スカウト たまゆら-2e


俺は今思えば、飼われていたんだろう。レッテルや、愛玩動物。そんな感じ。求めたら答えて、必要なものを与える。それだけ。
そう思うのは、俺が普通と違う道を歩いてきたのだから。
一般家庭で、俺を見なかった日がないほどの売れっ子だったんだ。まぁ、大きくなって売れなくなってから、書いた本が売れて、文字やらを扱い出したわけなんだけど。そう細々として入るけども、もっと仕事がほしくてアイドルに転向したんだ。売れなきゃおまんまくえないしね。
そうして夢ノ咲に来たわけなんだけも。近くを歩いてた先輩がさ、声をかけてくれたんだ。だから入った。高校を卒業したれまた俳優を深くやっていくつもりだから、アイドルはいろんな仕事を覚えるために。それだけで選んだんだから。そこの選択肢は間違ってはない。だけども、比較的遊びたがる派閥だった。だから俺は距離を置いてライブの連絡がくるときだけ顔を出した。それが許されるの、俺が所属する派閥は、消しカスみたいな俺の名前を使って多少のリードを得て、アイドルを続けた。結局俺は入っているけど、末端でバックダンサーみたいな扱い。結論、俺は客引きなパンダとして据えられてた。俺を見に来た客は結局そのセンターやらを見るようになってきた。俗に言う、推し変だとかそういうの。当て馬みたいな学生生活してた。貪られるような生きざまだっただろうね。端から見ると。俺は当事者だから、わかんないけど。
そんなことばかりで、何かあれば俺を使って売り、すべてをかっさらわれ続けた。それでもいいと思ってた。アイドルでいろんな仕事を覚えて、また芸能界でステップアップする。それだけで生きてたんだ。高校生を。
まぁ分かりやすいから彼らと交渉はしやすいよね。いつだって俺は大人の世界を渡り歩いてたからね。大人の顔色見ながら、次の役を得て、よいこの保村文哉を演じてるのだから。おかげで人の顔色から、それとなく察知することには長けてしまったけどさ。
与えるから放って置いて、必要な時だけ呼んで、指示書で踊ってまた次のライブ決まったら連絡ください。っていうような生活をして二年生になってたんだ。
そんな生活をしてる間にレオとセナと出会ったんだ。レオの楽譜を拾ってさ。書くものがないからって、うちの事務所の粗品のボールペンあげたの。たまたまそれがさ持ち手がレオの目の色と似た色だった。きれいだったのはよく覚えてる。
ボールペンがきっかけだったのかはわからないけど、ライブが近くて学院で作業すると何故か何かを察してかレオがよく来るの。会うたびに俺にボールペンを頂戴というから、事務所の粗品のボールペンを毎回レオの目の色に似たやつを毎回新しいのを用意してたのを渡すの。楽しそうにするレオの横で本読んだり書き物の仕事をしてたりしてるとさ、セナがレッスンだから打ち合わせだからとレオを回収しにくるの。そのよう菅さ、あの二人今と変わらないの。二言三言交わして、去っていくからそれを見送ったら俺も自分のレッスンとかに行く。
そんなリズムができる頃セナが俺が学院にいるとレオがだいたいいるからって、俺の連絡先を教えろって言うの。初めてだったよ。業務連絡じゃないのって。送ったら返事の帰ってくる連絡とか、嬉しかったんだ。嬉しくて泣いたんだ。大の高校生が泣いて目を擦って怒られるの。そんな日々は俺の今でも宝物なんだ。
派閥も違うのに俺に話しかけてくれてさ。友達なんてろくに作ったことがなかったから、こういうことが初めてで。同じ派閥だった人たちは、友達だろう?と言いながら奪っていくような人だっから、友達って空想のものだと思ってたんだ。だけど、セナと連絡を交換してから、セナとレオのやりとりを見て、あぁ、親友だとか友達ってそういうものなんだね。って思うようになったんだ。そこに混ぜて貰った気がして、俺もなんだか友達になったのかな。って思えてmとっても幸せだったんだ。
そうしてる間に、仕事が増えてさ。毎日が忙しくなったんだ。なんだかライブの仕事が増えてきて、聞きたいことがあったから先輩たちを探してたら、聞いたんだよね。俺を入れてる理由が、そんな昔の過去の栄誉があったから。その利をすべて彼らが貪っているのをさ。まぁ、そんなの聞いたって、現実実力主義だし、その人たちは結局未来で楽するよりも、今を楽する道を選んだんだ。って思うと、別に学生時代なんて、どうでもよくなったんだ。人生は長いし、その三年だけだ。
俺は好きに仕事をしていくから、勝手にしてほしい。好きなときにあんたたちの望む俺を演じてあげるから、必要外に押し付けないで欲しいって、思うようになったんだ。言えば変わったのかもしれないけど、なにも俺を知らない彼らに、言う気力もなにもないよ。知っているのは連絡先の名前だけ。高校生活もビジネスの延長だと知ったから。相手が望むままだったなら、俺もむこうも平和にいくからだ。そうして俺は俺自身と言う役を通して、自分の身を守ったんだ。そう生きてながら、学院にくるとレオがくる。セナが回収しにやってくるから、たった二言三言交わすだけが、楽しくてさ。それだけが幸せだったんだ。だけどさ。
仕事が増えて、ライブが増えて、先輩たちの連絡が増えて、書けなくなるし本も読めてなくてさ。一度ストレスからの過呼吸でレオとセナの前で倒れたんだ。
それ以後会うのが怖くて、学院のいつもレオやセナの会う場所に寄り付かなくなった。倒れたことを切っ掛けに先輩たちが、世話焼きになってさ。レオとセナに会うことはそれ以後ほぼなくなった。
俺は嫌われたと思ってた。だから、ずっとこの小さなやりとりだけを思い出に残りを生きていくんだって思ってた。そんな記憶を風化させないように大事にしてたんだけど。俺に選択の機会がくるんだ。
レオの曲が好きか。レオが好きか。レオがそう提示してきたんだ。三毛縞を連れて。泣きそうな顔してさ。
あのときはよく覚えてるよ。先輩たちが俺を旗頭に上げて派閥を組んでたこともあってか、俺は先輩たちの顔色を伺って生きてた。反応を予測して彼らが一番楽しいと言うところを選んで、イエスしかいわないようになってた。必要な時に必要なものを必要な分だけ提示する愛玩動物。ただの見られて本人たちが満足するように動くだけ。『Valkyrie』だった仁兎が羨ましかったよ。愛されてんだもん。俺はただ自分を減らして生きてる。この差を恨んだ時もあったけど、俺も結局考えたら、その最初の楽を選んだからなんだろうな。って思ったよ。入る派閥もユニットも選ぶことなく声をかけかてくれただけの理由で選んだ俺への罰なんだと思ってるよ。……それでさ。話を戻すけど。
周りがレオの楽曲ばかり選んでた。あの人たちは俺に同意を求めたんだ。だけど、俺は自分の大事な思い出を崩してまで同意はできなかった。捨てろなんて言うなら、俺は命を捨ててやると思ってるけど、その人たちと違ったんだ。周りと違う選択肢を選んだら、お前なんか要らないってさ。吠えただけで棄てられた。俺だけ残されたユニットは見事悲惨なほど、校内歴代ライブ最低点を叩き出して敗退解散を遂げ、バックダンサーやコラムとかで細やかな点数だけを拾い上げて、なんとか進級した。偶然時間が余ったからテラスにいたら、セナが『Knights』に俺が欲しいって言われた。俺だからっていう理由をくれたけど、今でも正直わからない。俺個人なのか付加価値なのかわからない。親愛とか、友情とかもいまいちわからない。今までそんなものなかったのだから。わかりようがない。
でもレオが作った居場所だから、セナが立ってる場所たから守ってやりたいと思ったんだ。愛しかたがわからないから、一般論なんていう鎧で俺を作ってる。レオとセナのやり方しかしらないから、それをベースに一般論を着飾った俺なりに手探りで個性なるものを組ながら様子を見て変化する。
塩対応だとか言われるのもそのせい。やり方がわかんないんだもん。本当の俺なんていまいちよくわからないのは、ずっと俺の皮を被る役をやつてたからかな。俺はどうしたら良いんだろうね。俺もよくはわからないんだ。
目を閉じて、俺の今までを言ってみた。今まで誰にも言ったことのない、本心だとは思う。それもあんまりわからない。場所によって、立場によってそんなものはいくらでも変わると知っているから。自分と言うものはよくわからない。不思議だよね。自分で自分の事はよくわからないのに、他人の方がよくわかるんだろうね。なぜだか、そんなのもよくわからないのは熱のせいなのか、別の原因かもゆだるような頭では理解は遠い。ぼんやりと体の感覚はまったく鈍い。いつのまにか俺の手はすーちゃんの両手に包まれていた。強くいたく握られていて、ちょっといたい気がする。
腕枕のアイマスクをはずしてみると、泣いてるの?なにがあったの?と問いかけても、彼は首を横に振る。なにもないと言うけれど、その目は赤い。俺の過去に同調して泣いたのだろうか。そう考えるのは容易い。あの選択をしたライブで俺はあの人たちとは、あの一派とは袂を判ったんだ。だから、すーちゃんが泣く必要もない。

「ねぇ、俺幸せだよ。何でもっとはやくに蹴って離れなかったのかと後悔してるぐらいなんだから、そんな顔しないで。ね?俺が泣かしたみたいじゃんね?」

それに、今の俺の居場所はここで、死ぬとしたらここがいいっていうぐらいに、思ってるんだから安心しなよ。もう、一人で消えたりなんかしないからさ。

「あぁ、そうだ。ここまで聞いてくれたんだから、ついでに一つ教えてあげるよ。」

俺はすーちゃんより3日ぐらいしか変わらないんだ。だから、さ。名前で呼んで欲しいなぁって。
そう投げ掛けると、ですけど歴がー。と言うので、あの人たちと同じ呼び方されるのは嫌だし、熱でて寂しいから甘えさせて。まぁ今すぐにじゃなくてもいいからさ。それだけ伝えるとタイミングを図ったかのように、チャイムが鳴る。昼休みの終わりだ。
さぁ授業だから。おとなしく寝てるから、行ってこい。そうすーちゃんを追い出すと同時に鬼龍と仁兎がやってきた。食べる終わるまで見届けるからな。と言われてしまったので、さっさと食べようとやけど覚悟で口の中にいれたが粥はぬるいし、仁兎がちらちらこちらを見てるので、さっきまで話してたのは聞かれたのかもしれないな。言動からで察した。そのせいかしてか、ちらちら見られるのが面倒だったので、仁兎に問いかけてみた。

「なに、そんなに見て……さっきの会話、聞いてたの?」
「ごめん、保村ちん。悪気はなかったんだ、入るタイミングがなくて。」
「防音ちゃんとしてるスタジオじゃないし、気にしてないけど。」

べらべらしゃべってる俺も悪いんだし。セナやレオの耳まで届かなかったらなんでもいい。会話を終わらせて器を空にしていく。味覚も鈍ってるのか、そこまでちゃんとした味を感じることはない目下食べ終わることを目的として、胃の中に納めていく。仁兎と鬼龍から見られてる気配はするけど、手を出してくるような様子はない。授業でも使ってるのに、そんな珍しいわけでもないのに、二人の視線がいろいろとさ迷っている。そんな静かな空間で食器と器のあたる音だけが鳴る。少な目のご飯を先ほど解熱剤を飲んだので、今回は胃薬のみ服用まで済ませると鬼龍に食器を回収してから立ち上がり、仁兎はおとなしく寝てろよな!と俺に一度笑って部屋から出ようとしていた。

「あのさ……」
「どうした?保村。水か?」
「いや、礼を……ありがとうって言ってなかったから、それだけ……」

目を合わせることはせずにいると、二人は一度お互いの顔を見合わせて一度不思議そうな顔をして、異口同音のお大事に。なんてありきたりなことを行って出ていった。
カラカラと扉のしまる音と遠ざかる足音を聞いてから再び目を閉じる。遠くの喧騒が聞こえて、人のいる気配がしていたが俺はそっと眠りについた。起きたら熱だしたのがばれて、打ち合わせにも参加できず泣く泣くタクシーに突っ込まれたのはここで語っておこう。
熱なくなったのに、なんで俺は家に連行されなきゃならん!断固拒否を貫きたかったが、命令。って言われたら俺も強くでれないのであった。

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