スカウト 花鳥風月と俺。-1

スタジオで雑誌を読んでると、転校生がりっちゃんの寝床を分解してた。俺はきにせずスルメを食べつつ、雑誌をペラペラしてる。プレイヤーにはレオの曲。お茶もあって、あー幸せ。セナが来るまでばれないだろう。と踏みながら新しいスルメに手をかけてると、ナルくんが入ってきた、おはよう。といわれるので返事を返してやれば、そのまま転校生とりっちゃんを巻き込んで話をしてるようだ。そんな光景を眺めていると、俺の視線に気づいたのかなに読んでるの?ときかれたので、この間のセナが映ってるやつー。と返事をしながら、次のページをめくる。

「ほら、あんずちゃんいしがみつかないの。ほら、あんずちゃんだって困ってるでしょ?そろそろ起きなさい。」
「んー、ナッちゃんがいつになく厳しい。俺、ナッちゃんに何かしたっけ?」
「んもう、そんな顔で見られると許したくなっちゃうでしょ。」

まだ泉ちゃんや司ちゃん『王さま』が来てないからもうちょっと寝ててもいいけど、せめてあんずちゃんは解放してあげなさい。その代わり、文哉ちゃんの膝使っていいから。俺にふられたので、んーいいよー。と返事しつつ自分の膝を叩く。おいで、とやるが、ふ〜ちゃんの膝硬い。とかいわれる。ひでぇ。俺も嘘泣きしたい。うぐうぐしてると、転校生から、「保村先輩ぃ」と俺に救いを求められるので、本を読むのをやめて、転校生の救出を行う。
やだぁ、ナッちゃんとふ〜ちゃんの意地悪。あんずが布団を干しちゃったから、寝床に戻ってもかけるものがないんだよねぇ。それで風邪を引く方が問題だとおもうんだけど。ああ言えばこう言う困ったちゃんねェ。ううん、どうしようかしらァ?いい案ない文哉ちゃん。いっそ、りっちゃんが朔間の棺桶行くとか。やだ。ですよねー。
どうするか、俺が膝掛けによく使うタオルケットも洗濯中だしな。と衣装でも被せる?とか考えてると、レオがぶっ飛んだこと言いながら入ってきた。元気そうでなにより。レオが来るならそろそろセナもやって来るだろうし、そろそろスルメに口一杯に頬張って、片付けなければ。しょうもないことを考えてると、ナルくんも賑やかね。と言う。

「あ、ナル!久しぶりー!元気してたか?」
「まだボケるのには早いでしょ。昨日も一昨日も会ったのに、『久しぶり』とか言われると哀しくなっちゃうわァ」
「んん〜、んーそうだっけ?あ、文哉!久しぶり!」
「うん、昨日も会ってるけど、毎日はじめまして状態のすーちゃんと比べたら、だいぶいい方だと思うよ。ナルくん。」

ま、いいや!と昨日のことすら全部投げ出したレオは、りっちゃんの現状を問いかける。また、意識が落ちてるのか!?とか言いつつりっちゃんを盛大に揺さぶる。いや、起きてたから。さっきまで、レオが来るまで。ちょっとのあいだで、もう寝てしまったかもしれないけど、死んではないよ。そしてやり過ぎると目を回すだろうから、俺とナルくんで慌てて揺さぶるのをやめさせる。
ナル!ナルは心配じゃないのか!?リッツは意識がおちてたんだぞ。つまり失神してるってこと!今の『Knights』に捨て駒はいないのに、リッツを失ったら『Knights』はどうなるんだ〜!?って叫ぶのはいいけど、いや、その状態にさせてるのレオだから。うん、人の話聞いて。レオ。大事にしてくれるのはいいけど、それ以上やるとりっちゃんだって吐いちゃうよ。っていうか、落としてるのレオだよ。一人突っ込んでると、ナルくんに急かされて、俺と二人でレオの暴挙を止める。ほら、りっちゃんがあうあう言ってるじゃん。

「『王さま』落ち着いて、凛月ちゃんをよーく見てちょうだい。」
「ん?リッツ、よく見たら顔色も良いし、むしろ具合が良さそうじゃん。良かった良かった。心配したぞ、リッツ!」
「よくわかんないけど、今ので完全に目が覚めちゃった。うう〜、もう一眠り出来そうだったのに。」

目が覚めたということに、転校生が解放される。という意味がついてくる。転校生は保村先輩、お姉ちゃん。ありがとう。とお礼をいってくる。いや、お前のためにした覚えないけど。また膝枕よろしく〜。うん。いや、頷くなっての。

「そこで頷いちゃ駄目よォ。あんずちゃんも凛月ちゃんに甘いんだから。でも、手のかかる子ほど可愛いから、ついつい甘やかしちゃう気持ちよくわかるわァ。」

そして全員でレオを見る。うん、間違いなく一番手のかかる子どもだもんな。うんうん。俺はひどく満足げに頷くと、なんで俺を見て笑ったんだ?文哉、気持ち悪いなお前ら!、と俺に突っかかってくる。俺はそんなのも嬉しくて、レオだもんなー。で逃げておく。気持ち悪いなんて言われて傷ついちゃうでしょ!いくら『王さま』でも許せないわァ。おお、お前って怒ってもクネクネしてるんだな〜。わはは見てて飽きないぞ。
それ、火に油注いでない?と思っていると、反省してちょうだい!とナルくんが怒ってる。

「ナルくん、シワできるよ。ほら、笑って笑って。お肌大事にでしょ?モデルさん。」
「もう、文哉ちゃんからも何かいってあげてよ。」
「レオ。駄目。気持ち悪いは人に言う言葉じゃありません。」
「『王さま』が戻ってきてから、文哉ちゃんも戻った感じだし、良いことはたくさんあったけど。苦労もあるからお肌のハリが気になっちゃって。」

この間始まった番組撮影でメイクさんが良いって言ってた化粧品、聞いておこうか?なんか新しいコスメのなんかーって言ってたからさ、と話をふってみると、気分をよくしたのか、あら、ほんと?聞いてきてもらってもいいかしら?うん。おっけー。聞いとく。あんずちゃんも良いサロンを知ってたら教えてちょうだい?いや、そんなサロンなんて。え、転校生サロン行ったことないの?女の子なんだし、ただでさえセナに色々言われてりするんだから、10年後とか今からやってないと後悔するって言うよ?
いや、でもですよ。私お小遣いが。と言葉尻が消えてく。そんな高校生のお財布事情を察したのかナルくんは「お姉ちゃんに任せてちょうだい、今度アタシの行きつけのお店に連れてってあげる」と笑顔だった。あれはたぶん、モデルの美容の血が騒いでるな、とか思いつつ三人でワイワイ話をしてると、セナが入ってくる。

「スタジオの外にまであんたたちの声が聞こえてきたんだけど。防音練習室と違ってそこまで防音されてないんだから声のボリュームを抑えてくれない?」
「ごめんね、セナ。ナルくんと転校生が盛り上がってたんだ。」
「ようやくのご登場ね。もしかして仕事が忙しかったの?」

まあ、そんな感じ。と返事をしながらセナは荷物置きになってるスペースに自分の鞄を置いてから、俺とナルくんに目線を向ける。入学するときにはアイドル活動を優先するとは言ってたけど、最近モデルの以来も増えてきたらしい。季節がらの仕事が多いから来るときは一気に来るらしいんだけど、とぶつくさ言いつつも、セナの表情は嬉しそうなので。案外満更でもないのだろう。

「それだけ、泉ちゃんに期待をかけてるってことでしょォ?光栄なことじゃない、ねぇ文哉ちゃん。」
「モデルと子役はわかんないけど、あんだけ売れた後に再度売れるのには大変なんだよー」

近くの椅子を引っ張り出して、そこに座れば、セナも俺の向かいに腰をかける。俺は、そっと最後のスルメを食べてると、ナルくんが泉ちゃんが来たのに、司ちゃんがまだ来ないなんておかしいわねェ。どこかで迷子になってるのかしら?泉ちゃん、ここに来るまでの間、司ちゃん見なかった?なんて首を傾けてる。すーちゃんが入学して、だいぶすぎるのに、迷うことなんてないだろう。とか俺は思うのだが、セナはちょっとお疲れか不機嫌目に末っ子の分際で遅刻とかあり得ないよねぇ。お兄ちゃんたちが来る前に来てスタジオの掃除とかいいだしてる。残念、それ俺が今日やったからないよ。言うと煩そうなので、d黙っておく。りっちゃんを見るとわかってるのか、黙っていてくれる。よしよし。

「泉ちゃんは憎まれ役を演じるところがあるけど、普段から意地悪キャラで通さなくてもいいのに。ほんと、泉ちゃんったらツンデレよね。痛ぁっ!」

大きな声が出されたので、そっちをみると、どうやら手を叩かれたようだ。赤くならない程度にたたいたのだろう。ナルくんは叩かれた患部を庇っている。大丈夫ー冷やすーと常温の水を渡すと、そんな真っ赤になるほど叩いてないよ。というが、その叩いた子モデルだよ。と俺は思うんですよね。うん。

「から、人を勝手に変なキャラにしないでよねぇつ。……でも、あのかさくんが無断欠勤とかあり得ないしちょっと心配かもね。」
「無断欠勤って、会社じゃないんだし。」
「アイドルはビジネスだよ、文哉。」
「そうだけどさー。」
「いってるそばから、本音が漏れちゃってるわよォ。アタシ、司ちゃんが居そうな所を探してくるわ」

それで司ちゃんを見つけたら、『王さま』のスマホに連絡を入れるからちゃんと出てちょうだいね。ナルくんの言葉に被せるように、レオがスマホを落としたと言う、停止の連絡を入れなきゃな。と頭の隅っこで考える。ナルくんとレオの会話が親子みたいだな、とかおもってると、りっちゃんがナルくんを止める。俺、ス〜ちゃんから伝言を貰ってたんだよね。いま、思い出した。内容は家の用事で遅くなるからさきに話を進めてほしい。とのことだ。

「凛月ちゃん、そういうことは速くいってちょうだい。司ちゃんに何かあったんじゃないかって、やきもきしちゃったじゃない」
「っていうか、ふ〜ちゃんも知ってるよ。まぁ、地面のゴミを取るのに必死に掃除してたから気づいてないとはおもうけど。」

まじ?とりっちゃんに問いかけると、まじー。と言われた。ぜんぜん気づいてないの。っていうか、セナの目線がこわいんだけど。なに、勝手に掃除してんの。とか、いうけど、きれいな環境は必要だよ。肌にも演技にも。と適当に言いながら、セナの追撃を振り切りりっちゃんを見ると、目が笑ってた。確信犯かよ。俺はセナにガミガミ言われながら、適当に聞き流す。しばらくききながしてたら、ある程度落ち着いたのかそろそろ本題に入れと、セナが言う。

「下らない話で俺を呼び出したんだったら、それこそ俺の時間の無駄なんだからさぁ。」
「泉ちゃんはせっかちねぇ。まぁ時間は惜しいことは確かだわ。」
「で、俺たちを呼び出した理由は?まさか何もないのに俺を呼び出したなんて言わないよね?」

ずいずいと転校生に一気に距離を詰める。恐い顔つきで転校生に寄るので、転校生がびびって俺の後ろに隠れた。いや、俺に隠れても差し出すだけなんだけどさ。保村先輩ぃ。とちょっと泣き声に入りかけてるかも、とか思ったので、勝手にさせる。

「グラビアの撮影がですね。あって、それが『Knights』全員で、っていう指名でして……」
「ふぅん、グラビアの撮影ね。これが俺やなるくんや文哉だけの指名じゃなくて全員で、なんだ。」

セナは一瞬考えてから、視線をレオに向ける。『王さま』じっとしてられるの?そんな質問がレオになげられた。たぶん無理っぽいきがする。って俺は思う。レオだよあの予測不可能が息してるようなレオがだよ。無理じゃないかな、と視線をレオに向けると、レオは床に寝転んで筆が乗るな!と笑ってる。うん、自由人。

「ちょっと目を離した隙に床や壁に落書きしてるし。」
「あ!そのペンの色!なかなか消えなかったやつ!」

アルコールでやっと取れた記憶がある色は、今度この部屋から駆逐してやる。と決める。レオから慌ててペンをうばって、シャーペンに持ち変えさせる。シャーペンなら、消ゴムで消えるので、やりやすいだろう。セナはレオにそのまま怒ってるので、俺は一旦スマホで楽譜を納めて、さっき消した手順を思い出す。レオはペンを持ち変えたら、すぐにまた書き出すので、セナがペンを強奪した。ナルくんはセナに諦めろ。言って話を進めようとしている。もう、自由人だな、お前らも。と収拾のつかない現場を見ながら、俺はこう言う日が来て良かったな、とほんのちょっと思考を飛ばす。

「俺となるくんはモデルの経験があるし、文哉も小さな頃からやったことあるし、グラビア撮影もお手の物。『王さま』だって撮影の時はおとなしいだろうけど、心配してた待ちの間がなんとかなるなら御の字だねぇ。」
「んーまぁ、なんとかなるんじゃない。俺も要るし。」
「文哉は『王さま』をほとんどほったらかしにするじゃん、」

ほったらかしなんて失礼なずっと見てるだけだよ。と言うとそれがほったらかしって言うの。と怒られる。最悪のダメを見計らってるだけなんだけどな。とか思っていると、りっちゃんはどうも日中の撮影はヤダ。と言ってるのをナルくんが押さえてる。グラビアねぇ。とか思いながら、俺は得意じゃないんだよねぇ。果物持って、表紙飾ることはあったけど、あれももう何年前の話ってかんじだし。転校生の持ってきた企画書に目を通し始める。場所は花と鳥を触れあいを目的としたテーマパーク。植物園とか暑そうだな。そういえばセナは熱いところ苦手だったっけ、と思い出しながら聞こえる会話に耳を傾ける。まぁ、植物園とかちょっとじめじめしてそうだけど、そこまで暑くはないだろう。たぶん。

「まぁ、泉ちゃんはぶつくさ文句を言いつつも、仕事は『きっちり』やるから心配はしてないけどね、文哉ちゃん。」
「んー、そーだねぇ。」
「文哉ちゃん、乗り気じゃないかんじ?」
「んーんー。みんなで仕事なら俺は文句を言わないよ。」
「わかってんなら、いちいち言わないでよねぇ。」

あきれたセナの声とクスクス笑う転校生の声が聞こえる。じろりとセナに睨まれたのか、俺の後ろに逃げて鳴上くんと瀬名先輩は仲がいいなって!と俺を盾にしながら思ったことを言っている。その通りだと思うんだけどな、とか思うと、あんたの目は節穴?とか言われて、ぐっと俺も黙る。いや、節穴じゃないよ。どーしてやっかなぁ。と視線をセナからレオに向けると、ちょうどタイミングよく作曲が終わった様子で、満足そうに書いた紙を整えてから俺たちの方に跳び跳ねてやって来た。うん、普通に来い。

「ちょっ、ビックリした!?いきなり飛び込んでこないでよ、ていうかピョンピョン跳び跳ねないでよ。子どもかっ!」
「ん〜、じっとしてると落ち着かなくて、まぁそんなことはどうでもいい!あんず、メモ帳を貸してくれてありがとう〜!」

で、何の話をしてたんだっけ?なぜこの世界に人間が存在するのかって話?
ぶっとんだことを投げ込みながら、レオは俺の隣に座る。転校生は丁度いいと言わんばかりに俺の読んでた企画書を奪って、レオに説明を始める。レオは花鳥園の場所がわからないらしいので、集合は学院の正門前集合にしよう。と提案する。当日はなんど捜索隊が組まれるかな、とかどうでもいいことを思いつつ、手近の紙に日焼け止めと日傘と水分。保冷剤。となんとなくメンバーを見て要りそうなものを考える。甘いものもいるな。と書いて、撮影日を楽しみにするのだ。

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