感謝を込めて

「明日休みだから、天気もいいし 、公園でデートでもしないか?」

「はい!」

「良かった。弁当を久しぶりに食べたいから作って欲しい」

「分かりました 大吾さんの好物沢山作りますね」

「ありがとう。時間だから切るよ」

「仕事頑張って下さい」




二人の出会いは、名無しを助けた事から始まる。
名無しは、若い男達にナンパされて困っていた。

「ねーちゃん!俺らと遊ばない?」

「ご、ご免なさい」

「暇なんだよ〜」

断ってもナンパを止めない若い男達。 
しかも名無しを囲んで逃げないようにしていた。名無しは、無理に突破しようと男の一人を押して倒して逃げたが、勿論男達は追ってくる!
狭い路地に逃げたのが失敗で、男達に捕まってしまった。

「このアマ!!やっと捕まえた!!」

「イヤ!やめて下さい!!」

人目も無い路地に誰も助けには来ない。
名無しは、駄目だと思って目をつぶった。
その時だった。

「一人の女に数人とは、最低だな」

「あん?誰だ!!」

姿を見せたのは、黒いスーツに背が高くオールバックの男。それが東城会6代目堂島大吾との出会いだった。
大吾は強く、男達は相手にならない! 
ボロボロになり男達は、去っていった。

「大丈夫ですか?」

「あ……。あ、有り難うございます。痛た……」

必死に逃げた足はヒールだったので、逃げた最中に、転んで膝から血が出ていた。
大吾はハンカチを膝に巻いて軽々お姫様抱っこしたから、名無しは慌てたが、「じっとして下さい」の言葉に、じっとして、人目を避けて近くの知り合いの店に向かった。


店で消毒と絆創膏を借りて貼り、店のマスターにお礼をして、先に飲んでる大吾隣の席に座る。

「本当ありがとうございます」

「あの位の怪我で、良かったです」 

「あの……名前伺ってもいいですか?」

「堂島大吾と言います。俺も伺っても?」

「名無しです」



この出会いに、二人は仲良くなり、店に何回か会う度に距離を縮める……そして。



「名無し」

「ん?どうしました?」

「好きだ……付き合ってくれないか?」

「!!。……はい」

二人は恋人同士になるのだ。
大吾は、会長で仕事が忙しく会える時間が少いが、電話で声を聞いたり 会える時間は食事でも行って話をする。
休日だって休めばいいのにデートに連れて行ってくれるのだ。
そんな優しい大吾が本当に好きだった。

 


当日の朝。
早く起きた名無しは、弁当を作り始めた。
大吾の好物を沢山作って、弁当箱に詰めて準備をした。 
8時になった頃、着信音が鳴る。

「おはようございます」

「おはよう名無し。いい天気だな」

「はい」

「10時に車で迎えに行くから、準備しておいてくれ」

「分かりました」

「また後でな」

朝ご飯を食べて、お気に入りのワンピースを着る。
鏡で何度も何度も髪を直してメークもして、
ヒールを履いて外に出て、大吾を待つと。
名無しの目の前に車が停まると、私服を着た大吾が出てきた。

「名無し待ったか?」

「おはようございます!大丈夫です」

「そうか。じゃあ行こう」

助手席を開けて名無しを車に乗せ出発する。
途中パーキングに寄って休憩しながら目的地に向かう。
着いた先は、緑が沢山ある公園。
天気がいいので、レジャーシートを敷いて楽しむ人が多く、露店もあり公園は賑わっていた。
二人は、静かな所に名無しが、持ってきたレジャーシートを敷いて寛ぐ。

「風がいいですね」

「あぁ」

大吾を見ると、疲れているのか目を瞑っている。


「……膝枕しましょうか?」

「ん?いいか?」

「どうぞ」

名無しの膝枕に大吾は目を閉じ、名無しも、目を閉じた。




「寝てたか。名無し?大丈夫だったか?」

「大丈夫です ゆっくり出来ました?」

「ありがとうな」

「いつでも膝枕しますね」

「頼むよ」

「はい!所で昼にしませんか?」

「そうだな作ってくれたんだろう?」

「沢山作りました。これです」

「美味しそうだな。食べよう」

美味しく食べる大吾の姿に、笑顔になる名無しは、作った甲斐があったと心で喜んだ 。
食べ終わると、二人で公園を散歩した。
ボート乗り場があったり、小さな動物園があったりで広く、夕方まで楽しめた。


空が暗くなり、街灯が光り始まり二人は、大きな大木の下にいた。

「今日は楽しかった〜。ありがとう大吾さん」

「来た甲斐があったな」

「大吾さん……毎回ありがとう」

「えっ?」

大木の下で大吾にキスをする。
今までのお礼と感謝を込めて。




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