-2020青葉つむぎ誕生祝

……俺も丸くなったな。と思ってしまった理由は、眼前のペンである。黄緑色のボディを持つボールペン。
『Knights』らしくない色合いのそれは、俺の手の中できれいにラッピングされている。

「……ってか、なんで俺がこんなことをしてるんだろ」

『NEWDIMENTION』の副所長青葉の誕生日。縁としてはあると言えばある。無いと言い切れないものでもないけども。そんなに仲良かった記憶もない、いや俺が覚えてないだけだろうけど。プレゼントという荷物を持って素知らぬ顔で居たのはいいが、誕生日会故に賑やかで渡すタイミングもなく俺の鞄の傍らにいる。
会場の壁…もとい事務所の壁に持たれながら、呆けて配られた飲み物をちびちび飲みながら、ため息をついた。そんな音を聞き付けたのかナルくんがこちらを見て手をふって寄ってきた。

「あら、どうしたの。ため息をついて」
「なにもないよ。俺がいていいのかぐらいは考えてたけど。」
「同じ事務所なんだからいいんじゃない?なぁにプレゼントでも持ってきたの?文哉ちゃんマメだものねぇ。」
「いや、別に俺は……」

ちらりと鞄の方に視線を移したが、そこには変わらず俺がなんとなく用意したプレゼントがおいてあった。変わらずに鎮座している。それに気付いたのかナルくんは視線の先に気づいて俺の鞄の方を見て。あるじゃない素直じゃないわねぇ。とか溢された。

「ほぉら、渡してらっしゃい。青葉先輩!文哉ちゃんがプレゼントあるって!」
「ちょっとナルくん!!!!」

抵抗虚しく、鞄の傍らに置いていたプレゼントを握らされ、事務所の中心に引っ張り出された。どうしても逃げたい気持ちが一瞬で沸騰するレベルで沸いてきた。
好奇の視線にさらされてるのは実感できる。いつも塩ばっかり食らわせてる対応をしてるのは紛れもない事実。そんな俺が、『Knights』以外に良くする理由?ないな。

「保村くんが、ですか?嬉しいですね!」
「……うっ……」

ちょっと離れたところでレオが、あいつ照れてるぞ!とか言う。いや、言わないで頼む。穴を作って掘って埋まりたいレベルに至る羞恥心、かろうじて握らされたプレゼントをつきだして一言言うのが精一杯だった。

「……おめでと。」
「俺にですか?」
「このタイミングで誰にだよ。お前にだよ、青葉。」
「保村くんから祝ってもらえるなんて思っても見なかったです。開けてもいいですか?」
「お前にやるんだから、好きにして。」
「なら、早速。」

ニコニコして、俺が渡したばかりのプレゼントの紐をほどいて、ハードめのケースを開いて目を輝かせ中のものを取り出した。
ペールライトのボディと、濃紺のチェスの駒に一ツ星と2つの六芒星、それから、色とりどりの3つの稲妻を刻んで貰ったボールペン。うちの事務所のアイドル全員の意匠を入れたものだ。無論青葉のユニットは大きくいれてもらってる。

「うちの事務所全員居るんですね」
「そういうの好きそうだろ」
「えぇ、そうなんです。よくわかりましたね〜。さすが保村くんですね」
「はいはい。渡すもん渡したし俺別の仕事するから、帰るわ」
「ありがとうございます。大切にしますね!」

青葉が嬉しそうに笑い胸ポケットに入れる後ろで『Knights』の元飼い主たちが笑い転げてるのを俺は睨み付けるしか出来なかった。


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