土曜日の夜。
珍しく真島から飲みのお誘いがあり、ミレニアムタワーで待ち合わせをした。
少し早く着いた大吾は、煙草を吸いながら真島を待つ。
「悪いの大吾」
「平気です」
「さよか!ほな行くか」
「えぇ」
真島と大吾は、チャンピオン街方面に向かった。
途中泰平通り東を通りかかると、男達に囲まれてる女の人がいた。
「遊ぼうよ〜」
「こ、困ります!」
「仕事なんてサボろうよ〜」
女の人の肩に手を乗せようとした時、真島がその手を止めた。
「あん?おっさん誰?」
「その子に触るなボケ……」
「あん!!」
捕まれてる手を放し、真島の胸ぐらを掴むが、真島は動じず、逆に手首を捻られた。
それを見た仲間は、真島を一斉に襲ったが、レベルが違い、あっという間に倒されてしまった。
「うぅ……す、すいませんでした」
男達は逃げた。
「ボケが……大丈夫か?名無しちゃん」
「真島さん!あ、ありがとうございます」
「真島さんの知り合いですか?」
「そや。名無しちゃんが働いてる店に通っててな、歌声が綺麗なんや〜」
「あ、ありがとうございます」
「今行こうとしたんや。一緒に行こうや」
3人は、店に向かった。
「真島さん!いらっしゃいませ!名無しさん!遅かったね?悪いけど準備早くお願い」
「すみませんオーナー!はい」
名無しは、軽くペコリと頭を下げて、奥に行ってしまった。
「お席どうぞ!何を飲みますか?」
「ビールでええか?大吾」
「はい。いいです」
「かしこ参りました」
直ぐにビールを持ってきて、二人は乾杯した。
つまみを食べながら話をしていると。
「皆様お待たせしました!名無しさんが準備が出来ましたので、お聴きください〜」
「お!待ってたで!」
ピアノがあるステージに現れた名無しは正装していて、ペコとおじきすると、他にいた客が拍手した。
名無しは、ニコッと笑いピアノのイスに座り、軽く息を吸い込んで吐いた。
鍵盤に手を置くと、曲のイントロを弾き、名無しの歌声が店に響く。
何曲か歌い上げ、名無しのショーは終わった。
「いや〜。今日も良かったわ〜名無しちゃん!大吾も良かったやろ?」
「えぇ!名無しさんの歌声が綺麗でした」
「あ、ありがとうございます。えーと……」
「堂島大吾と言います」
「は、始めまして宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「紹介もそれ位にして、大吾も名無しも飲もうや!」
お酒を頼んで、改めて乾杯をした。
真島は、名無しと会話をしているが、大吾は何を話したらいいのか分からず、黙ってお酒を飲んでいた。
「大吾!」
「はい?真島さん何でしょう?」
「トイレに行ってくるから、名無しちゃんの相手頼むわ」
「はい」
真島はトイレに行った。
「名無しさんは、歌が好きなんですか?」
「えっ。え、えぇ」
「本当に素敵でした」
「あ、ありがとうございます」
初対面だからか、会話が続かず、お互い考えが同じだった。“真島さん早く帰ってきて”と。
トイレから戻ってきた真島は、また名無しと会話が始まった。
「あー!楽しかったわ」
「またお越しください」
「また来てください」
「そうするわ!行くぞ大吾」
「はい」
二人は店を出て、ミレニアムタワーまで戻り解散した。
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