オペレッタ】で月永くんの音楽でやる以上、ぼくが十二分に知っている庭のようなものだ。学院で録音仕事をしていた以上、月永くんとぼくは切っても切れない間柄だ。癖も全て知っているのでやりやすいからいいですけどね。

「衣更くん、学院側の生徒は基本的に何をしてもらうんですか?」
「俺たち学院側は、賑やかしと多少の台詞回しをやります。」
「…冒頭のところかな?」

そうです。新しいジャンルのオペラとは聞いてましたけど。結果は決まっているのでそういう方向に進めていけばいいのでしょう。全楽曲を頭の中に叩き込んでいるので、ぼくは大丈夫ですけど。補助として、オペラハウスの団員がしてくれるというのでぼくも周りを気にせずのびのびとやっていいということだ。音に関して本職が居ても、楽器である以上ぼくは負けるつもりはない。

「優雅に気高く居ようとも、過激に暴れても秩序がどうであれ、引っ掻き回すのが居ても、本物はどこまでも先を歩いてるんですよ。戦乙女は、真っ先に戦場にいますよ?食い散らかされない様にお気をつけなさい?今日は、本気を出していきますから、零も凛月も存分にどうぞ。家の名前なんぞすべて捨てて戦いましょう。ね?」

ソリストのぼくは初っ端に出番があるので、先に出ますねと声をかけて、舞台袖に向かうために人の中を縫いながら歩き抜いて、行くと朔間さんと凛月さんがぼくに頑張れと声をかけた。ぼくはひらひらと手を上げて答えるだけにしておいた。
ぼくのソロで始まる楽曲は、ソプラノの音域のものだ。一曲をまるまる歌ってると、舞台袖から学生が姿を出し始めたので、声量を抑えて他の声をとおりやすくしておく。ここからアドリブと書いてたので、好き勝手歌っておく。好きに口上を唱えてるので、それに邪魔にならない様にだけ気をつけて歌う。

「皆さん!ようこそオペラハウスへ」
「俺様たちが大歓迎してやるよ!骨の髄まで痺れるぐらい楽しませてやるから、覚悟しやがれっ」
「ちょっとちょっと!何やってるの、まだお客様を入れちゃ駄目だってば!おまえら勝手なことばっかりしすぎっ『ご主人さまたち』に後で叱ってもらわなくっちゃ!」
「えぇ、困ります!まだまだお片付けも済んでおりませんし、料理の準備も必要です!」
「それに!ごめんなさいねェ、ご覧の通りどんちゃん騒ぎの真っ最中よ!このオペラハウスの愛すべき主人、何百年も前からここに棲まうあの兄弟がいつもどおりの第喧嘩をしてるの!」
「あぁっ、なんてことだろうね?ご家庭の中野もめ事を、お客さまたちに見られちゃうなんて恥ずかしい!お詫びとして、みんなには今夜の宴で俺と踊る権利をあげる〜」
「おいコラッ、それだとテメ〜しか得をしね〜だろ!抜け駆け厳禁!」
「まったくもう……次から次へと問題ばっかり発生するよな。尻拭いをする下っ端の身にもなってくれよ」

少し下の舞台では他の参加者が事前の説明のように賑やかしているので、過去の楽曲を歌っていると、まだ事前説明のように進めていく、歌う楽曲もないのでアレンジを行う、そうして、下手からと上手からと朔間さんと凛月さんがスポットライトは凛月さんと朔間さんに当たりだす。二人が歌うので、ぼくの出番は半分ほど終わる。口ずさんでるのも止めて静止する。近くで踊って歌ってる二人がぼくの近くで、ぼくの首にファーをかけたり、それをとったりしている。が、ぼくは静止して動かない。

「こらこら『ご主人さまたち』もいつまで喧嘩してやがるっ!?お客さんだぞっ、きちんと出迎えて愉しませね〜と『オペラ座の怪人』の血を継ぐ一族の名折れだぜっ?」
「そう!彼らはあの有名な怪人の子孫!代々このオペラハウスに棲みつく一族の末裔!彼らは一族の流儀に則って、きにいった人々に助言を与える!」
「助け、導き、輝かせる!でもな、この兄弟はどうにも仲が悪い。まったく意見がかみ合わずに喧嘩してばっかりっ、それを支える俺様たち下僕は苦労させられっ放し!今も!このオペラハウス随一の歌姫をどうプロデュースしていくか、いつまでも侃々諤々と言い争っている!」

子飼いくんの台詞と同時に、ぼくの装飾を弄る。弟君がもっと歌姫を愛らしい感じに仕立て上げようって主張すると兄君が、もっと美しくかっこいい方向に育てようって反論する。そう台詞が続くと、ぼくの装飾が取っ払われ、別のアクセサリーがつけられて、ぼくにむけてスポットライトがつけられる。弦楽器の音もコメディ調になったので、それに合わせて歌が調もなにもかもがちぐはぐで歌う。

「お蔭で歌姫も大混乱!舞台の内容もしっちゃかめっちゃか、浪漫ちっくで優雅で高貴なオペラハウスの雰囲気も台無し!」
「あぁいったいどうなっちまうんだ?このオペラハウスが積み重ねてきた数百年の歴史は、アホな兄弟の喧嘩のせいで一巻の終わりか!?」
「そうはさせない!俺たちが、きっと二人を仲直りさせてみせる!」

下のステージでは賑やかに騒いでるので、狂っていた調をゆっくりと戻していく。二人のご主人に沿うように歌を奏で、楽曲に合わせる。高音の連続で気を遣うけれども、やはり歌うのは楽しくて、くるくる回りながら楽曲に併せて踊っていると、零と凛月もぼくに寄ってくるが、ぼくの設定上二人の存在に気づかないことになっているのでそこに神経を使う。

「さぁさぁ、そのために必要なことがあれば何なりとご用命を!」
「ご主人さま!愛すべき兄弟よ!二人の望みはなぁに?」

学院側の出演人の台詞はほぼほぼ終わりに近づいている。ぼくのソロ、凛月のソロ、零のソロ、を経て、凛月と零の対立ぼくの苦悩を語って、一族たちが二人の願いを叶えながら、ぼくのステージを支えて、最終的に劇中劇を一つ行うのが、今回の大体のストーリーだ。ここでソロが終われば、一旦ぼくははけて、従者と一族たちの話になるので、ぼくは一旦舞台そでにはけて、零と凛月を見るとなんだか楽しそうにしている二人を見て、ぼくもがんばろうという気になりますね。調整役がやってきて水やらを差しだしてくれるのでぼくもそのまま甘んじて受ける。どうも喉を酷使していたみたいで、飲んだ水が心地いい。帰ったら喉のケアをしなければいけない。と思いつつ、こうして三人で同じ舞台に立てるのが夢のようですね。と一つこぼしたら、調整役の首がとれるのではないのかと思うほど振った。
「ぼくは幸せ者ですね。」と小さくつぶやけば、調整役が聞き取れなかったのかなんですか?と首を傾げているのでで、ぼくはなにもないと首を振っておいた。そうこうしてるとまたぼくのパートが発生するぶぶんになるので舞台へとゆるりと立つ。具合の悪いのはいつものことだ、眩暈だってもう慣れている。ぼくはただ穏やかに微笑みを携えて、またスポットライトの下に降りる。ここからはぼくのターンだ。歌姫が歌に苦悩し、進む先を二人の怪人が道を提示し、どちらも選択するものだ。

「朔間先輩?」
「……あぁ、ぼくも朔間でしたね。まだ慣れてなくて。ごめんなさいね。どうしました?調整役。」
「いえ。なんだか消えていきそうに見えて、つい。」

そうですか。ぼくは意外としぶといですからね。過去の断罪されてもなお、楽器を扱っているのですから。それは愚の極みと言うか、ただの愛なのかはわからないですけど、ぼくにはわからない箱かもしれないですね。さて、ぼくは行きますよ。そう呟いて、ぼくはスポットライトの中に戻った。ここからは苦悩し、選んでいくターン。ぼくはいっぱい苦悩したからこそ、ここの表現も問題ないと団員からお墨付きももらっているし、引き抜きも来ているのだけれど、ぼくはあくまでもアイドルなのでね、丁寧にご遠慮さしてもらいましたけど。ぼくが舞台に戻るころ、二人は雁首そろえて、なんやらと考えていますけど、まぁ頑張ってくださいよ。

「蟠りは解けましたか?返事は全部が終わってから聞きますけど、【オペレッタ】はすすんでますからね。オフマイクのおしゃべりもいいですけど。生物ですからね。」

弟たちを嗜めて、ぼくはソロを回し始める。そうなってしまったらぼくは自由にお話もできないので、そういうものですよ。凛月がどれだけやろうとも、最悪の隠れ蓑としていればいいとは思っていましたけど、まぁ顔を見る限りそういうのも必要なさそうで安心はしましたよ。前々からの癖のようになっていますけど、もう長年染みついたものですよね。晦は朔間の顔色をうかがっていたのですから。
まぁ。二人が仲好ければぼくはなんでもいいんですけど。二人はごそごそ喋ってるのでぼくは声量を上げて、視線を全部掻っ攫うかのようにハイトーンを一本出す。真っ直ぐの音はどこまでも響いていて、オペラ独特の響きを持たせてくれる。
学院の広がりとは違うと思いながらも、ぼくは流れる弦楽と、月永くんの独特のオペラ楽曲を堪能するように喉を震わせた。その数日後に会見としてぼくが零の隣に立っていたが、凛月にとても怒られて兄上ならヒットマンできるよね!!って言われたんですけど。…ぼくが零を殺めれると思っているのでしょうか。いや、ぼくもあぁやれって零に言われたんですよね。

「お兄ちゃん〜。愛してるよ。」って。ぼく、日々樹くんのような声変の練習してないので、変によれましたけど。



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