20200712(ないつの日) 5題-大好きなおもちゃ(朔間凛月)

5つのお題ったー
お借りしました。


お題は『蹴り飛ばした意志の行方・大好きなおもちゃ・約束を口実に・どうすれば手に入る?・夕陽の色に寂しくなった』です




事務所の隅っこで本を読んでいたら、肩を叩かれた。今いいところだから、あとで話を聞くと目を向けずに言葉を放ったが、思いもかけない言葉が聞こえた。

「セッちゃん来たよ。」
「まじ!?」

声をかけられて顔を上げれば、部屋の入口で青葉が俺の勢いに驚いていた。おい、うそかよ。っていうか、セナは昨日フィレンツェに出発したじゃん。思い出してがっくりした。俺の反応を見てりっちゃんがおなかを抱えて笑ってた。おい、おれで遊ぶな。

「ふ〜ちゃんは面白いよねぇ。」
「俺で遊ぶなっての。」
「面白いからやだ。」
「……本読むから邪魔しないでね」

さっさと思考を切り替えてどっぷりと本の世界に飛び込む。どこまでも深く海のような情景を思い浮かべながら、文字に浸っていると俺の聴覚にまた音が飛び込む。今何か落ちたぞ。視界を本から移動させると、りっちゃんが近くの物を叩いてた。

「りっちゃん。暴れないの」
「えー面白いことがないからやだ」
「子どもか。」
「ふ〜ちゃんより誕生日先だし」
「じゃあもう、しっかりして……寝ててよ」

かまうのもやめて視線を落としてまた本を読んでるとまた何かを見つけたのかガサゴソと動いてる気配がわかる。

「あ。月ぴ〜」

その手にはひっかかりません。そうこぼしながら、ページをめくって読み進めていると、レオの声がした。え?さっきのほんとうだったのか?そう思って顔を上げれば、ホールハンズを持ったりっちゃんだけがいた。

「の動画」
「……りっちゃん。」
「ふ〜ちゃんはわかりやすいねぇ。」

ニヤニヤして、こっちを見てる。図られたと思うよりも呆れが強くなったので、俺は別室を予約して違う部屋で本を読むことにした。最初からこうしておけばよかった。


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