スカウト!リテラリーアーツ-2e

入るよ〜。とスタジオ入るためドアノブを掴もうとした瞬間、レオが勢いよくドアを開け俺の腕を掴み、ずんずんに進む。抵抗する気もないのだが、なになのか状況がよくわからずに俺の頭に疑問符が浮かぶ。後ろを歩いていたナルくんは、多少困惑を浮かべているが、不思議そうに俺の後ろを歩く。
いつもは白ホリゾンが主というように存在しているのだが、それが今は端っこによけられて、そこに俺がよく使う机と椅子のセットがそこにあって、レオはその前で足を止めた。

「文哉、座れ!」
「……は、はぁ?何なの?」

言われたら断れない系犬の俺は、そのままそこに腰を下ろすんだけど。何なのかよくわからない。周りを見てみると、ホリゾン裏から、すーちゃんりっちゃんセナが姿を現した。いや、なんでそんなところから出てくるの。

「文哉ちゃん、プレゼント。」
「はい?」
「文哉のところ、部員誰もいないでしょ?追い出しもなにもないのはさみしいからって、かさくんが気を利かせて計画してくれたって訳。」

ほら、渡してやりなよ。
そういいながら、すーちゃんが少し恥ずかしそうに机の上にラッピングされた四角いものを置いた。紺のリボンが丁寧に書けられている大判のアルバムであった。薄めだけれど、大きい版のものだ。

「探すのに苦労したんだよ。ふ〜ちゃん、今年『Knights』に入る前に全部焼いたり処分したって言ってたから。」
「写真は今年みんなでライブしたり、イベントでとったものとかを焼き増ししてきたのよ。」

そこで、すーちゃんと打ち合わせした時に問われた内容を思い出した。見つからなかったから聞いたのか。
納得してから俺は視線を上げていたのを下ろして手元のアルバムのラッピングを解いて、中を開く。開いて一枚目には『Knights』の集合写真が貼られてた。いつかのライブの後に転校生がとります!とカメラを持って立ってたのを思い出した。
それから校内でのデザインコンペに出た時のものや、学院祭で俺がシナリオ書いて舞台に立ったものやら、今年の春から順番に張られていた。一枚づつめくって、みんなでわいわいして思い出に花を咲かせていると、一番最後の一枚になってしまった。思い返せば、今年度一年が一番濃いんだなぁ。思ってしまう。
システム的に動いてた二年だったのも、大きな理由なんだろうな。と思っていると、胸が詰まってきた。そっと次のページを開いて、そこに張られていた写真が目に入った瞬間、俺の息が止まるんじゃないかと思った。震える声を取り繕いながら、写真について言葉を発したらレオが嬉しそうに言っていた。

「文哉が捨てたって言ってたけど、セナが一枚だけ持ってたんだ!」
「文哉が一回言ったんだよ。『王さま』探すために聞き込みするのに一枚必要じゃない?って!それで撮ったの!!」
「セッちゃん照れてるぅ」
「煩い!」

図星であったのか、セナの声がいつもよりも大きい。写真の中で俺は本当に嬉しそうに笑っている。中央のレオと巻き込まれて据えられた中心で不機嫌顔のセナと二人を見て嬉しそうに笑う俺の姿だ。レオの手にレオの目に似た色のボールペンが握られている。苦しくて地獄の中にあった唯一のクモの糸。俺が一番大事に抱えていきたいと思っていたころの記憶がそこにあった。
どうして俺も覚えてないのだろうか、と頭をひねって見るが心当たりはない。ない記憶を掘り起こすために写真を見ながら首をひねってると、データを送ろうと思ったのだけど、とった後すぐに俺は呼び出されてしまったので、そのまま送らずしまいになったとセナが言う。だから、俺もそこまでおぼえてなかったのだろうか、この俺が?そんなことあるわけないだろと記憶をつついてようやく思い出した。色々聞いてしまったんだった。だから見なかったことにして消してしまったんだろう。ある程度自分の中でも納得したので、話題を変えるように言葉を放つ。

「ね、一番最後のページの写真張り替えてもいい?返礼祭始まる前に集まってみんなで写真を撮ろうよ。」

もしも、そこで俺が処刑されても、俺はこれだけをもっていけるように。なんていう言葉を飲み込んで、おいた。俺の提言は見事採用されたし、返礼式の日。『レクイエム』が始まる前と、終わった後。レオが王さまだったころと、そうじゃないの。二枚を撮ることになったのは別の話。どちらを一番最後に張るか悩んだんだけどさ。二枚とも張っちゃった。大きい版だし、問題はない。

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