レクイエム*誓いの剣と返礼祭-05 俺の思考は別ベクトルで一気に加速させるために、自分の持ってた原稿も、文芸部の卒業発行も全部先に済ませておく。原稿を早々に提出したこともあってマネージャのむっちゃんは驚いてたけど。締め切りは守ってるのに驚かれるとは何たるや。それはそれでいいんだけど、俺はとりあえず目下の【レクイエム】に専念することにする。 白い紙の上の方に今日の日付と、タイトルを入れて。楽曲から思案する。一度やりたかったこと。これは、昔『Knights』に入る前にやりたかったことだった。まぁ、全部却下喰らって遊ぼうぜ!って言われた時期の頃の話だから表沙汰にするつもりはないんだが。経験の少ないすーちゃんのフォローアップしつつ、相談されたら。という建前で俺はスタジオにいるわけなんだけど。……目の前のセナが怖いです。先生。 「…セナ?…見られたら穴空きそうなんだけど。」 「文哉、何を考えてる?」 「返礼祭。」 なんで、そういいだしたの?と言うけれど、俺は『Knights』の番犬だからね。居場所を守るために必死なだけだよ。と言えばセナの眉間に皺が寄った。ここに来るまで、小学校中学校はまともに行かずにスタッフさんが俺の話し相手だったりしたけどさ。それでも、ちゃんとした友達じゃないわけじゃん。夢ノ咲に来たら俺の名前にたかる様なのばっかりだったし、レオとセナと出会って、レオを選んだからそれを聞いたセナが俺を拾ってくれた。 「そういう理由じゃ駄目?」 「そうじゃないんだけど。もう、なんでそんなに物わかりが悪いかなぁ。」 そういいつつ俺の書き出していた企画書をセナが奪い取って、目を通す。はぁ?と声を上げるので、え?おかしい?そう問い合わせると可笑しくはないんだけど、なんだか、らしくないというか。思い切った舵きりするんだねぇ。って言われた。ほっといてくれ。 みんなで、やりたかったこと。なんだ。今になってあれもこれもと思うから、悔いを残さないように俺はやっておきたいんだ。消費されてた俺がこう思うのは変なのかな?セナとレオに出会うまで、友達っていう友達にも恵まれてなかったからね。どうしていいかわからなくてさ。 ちょっと言ってて恥ずかしくなってきたので、俺はセナから書類を奪う。ちょっと、と言われたがいいんですー。俺のやりたいことをやるんですから。いいんですー。奇襲も奇襲。それが俺の今回の戦い方の予定だ。そこには書いてないけど。 「なぁ、セナ。俺、レオの思考が全く読めないんだけど。これからどうなると思う。」 「俺に聞かないでくれる?」 「だよね。」 「でもまぁ、文哉に関しては一個だけ逃げれる逃げ道はあるかな。」 「…なにそれ?」 「教えるわけないでしょ?」 けちーと頬を膨らませて、俺は再度企画書を広げる。衣装のコンセプトはなにもまだないんだけど、とりあえず全員のスリーサイズの写しを持って一度むっちゃんの伝手で衣装を探そう。一旦事務所行くか。と腰を上げた瞬間、ナルくんがやってきて打ち合わせを始めたら、立て続けにすーちゃんもりっちゃんもやってきたので、個別面談が始まるのであった。が、それぞれ情報を渡さず俺から情報を引っこ抜いてくのがうまいので、俺は余計にいろいろ考える羽目になった。おい、まて。君らが生き残ってくれるなら俺は本望だけれどね。 とりあえず、全員の面談を終わらせて、俺は俺の秘策を練る。まぁ俺の秘策というのは、あれだ。ルールギリギリアウトのものだ。俺の理論でごり押しして納得させるので、ここは俺の手腕。 過去講演したもののアカペラ。これでほぼレオの最初の条件がクリアできる。全員別パートをやるのだ。全員ソロパートだ。文句あっか?とは思うが、これでごちゃごちゃ言われると困るので、俺パート…は前に俺がソロを持った曲をやろう。あれのアレンジだ。おっけー問題ない。最後に一つ新曲。これは、外部に委託したものだ。さてどうやってやりかえしてやろうか。と思ったけれど、とりあえずもう一人の飼い主に報告かな。 「ねぇ、セナ。面白い事したくない?」 「おもしろいこと?内容によるけど。」 「じゃあ、しばらくのご静聴してください〜」 多分、これが。俺から仕掛ける。最初で最後の大きな悪戯だよね。って全部話した後、セナは面白そうに笑った。なぁ、セナ。これでよかったのかな。俺たち。最後は下手したら喧嘩別れになっちゃうけれど、そうならないようにはするよ。と言ったが、さっきも言った通り逃げ道はあるから心配はするなと怒られた。とりあえず、そっちで舵切っちゃえって言われたので、俺は遠慮なくこっち方面に舵きりすることにした。 ←/back/→ ×
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