コーラス☆始まりのオペレッタ 3 





そして数分後に零がやってきた。高笑いしてるんだから、もうぼくは呆れますよ。始終呆れてますけれども。どっちかっていうと。えぇ。もう、好きにしてください。お兄ちゃんはもう、呆れました。

「待たせたのう夢ノ咲学院のアイドルたちよっ、この『闇夜を統べる魔王』朔間零の偉容におのおくがよい。」
「出たっ、最近の零くんの持ちネタ!『魔王が現れた!』」
「むう、卒業生たちの妙に軽いノリがむかつく」

……これ、ぼくもしたほうがいいんですかね。迷ってると、兄上はそのままでいい。とお願いされたので、そうしておきます。はい。うぅん……なんとも、難しいですね。傍観者でいいですかね。当事者なんですけど。もう、卒業した組が自由に暴れてるので、好きにさせておきましょう。羽風くんがなんとかしてくれるでしょう。同じ顔してるぼくが止めるのもなんだかおかしな話ですよね。あきらめて、好きにさせて、ぼくは衣更くんと話しましょうかね。世間話を開始させようと思ったら、零に諭されました。……もしかして、ぼくの兄弟、束縛が強い?怪訝そうな目で零を見てると、咳払いを一つして話を戻そうとした。
話をもどしてじゃな。うむ。すまんかったのう。凛月や。賢いおぬしはすでに事態を理解しておるじゃろうが、今回の一件【オペレッタ】はネット上で噂されているような代物ではないんじゃ。と話を始めた。海外であったのは不本意であった。
聖地に行って、ぼくと零は戻るときにフィレンツェに行ったのだけれども、記者やらがうろついて朔間零の双子の兄と弟がばれてしまったというわけで。ぐだぐだなったけれども、最終的に零が凛月を世間に出したくないというからぼくが大体を被ったわけなわけで。ぼくはいいんですけれど。ねぇ。凛月の話をきいてないわけですから。そこは何とかしてあげたいとぼくは思うわけですよ。…僕の話ですけどね。まぁなんでもいいですよ。二人が望んだらぼくがそれを全力で叶える。いつだって、かわらないぼくのスタンスですよね。

「さくまさ…零がどういえども、最終的に本人の意志だと思うので、凛月さんはどうしたいです?チャンスを掴みたいのならぼくは朔間さんと戦ってでも凛月さ…凛月の願いだって叶えますよ。」
「兄上。」
「よく考えなさい。チャンスは大きいですけど、リスクは…最低限にぼくが抑えますし。アイドルとして売れたいなら、ぼくの話に乗ればいいですし、そっとしたいならばそのままでもいいんですよ。危害が加わるのならばぼくが零が身を挺しますし。まぁ、先達はたくさんいるんですから。よく悩むといいと思いますよ。まぁ、今回はそんな話をしに来たんじゃなさそうですけど。」

ねぇ。と衣更くんに話を振ってみると、いきなり振られたことに驚いたのか一瞬だけ目を大きく開いた。それからちょっと控えめに、話を元に戻すあたり、結構生徒会で頑張っているのがよくわかりますよね。人柄がなせるものともいえますけども。遠慮がちに言う姿は庶民性が現れている。

「あのう、空気読めない感じですみませんけど、今日朔間先輩を呼び出したのはそういう話をしたいから。じゃなくてですね。いや、大事な話なんだろうから、つづけて構わないんスけど。」
「そうだった。兄者たちには【オペレッタ】っていうのが何なのかって聞こうとしたんだよねぇ、兄上は教えてくれないし。それは何なの?結局?」
「この話の流れじゃと非常に言いづらいんじゃが……なぁ兄上。」

ぼくに振られるんですか?まぁいいですけど。そうねだられたら、ちゃんとやるのがぼくですよ。

「羽風くんも子飼いの子も昨年のこの時期に【復活祭】を行ったの、覚えていらっしゃいます?羽風くんが贄になったあの回です。」

昨年この時期、ぼくは比較的忙殺されていたのですけど。晦でなくなったので、ぼくは比較的自由に過ごさせてもらうつもり…でしたけどね。そこで区切ると、羽風くんは思い出したくないと首を振った。この話を出すと言う事は、と子飼いくんが読めたと言い切った。

「【オペレッタ】っつうのは、要するにあれか、本年度版の【復活祭】なのかよ、もしかして?」
「うむ。だいぶん鋭くなったのう、成長したのう晃牙や……もう高校三年生のお兄さんじゃものな、よしよし頭を撫でてやろう」
「微笑ましいですねぇ。」
「殺すぞ。」
「元気があっていいですねえ。」

カラカラ笑っていると、子飼いくんが三人でやるのかと睨むように見つめるので、ぼくは微笑みを保ったまま周りを見つめる。凛月さんはじろりとぼくと零を見る。俺の予定を勝手に決めないでよ。兄上ならいいけど兄者は嫌。と言われてるのですけど、零はほんとなにしてるんですか?あなたは。

「それは誤解じゃよ。ご存じの通り我輩たち朔間一族は例年。すっかり黴の生えたバカバカしい儀式を執り行っておるわけじゃが。昨年度は我輩が無理やりドリフェスをその儀式と一体化させ」
「ぼくが一族側として動いてたわけですが、昨年みたいなのは勘弁してほしかったんですよね。一緒に行ってごまかされたわけですが。零が後から反省したらしいんです。公私は分けるべきだったと。」
「故に、今年は我輩だけでやろうと考えた。」

それが【オペレッタ】じゃ、欧州へいっておったのもその件について一族のものと話し合うためじゃよ。ただ辛気臭い儀式をやるだけ、というのも我輩が乗り気になれんからのう。兄者がいてくれたら楽しくなると思って声をかけたのじゃが、まぁそこは別として、海外でできた友人が経営するオペラハウスの宣伝と言うのもかねておるが。

「そのオペラハウス、例の海の家みたいに経営に困ってたりするのかよ?誰にでも彼にでも救いの手を差し伸べてんじゃね〜ぞ、テメ〜はイエス・キリストか?」
「逆の位置ですけどね。ぼくらの立ち位置は。古典的なオペラなどこの国で流行らないですから、手を変え品を変え時流に乗ってやられてるみたいですよ?まぁ、そんな簡単につぶれるものではないみたいですし、零も零で救うなどの意志はないみたいですよ。どちらも利便があったから乗ってると言う風にぼくにはみえますけど。」

そういいつつ零を見ると、普通に行ってるだけでは、誰の利益にもならないと言う。人生の貴重な時間を使うのなら誰かのための。と言ってるあたりで、救ってるんですから、もう。ぼくは呆れてしまいますけど、恐らくこういうのは国外の生活にも多少影響があるのでしょうね。…トランシルバニアしか知らないですけど。ため息をついていると。話はそのまま流れていくので、ぼくはそのままカフェイン摂取をいそいそ行う。

「それが、同時期に騒がれた『朔間零に弟がいる』とニュースと関連付けられてなぜか『兄弟でライブをする』という世間からの勝手にきめつけられた…という経緯じゃの」
「ぼくのほうが兄なんですけどね。」
「ふぅん、成る程。だいぶ腑に落ちた。じゃあ本当に。普通に【オペレッタ】っていうのは俺たち兄弟じゃなくて、兄上とあんたがやる企画なの?」

ちょっと凛月さんがちょっと不機嫌に見える。…ちょっとやばいですよ。あぶないですよ。この兄弟、どうもやはり、仲がよろしくないですよね。昔からですけども。誰も迷惑をかけないと言ってますけど、確実にぼくが迷惑こうむってたりして…はないですね。はい。

「片翼の兄者も了承してくれたしのう。」
「まぁ、ぼくはしばらく暇ですしね。みかが学院ですし、人形遣いは国外ですし。やることはそこまでないんですけど。」

言ってくれたら手伝うと子飼いくんは言うし、羽風くんはイースターが嫌いになったという。…昨年のあれならまだ比較的ましだと思うんですけどねぇ。色々と話し込むのをぼくは眺める。大体は零が進めてくれるだろうと思ってるので、追加のコーヒーを依頼していると、誰かが衣更くんに話を振った。第三者として、『朔間』でもなく、その二人を…ぼくもですけど、加入してないユニットの人として、冷静な視点が欲しいと誰かが言っていた。いきなり振られたからか、驚いてはいるけれども。まぁ、何時振られてもおかしくないですよね。生徒会。

「ぶっちゃけ、誰も悪くないんじゃね?って思います。ただ何かすれ違ってて、それが互いを傷つけてるような…」
「それ、昔からぼくが言ってるんですけど。あんまり聞いてもらえないんですよねェ。晦だからかな、って思ってたんですけど。」
「ほら、先輩もこういってますし。これから仕事らしいですけど。ちゃんとよく話し合って蟠りを解消しとくべきだと思いますよ。冷静な第三者の仕切りが必要なら、俺がやりますんで。」

小さなころは凛月と二人で『れいちゃん、れいちゃん』とすり寄ってくるばかりじゃったのに。そういって、脳裏に幼い零と凛月に衣更くんが浮かびましたが、想像ができませんね、幼いころ、ぼくはずっとひとりだったので、本当にそういう点では兄弟と言うのはうらやましい。そう思考してるのを察されたのか、兄上も寄ってきていいんじゃぞ。というが、成年も控えたぼくらとして、絵面がねぇ。…まだこういう姿をしてるから、まだなんか、下手な売れ方はできるでしょうけど…。ぼくも男ですからねぇ。人知れずため息をついてしまった。
話をしようという空気にもならなくなったので、ぼくたちはここで解散という体になったのだった。



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