味覚音痴

「……」

見た目は綺麗な料理、それはいつも思う。料理が、出来ない俺の為に作ってくれているのだ、本当は文句なんて言ってはいけないと心の自分にも言い聞かせているけど。
味が。
名無しは、味覚音痴なのだ。
本人に絶対言えないが。

「……大吾さん?どうしましたか?」

「あっ。いや、今日も美味しいな」

「……嬉しいです」

名無しは、また食べ始めるが、急に箸をガタリッと置く。

「……大吾さん……」

「ん?どうした?」

「どうして……味が変って言わないんですか?」

「!?」

俺はビックリして、箸を片方ポロッと落とす。

「女友達が教えてくれたんです。味が変だって」

「……悪い。名無し」

「大吾さん。私もごめんなさい……不味かったんですね」

ポロポロと涙を流す名無しを抱きしめた。
これしか出来ない俺は情けないと思う。
中々味覚音痴の人に味が変だよ!と、
言ってしまったら、傷つけてしまうと分かっているから言えないが、本人の為にハッキリ伝えても良いのだと学んだ。

「名無し」

「私、大吾さんの為に、料理教室でも通って味覚鍛えますね」

「楽しみにしてる」

「はい!楽しみにしててください」

涙を拭いて笑顔になる名無しに、俺も笑顔になった。




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