スカウト 花鳥風月と俺。-2

撮影日当日、正門前にはすーちゃん以外が集まってた。一番最後じゃなさそうで、ちょっと安心した。が、話を聞く限り一番最後らしい。ちぇっ、休日ダイヤなの忘れてた俺が悪いんだけどさ。珍しいねぇ、とセナに言われたが、完全に今日は平日ダイヤだと思ってたので、まぁ、集合時間には間に合ってるので怒られることもないんだけど。

「スオ〜はいないのか?、ちょっぴり寂しいけど静かなのもたまにはいいか?な、文哉!」
「いや、この面子で一番うるさいのレオだけど。」
「司くんはあとで、後から来ますよ。月永先輩。」
「それならおまえら、今は仕事に集中しろっ、」

レオの一言に、俺とセナがシンクロして「お前が言うなって話だよねぇ。」と揃えて言った。俺はそこで止まったが、セナは言葉を続けてる。『王さま』が戻ってきて『武器』は尽きなくて文哉も大分良くなってるけど、精神的負担が増えてきたからどっこいどっこいってかんじだしぃ。…俺はそんなに酷かったのか、なんてちょっと他人事のように思っていると、ナルくんは本当は嬉しいくせに素直じゃないんだから、と言うのでセナに聞こえてたら怒られるよ。と俺は言うけど、ほんと文哉ちゃんも最近生き生きしてるから泉ちゃんも嬉しいのよ。と笑ってる。俺は二人が笑ってたらなんでもいいんだけどね。とはぐらかしておく。それなりだらだらと全員で移動を開始する。レオの背中を追いながら俺は次の撮影のための台本を頭に叩き込む作業をしてると、りっちゃんに呆れられた。仕事人間って言われたけど、俺は本の虫であって仕事が大好きじゃないんだってば。いや、好きだよ。でも違うのそうじゃない。最終的に文哉は『王さま』見てて!と言われたので、そのままレオを見て、ひたすら頭の中で覚えたばかりの台本を反復する作業を行ってると
花鳥園に到着した。
一通りの挨拶を行ってからいつものユニット衣装に着替える。手早く着替えてから、外に出ると綺麗なテラスのある広場的な場所で撮影を行うらしい。日焼け止めたりてる?とか最終確認して俺も現場に出る。

「文哉ちゃん、こんなところで撮影出来るなんて素敵!テンション上がっちゃうわぁ」
「クネクネしないでよ、みっともないなぁ。」
「セナ、暑くない?保冷剤持ってきてるから使うとき言ってね。」

文哉、気を使いすぎ。転校生にでもそういうのを任せておけばいいんだっての。
眉間をつつかれながら俺は甘んじてそれを受け入れる。ナルくんは、興奮して回りが見えてなかったと謝るが、これが映像で写ってたら俺が全力で叩いて止めてるから安心して、とカラカラ笑うと、そういう問題じゃない。と言い切られる。

「みんなのお姉ちゃんなんだもの。もっと冷静にならなくちゃ」
「まぁ、いいじゃん。それもナルくんらしさだよ。フォローはいくらでもしてあげるから、存分に暴れておいでよ。土俵でしょ?」
「文哉ちゃん!」

こういうときぐらい歳上風をふかせておかないとねぇ。いつも働いてくれてるんだし、これぐらいこれぐらい。と俺は笑ってなんでもないと答えていたら、セナはりっちゃんを起こすのに手を焼いている。なかなかの面倒見やさんんだねぇ、とかナルくんとそんな光景を見てると、セナが俺にヘルプを求める。仕方ないねぇ、といいつつ俺は、りっちゃんを起こすために動いたが、転校生がドリアンを持ってやって来た。とんでもない臭いを放つドリアンをりっちゃんの前にやってる。…うん、ひどい。ナルくんと二人で臭いの少ない方ににげたが、レオはそれはそれで霊感がとか言ってる。鼻がちょっと曲がってきそう。臭いでちょっと涙目になりそうなのはやばい、そう思って俺は思いっきり距離を開けてメイクを気にしていると、セナとナルがグラビアに行った手持ちぶさたの俺は、りっちゃんとレオを見ながら、ぼんやりとナルくんとセナのを見学しておくかと決める。遠巻きで二人を見てると、ちょっとおなか空いたかも。するめ食べたい、とか考えてると、転校生が寄ってきてお腹すいたならお菓子とか差し入れあるみたいですよ。と声をかけてくれる。

「転校生はさー見学で来てるんでしょ?見てかないの?」
「月永先輩が気になりますし。」
「大丈夫だよ、さっき霊感が〜って言ってたからどっかにいくことはないと思うよ。俺がだいたい見てるし。そうそうどっかに行かないから、見とけば?」

あ、はい。と遠慮ぎみに転校生が言う。本来の君の仕事はそれ、と言わんばかりに言って俺は視線を一瞬レオに向ける。レオはふんふん鼻唄を歌いながら新しいメモ帳に楽譜をたくさん生み出している。そんなのを見ながら、俺は小さく転校生を呼ぶ。どうしたんですか?と言うような目線をおくられて、俺はちょっとだけ、溜めて口を開く。レオを見つけてくれてありがとう。と。

「保村先輩…」
「二度は言わない。感謝はしてる。『Knights』を、レオを玉座にもどしてくれて。ありがとう。これでみんなで全員で前を進んでいける。ま、俺たちを王の号令の元で頑張って働かせてくれよ、『プロデューサー』さん。」

にっと笑ってやると、セナとナルの撮影が終わったらしく、ナルくんが先に俺の個別撮影だと教えてくれる。インタビューはすーちゃんと一緒に受ける予定だったのになんでだろ?と疑問を持ちながら、そっちに行くとちょっとトラブルが起きてるから撮影で時間を稼いで頂戴。と肩を叩かれる。なんかよくわからないけど、稼げと言われたら、そりゃあもう番犬のお仕事ですよね。分かってますよ、俺はそんな奴ですから。

「んじゃあ、ま。誰もうちの子が見てないけど。フォローは俺に任せなさい。」
「やっぱり、そういうところは文哉ちゃんね。終わったら見に来るから、お願いね。」

どれだけでも時間を稼いでやるってよ。って全力でインタビューと個人撮影を伸ばしてやろう。って思ったら思ったより早く終わったようだ。ちょっと残念。俺の個別撮影も筒がなく終わって、レオとすーちゃんがインタビューをうけてるあいだに、どんなことが起きたのか聞いた。まぁ、レオにそんな特技があったとは知らなかった。そんなことを話しながら、俺は休憩に入る。

「セナって鳥は嫌い?せわしなさそうだけど。」
「鳥がこっちに来るんじゃないかって、気が気じゃないだけど。」
「泉ちゃんは神経質ねェ。いいじゃない、鳥に囲まれる泉ちゃんも絵になると思うわよォ。」
「俺は何でも絵になるの。ド派手な鳥だってただの添え物にしてあげる」

そんなことを言うから、俺は誰を食い物にするかと思考を飛ばしてみる。五奇人とセナを並べたが。なんか、いじめられてる図しか浮かばなくなって、一人ツボに入る。怪訝な視線を受けたので、なんとか笑うことをやめてなんてごまかそうとしてると、入り口の方ですーちゃんが見えた。よし、すーちゃんを使おう。

「すーちゃん。来たみたいだね。すーちゃん!」
「あ、コラ!文哉、今絶対俺で変なこと考えてたでしょ。」
「さぁね!」

ほら、すーちゃん。インタビューだよ!と俺はセナから逃げるようにすーちゃんを使う。五奇人と並べてごめんだって、セナ。でも、完全に日々樹に負けてたぞ。脳内だけど。

/back/

×