-2019年07.12の日。(全短編5人分)

文哉とレオへのお題は『器用なのに言えない私と、不器用だから気付かない貴方』です。

これはまだ俺が二年の時の話。チェスで、ただ神輿に乗せられた頃の時。彼らの思考が俺にはだいたい読めたている。過去の栄光の力を借りて比較的に楽になりたい彼らから俺はただただ逃げるようにしていた。
校内を移動していると、そんな彼らの声が聞こえて俺はそっと物陰に身を隠した。行き止まりの通路に人はなく、その声が遠くに行くのを待つ。声がだんだんと近くなってくる。見つかるかも知れない。そう思うと呼吸が早くなって自分でも過呼吸に陥っているのに気がついた。手足が震えて、意識が揺れる。しゃがみこんでうつむいて、落ち着くのを待つけれども兆しなんてない。また倒れるかもとか思考は落ち着いてるのい呼吸だけが整わなくて、どうするかと考えていると、おい文哉。なんて誰かが呼びながら俺の前に誰かが立つ。

「どうした?大丈夫か?」
「……レ、オ。」
「顔真っ青だぞ?まって、今から想像する。」

ん〜?と声を上げて俺と同じ視線の高さまで来るので、待たない。という言葉を出したかったけれども、喉も呼吸器も働いてないので、俺はレオの服をつかんで抱きつく。制服越しのぬくもりを感じて、嬉しくなる。最近は人とも会えてなかったので、こうしたやりとりが正しいのかはわからないけれど、嬉しい。レオの肩にあごを載せるように抱きつくと、レオが俺の背中を優しく子守唄でも歌い出すような勢いで叩いた。

「なんだ?やけに甘えただなぁ。お疲れか〜?」
「ユニットが大変だからね。」

一時期リーダーとしてレオはたっていた。レオがいなくなって別の派閥が生まれて残った俺が今はその長だ。まぁ、ゴミみたいな栄誉を吸い付くしてるやつらだけど。どうせそれまでの付き合いなので、我慢をしていればいいと俺は思っている。

「文哉。そんな顔をしてたらダメだ!笑え!」
「そうだね。」

ストレスがたまりすぎて体調面で影響が出ているけれど、それでもこの時間が幸せだからいいと思ってしまう。いっそレオのユニットに混ぜてくれ。とも思ってしまうが、本当に俺が入っていいのかわからない。レオにとっての相棒であるセナ。セナにとっての相棒であるレオ。この二人に俺はいらないのだ。

文哉とセナへのお題は『吐いた嘘を見抜いてしまう、貴方が嫌い』です。

「文哉。また痩せてない?」

ライブが終わって着替えの最中、俺の背中をみてセナがいう。ぎくりと俺の身が震えた。最近、まともに筆が乗らなくて本にのめり込んで睡眠時間を削ってるって言いたくない。

「……役づくりだよ?」
「あの人に聞いたけど、最近コラムばっかりでしょ!」

俺のほっぺたを勢いよくつまみ上げる。いたいいたいと声を上げても、セナは手を休めてくれない。声を上げても、ナルくんもこちらの様子を見ているだけだし、りっちゃんに至ってはおなかを抱えて笑ってる。薄情ものめ。この野郎。

「いはいよ、ふぇな。」
「じゃあちゃんと言いなよ。食べてませんってさぁ。いい加減にしないと骨と皮になっちゃうよお?」
「ってぇ……じゃあさ、みんなでご飯にでも行こう。」

俺が食べてるのを見てくれたらいいじゃんね?なんて笑えば、セナは仕方ないねえ、と笑ってた。セナはカロリー管理のため家で食べるとごねるのだが、俺も俺でセナが食べないなら俺も食べないと脅して、全員で食事をするということを実現させた。

「ま、食べてるんだけどね。」
「え?なんで保村先輩はそんなに肉付きがよくないのですか?」
「……さぁ?」
「羨ましいわねぇ、いくら食べても太らないなんて。」
「睡眠とってないから不健康そうに見えるんだけどね。」
「文哉〜?」
「それで痩せたとか言わないよねぇ?」

んぐっと俺は一瞬黙ったが時すでに遅し。俺の嘘を見ぬかないでくれよ。


文哉とりっちゃんへのお題は『手放せないものが多すぎて』です。

俺は事務所さえあればいいと思ってた。けれどもそうではないと最近気付かされた。かなり大がかりな遠回りだったようだが。昔を懐かしみながら写真の振り分けを行っているとりっちゃんが寝床から顔を出した。

「あれー?ふ〜ちゃん何してるの?」
「んー。アルバムの整理。セナとレオにわけようと思ってさ。」

ふーん。と言いつつ俺の背後に立って持っていた写真を見ている。レオが召集して行ったライブやら、俺が見てない『ジャッジメント』の写真だったり、レオが帰ってきてから全員が笑ってたりバトルしてたり、写真を見るたびにあれやこれやと思い出す。懐かしさに胸を打たれてると、ねぇ。ここ一人足りてないよねぇ?と言われて、俺は首をかしげる。

「レオにセナにりっちゃんにすーちゃんにナルくん」
「それからふ〜ちゃん」
「俺か。」

そりゃあ足りてないなぁ。と納得して振り替えると、俺の写真は今のユニットに入るときに学院中のものを処分しているので、学院には俺のいた記録はあれど、そんな絵はない。

「俺の写真なんて学院中探しても見つかんないようにしてるんだけどなぁ。さてどうしたものか。」

頭を抱える俺に対してりっちゃんはクスクス笑って、馬鹿だねぇ。俺たちを頼んなよね。愉快そうにクツクツ笑ったりっちゃんは、待ってて。なんて言いつつ数分後には大分の枚数を持って帰ってきた。

「りっちゃんそういうとこ。」

捨てたはずのものは、案外周りが持ってるもんだよ。と笑ってた。そういうところは周りを頼りなよ。なんてりっちゃんが笑って俺の頭を撫でてた。…全員の俺の写真を全部捨てさせると新しく決意をしたがそういうことじゃないとこんこんと説明された。うん?納得しない。



ナルくんと文哉へのお題は『この瞬間の君が好き』です。

ランチ時。掲示板で呼び出しを喰らったので、指定先に行くとナルくんは先に席を取ってナルくんの好きな唐揚げを食べて身悶えてた。俺に気づいたのか俺も頼んだものを持ってそこに行くと、嬉しそうに笑ってた。

「いきなりごめんなさいねぇ。」
「で、何?困りごとってさ。」

そう、俺は掲示板で困ったことがあるから、とりあえず唐揚げ定食を買って二人で食べましょう。と言われてるのでその指示に従ったが…うん?いまいち呼び出されてる理由がわからない。

「ガーデンテラスで新に発売されたこの唐揚げ定食を研究したかったの。」
「はい?」
「下味がどうとか、胸肉がどうとかいろいろあるじゃない。」
「うん?」

話を聞いていると、どうもあれだ。唐揚げが新発売されたのだが、それがどうもめちゃくちゃおいしいらしい。俺はまだ食べてないので味については全く分からないのだ。なんで俺が呼ばれた理由に結ぶのかと疑惑の目で見ていると、視線に察したナルくんが、「文哉ちゃんなら、幼いころからいろんなものを食べ慣れてるから知ってるかと思って。」って俺がよく食ってたのはロケ弁で味も塩もこいものばっかりだよ。そんな俺が知ってるはずないだろう。と理を入れようと思ったのだが、美味しく食べるナルくんを見ると、強く言えない。ついでに、俺は家の味についても疎いからやめてほしい。

「わかったから、今日だけね。次はないよ。」
「ありがとう、そういって毎回付き合ってくれるじゃない。」

…前回の鳥の南蛮漬けだったり、コロッケだったり色々やってるけど、ガーデンテラス…ふつうの食堂ってこんなものじゃないはずなんだけど。ちょっと軽く疑問もあるけど、料理に罪はないので、俺は思考を放棄して、目の前の食事について考えることにした。

「ねえ、この下味って塩コショウだけかしら?」
「……スルメなら食べ比べれるけど、唐揚げは専門外なんだよね。」

そんな専門のアイドルが居たら怖いんだけどさ。でも、まぁ美味しそうにナルくんが食べてるならいいぁ。幸せそうに食べてるナルくんのお顔が好きだなぁ。と思ってしまったので、そっと唐揚げを一つ差し入れておくと、自分で食べなさいと怒られた。


すーちゃんと文哉へのお題は『「うん、知ってる」』です。

レッスン休憩中に、真面目な顔してすーちゃんが寄ってきた。保村先輩!あのですね!このCuteな子どもが保村センパイに似てるんですけど!ご兄弟ですか?なんて声を上げてるので俺はその画像をじっくり見ていると幼いころの自分が、写っていた。キラキラと子どもながらに大人顔負けの仕事をしていたころだ。

「……そりゃあ、まぁね。それ俺だからね。」
「えっ!?保村先輩が幼い?」
「いや、俺も子供の時があるからね?」

嘘だと言わんばかりに驚かれたんだけれども。これ見たことある?って他のメンバーに見せるとあぁこれね。と移ってた時の時代から出演ドラマを見ながら、ナルくんとセナがあぁだこうだと言っている。その様子は間違いないと思って視線を動かすと、すーちゃんは呆然としていたので、俺はだいじょうぶだよ。と宥めることになった。…っていうかこれ、俺がすーちゃん宥めることに意味があるのかわからない。なんで?と首を捻っていたが。はやく末っ子戻して。と言われたので、とりあえず肩を叩く。っていうか、何でそんなに驚いてるの?そっちの方が疑問なんだけど?

「じゃあ、保村先輩はあのお菓子の会社のMascotcharacterも」
「うん、知ってるしあった事あるし、提供の番組にも出たことあるから向こうも顔知ってるよ俺のことを。」
「えぇ!?私だけが知らなかったんですか?」
「うん、そうだね」

そういうと、すーちゃんが石なったので、俺は慌てて、すーちゃんの復旧につとめることになって、休憩時間ほとんどもっていかれた。解せぬ。


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