裏と表


「あ、あなたの事が好きです、付き合って下さいっ」
「…」

自分の大学の中庭に呼び出されたごんべいは、目の前の青年から愛の告白を受けていた。
その青年の髪は肩まで伸び、顔も良く見えない状態。
ごんべい自身彼の事は全く知らず、彼に対して何も良い印象はない。

「…なんで私の事知ってるの?私はあなたの事知らないけど」
「ずっと憧れでした。だから、もし良かったお付き合い出来ないかと」
「…」

顔を上げた青年だが、それでも髪に隠れどんな表情かを見る事は出来ない。

「…じゃあ、私の言う事聞いてくれれば付き合ってもいいわよ」
「え、ほんとですか?!」

青年の明るい言葉に、ごんべいはニヤリと笑う。

「で、あんたの名前は?」
「ヒロです、ヒーローヒロ、宜しくごんべいさん!」

名前を呼ぶ許可を与えてはいないが、まあいいと、ごんべいは再び意地悪く微笑んでいた。




「ちょっとヒロ!私Cランチが良いって言ったじゃん」
「ご、ごめんなさい。でも売り切れてて…」
「じゃあAランチにして、買い直してきて」
「は、はい!」

大学の食堂で、ごんべいは彼氏であるヒロにそう言うと、椅子に座り直し足を組む。

「全く気が利かないんだから」
「ごんべいも人が悪いんだから」
「でもまあ、あれじゃあ使われても仕方ないわよね」

友人達がごんべいの様子を見て、クスリと笑いながら言う。

「でしょ、付き合ってあげてるだけでも有り難いんだから、一杯私の為に働いて貰わなきゃ」
「でも、彼氏なんだからさせてあげないとだよ、ごんべい」
「無理、キスだって嫌なのに。させるわけないでしょ」
「うわっ、鬼だーはは」

三人で笑いあっていると、ヒロがAランチを持ってやってくる。

「ごんべいさんお待たせしました…」
「じゃああんたも食べていいわよ」
「はい、いただきます」

長い髪が邪魔ではないのかと、ごんべいを含め友人達は思ったが、それを口にはしなかった。

「私も尽くしてくれる彼氏が欲しいなぁ」
「ほんと、ごんべいが羨ましいっ」
「ふふ、まだまだヒロには尽くして貰わなきゃね」

ごんべい達がそんな事を話していても、ヒロは何も言わずご飯を食べているのであった。
ごんべいはヒロの告白を受け入れたが、彼氏彼女ではなく、まるで奴隷の様な扱いをしていた。
自慢ではないが、ごんべいの豊満な胸を目当てに寄ってくる男が多い。
うんざりするほど身体目当ての男が多かった為、ごんべいは敢えてヒロに冷たくしていた。

(これで私の事を嫌いになったら、本当は私の事好きじゃないんだわ。この身体目当てで来たって事だもの)

今度の男はいつまで持つかしらと、ごんべいはそんな事を思いながら昼食を口にする。

「ヒロ、明日買い物に出かけるから」
「僕もついて行って良いんですか?」
「荷物持ちにね」
「嬉しいです、ごんべいさんと一緒に居られるならなんでもしますよ」

顔が隠れ口元しか見えなかったが、それは確実に笑みを浮かべていた。

(…彼は今までの奴とは違う気がする。でも、油断は出来ないわ…)





翌日、ごんべいは待ち合わせの場所でヒロが来るのを待っていた。

「…遅い!何してるのよ」

携帯とにらめっこをしながら、ごんべいは呟く。
約束の時間は過ぎているのに、ヒロの姿はまだ見えない。

「全く…いいわ、来たら遅刻の罰として一杯荷物持たせてやるんだから」

ヒロにもう一度メールを送ろうと、ごんべいは文字を打ち始める。

「ヒュー、すっげぇ良い女」
「?」

ごんべいが顔を携帯から上げると、目の前には茶髪のチャラそうな男が二人、ニヤニヤとしながら立っていた。

「お姉ちゃん一人?良かったら俺らと遊ばない?」
「結構です、人を待っているんで」

ごんべいはピシャリと、ナンパを断る。

「あんたみたいな良い女待たせるなんてロクなんじゃねぇよ。な、俺らと遊ぼうぜ、良い所知ってるからさ」

そう言った男の目線は、明らかにごんべいの谷間を覗き込んでいる。
ごんべいの服装は、キャミソールにミニスカという露出の高いものであった。
ヒロが来たら少しからかってやろうと思い、わざと着てきていたが、失敗であったと今更ごんべいは後悔する。

「結構って言ってるでしょ。しつこい男は嫌われるわよ」
「じゃあ、無理やりにでも連れてってやるよ」
「きゃあっ!」

男二人はごんべいの横に入り込み、腕をガシッと掴んでいた。

「何するのよ離して!」
「あんたみてぇな良い女、逃すわけねぇだろ」
「一杯可愛がってやるからよ」

そう言った男の顔は、怪しくニヤリと笑っていた。
男二人に囲まれては、どうする事も出来ない。
ごんべいはどうしたら良いかと、周りを見渡す。

「ごんべいさん、遅れてごめん!」

明るい声が上がり、ごんべいを含め男二人も声の上がった方を振り向く。
そこには、見知らぬ美青年が爽やかな笑顔を浮かべ立っていた。

「んだよてめぇ、この姉ちゃんは俺らのもんだ、すっこんでろ」
「え、違いますよ。ごんべいさんは僕の彼女ですから」
「!嘘、ヒロ…?」

長かった髪は短く爽やかな短髪へと変わり、今まで見る事の出来なかったヒロの顔が漸く、見る事が出来ていた。
その顔立ちは、端正な整った顔をした美青年であった。

「はあ、ふざけんなよてめぇ」

男の一人がごんべいを離し、ヒロに殴りかかろうとする。

「…暴力は悪いよ?」
「!いててっ!」
「て、てめ…ぐわっ!」

一瞬の出来事であったが、ヒロはあっという間に男二人をねじ伏せてしまっていた。
いつものヒロでは考えられない、素早く軽い身のこなしであった。

「ごんべいさんは僕の彼女だから。手を出さないでね」
「わ、悪かった…」
「い、行こうぜ…」

男二人は、ヒロの笑みにただらぬ雰囲気を察し、サッと駆け出して行ってしまった。

「…」

ごんべいは驚きのあまりに、口をぽかんと開けてしまっていた。

「ごんべいさん、遅れてごめんね」

ヒロに話しかけられ、ごんべいはやっと覚醒し、マジマジとヒロを見やる。

「あ、あの…本当にヒロ…?」

目の前に佇む美青年が本当に昨日までの人物と同じ人物なのか、ごんべいは確認するように問う。

「僕はヒロですよ。遅れて本当にすみません。髪の毛切るのに時間かかっちゃって」

同じ人物とは思えないほど、ヒロは爽やかな美青年へと変貌を遂げていた。
街ゆく女性がヒロを見やり、頬を赤く染めている。

「買い物行くんですよね、さ、行きましょう。僕荷物沢山持てますから」
「えっ…あ、うん、そうね。行きましょ…」

ごんべいは未だ信じられず、言葉を詰まらせる。
が、優しい彼の性格は変わっておらず、買い物で増える荷物を、ヒロは笑顔で持ってくれていた。

「ごんべいさんとこうして歩けるだけで、僕は幸せです」
「そ、そう…」

やはり、性格はヒロそのものであった。
ごんべいは何故か恥ずかしさが増してしまい、ヒロの顔もろくに見れずにいた。

(ヒロがあんなにかっこよかったなんて…。どうしよう、恥ずかしい…)

今更ながら、ごんべいはヒロに恋していたのであった。

「あっ、これ可愛い」

その恥ずかしさを紛らわす様に、ごんべいは店に飾られていたキャミソールのワンピースを、その手に取る。

「ごんべいさんなら絶対似合いますよ」

ヒロも隣から覗き込み、笑顔を浮かべる。
それだけなのに、ごんべいの胸がドクンと高鳴る。

「っ…こ、これ試着してくるね、待ってて」

ごんべいはヒロにそう言うと、店員に声をかけてから、試着室の中へと逃げる様に飛び込む。

「…はあ…私、ドキドキが止まらない…」

持ってきたワンピースをハンガーにかけ、ごんべいははっと息を吐く。
ナンパ男達をあっという間にねじ伏せた強さ、そしてあの端正な顔立ち、変わらない優しい性格。
何もかも、ごんべいはヒロの虜になっていた。

「…ヒロに伝えよう。ごめんねって、改めて私と付き合ってって。そう言おう」

一人になると、ごんべいは漸く自分の気持ちを整理し、落ち着く事が出来ていた。
試着はせず、ごんべいはそのま試着室を後にしようとドアを開ける。

「…」
「!ヒロ、もう試着済んだから、次の所行こう」

ごんべいは試着室の外に立っていたヒロにそう言い、試着室から出ようと靴に足を入れようとした。

「…」
「?ヒロ…?」

それを阻止するかの様に、ヒロが試着室の中へと入り、ドアに鍵をかけていた。

「ど、どうしたのヒロ?」
「…ごんべいってさ、僕の事どう思ってるわけ?」
「え…」

見上げた先に、先程の優しいヒロの姿はなく、目を妖しく光らせる美青年が、そこにいた。

「…そんな格好で出歩いてさ、だから他の男に声掛けられるんだよ。それに今持ってきたワンピースも、それを着てまた他の男達に見せびらかすわけ?」
「えっ…ち、違うわ。このワンピースはただ持ってきちゃっただけだし…今日の服はヒロに見て貰いたくて…」

先程までの強気なごんべいはそこにはいなく、先程までの優しいヒロはそこにはいなくなっていた。

「…へえ、僕に見て貰いたかったんだ」

ごんべいの顔の横に両手を置き、試着室の壁と自分の間に、ヒロは彼女を閉じ込める。

「じゃあ僕の事、好きなの?あんなにこき使っておいて」
「ご、ごめん…私、身体目当ての男ばかり寄ってくるから、ヒロもそうなのかなって…。でも、ヒロは違うって分かったから、だから…」
「違くないよ、僕も君に触れたくてこうしてるんだから」

ヒロはそう言うと、ごんべいのキャミソールの肩紐を指で摘む。

「君の事が好きだから告白した。君が好きだから君の言う事聞いた。君が好きだから、もう我慢効かなくなった」
「ヒロ…っ」

肩紐がゆっくりと、腕の方へと下げられていく。
が、ヒロにじっと見つめられると、何も抵抗など出来なくなっていた。

「他の男に身体を見せたお仕置き…してあげるから」
「ヒロ…んっ!」

ヒロはごんべいの顎を掴み、その唇を奪っていた。
ごんべいの口内へと舌を入り込ませ、歯列をなぞっていく。

「んっ…んぅ…」
「ん、ちゅ。…ずっと、こうしたかった…ちゅっ」

ヒロはそう囁きながら、ごんべいの舌と自分の舌を絡ませ、レロレロと彼女を味わっていく。
キャミソールの肩紐を摘んでいる指が動き、ぐいっと力を込めると片方の乳房がぷるんっと揺れ、その大きさを露わにさせていた。

「!や、いや…あ、ん…ん…っ」

乳房が露わになってしまった事に、ごんべいは唇を離していたが、再びヒロに寄って塞がれてしまう。

「ちゅ、ん…逃げるなよ…君は僕のものだ…」
「んっ、ふあ…あっ…!」

キスの合間に、ごんべいは思わず声を上げてしまっていた。
露わになった乳房をぐにゅりと掴まれ、そのまま円を描く様に揉まれていたからだ。

「ん、ふ…ぁ…っ!」

ぐにゅぐにゅと乳房を揉まれ、その形は大きく波打ち、ごんべいに快楽を与え始めていた。

「ちゅ。…ごんべいのおっぱい、柔らかい」

ごんべいの唇を堪能したヒロは、やっと唇を離し、彼女を覗き込む様にしながら乳房をこねる様に揉んでいく。

「あっ…あぁ…っ。ヒロ…や、止めて…こんな所じゃ…」

狭い個室の中は、服を試着する更衣室。
いつ誰が来るか分からない。
何個か試着室はある為、わざわざ来る人はいないと思うが、それでも声を出せば聞かれてしまう。

「言ったでしょ、僕はもう我慢効かないって。…君が悪いんだよ、こんなおっぱいを強調する様な格好をしてくるから…」
「!あんっ!」

思わず、ごんべいはヒロの肩をぎゅっと掴んでいた。
ヒロが乳房を揉みながら、指先で乳輪の真ん中にある突起を撫でていたからだ。

「…良い声。乳首、弱いんだ…ならもっと可愛く鳴いてね、お仕置きしてあげるから」
「そ、そんな…や、やだ…ああっ!」

ごんべいの言葉は聞かず、ヒロは撫で上げた事で硬く尖ってしまった乳首の根元を摘み、コリコリと捻っていく。

「あんっ、あ…っ、あっ…やあ…っ」

誰かに聞かれたらと、ごんべいは気が気でない。
だが、乳首を捻られ摘まれると、どうしても我慢が出来ず声が漏れてしまう。
ヒロは唇から首筋、鎖骨、谷間へと舌を這わせていく。
そうしながらまだキャミソールの下で眠るもう片方の乳房を露わにさせようと、紐を摘み同じ様に下げる。

「いやあ…っ」
「こっちのおっぱいも出てきちゃった。クク…ほんと可愛い…」

露わになった乳房をひとしきり揉み上げると、ヒロはそのまま顔を埋め、硬くそびえ立つ突起へと、その唇を這わせていく。

「!ああんっ!」

ヒロの熱い口内へと乳首が入ってしまった時、ごんべいは思わず声を大きく出してしまっていた。
直ぐに自分の手で口を押さえるが、それをさせない様にと、ヒロはちゅうちゅうと音を立て、乳首を吸い始める。

「ああんっ!あんっ、いやぁ…」

首を横に振って快楽に負けない様にとするが、やはり無理な相談であった。

「ちゅう…凄い乳首硬い…。ごんべい…お仕置きなんだから声出せよ…」

ヒロの口調は、時たま強いものへと変わる。
ごんべいはそれが怖いとは思わず、寧ろ興奮さえしていた。

(こんな場所だから…?ヒロが、かっこよくなったから…?)

そんな事をごんべいが思っていると、ヒロはもう片方の乳首にも再び指を這わせ、乳頭の部分を押さえるとコロコロと上下左右に転がしていく。

「ああん!あんっ、あっあんっ」
「そう、その声…僕が聞きたかったのはそれだ…クク、もっと上げろよごんべい…」

ヒロはちゅぱちゅぱっと、乳首を甘噛みしながら時たま吸い上げ、転がした乳首を今度は摘み、擦りあげながら上へと引っ張る。

「あぁんっ、あんっ、あっあぁ、ん」

ヒロへのギャップの激しさが、ごんべいの身体を興奮させていた。
優しかったヒロが、お仕置きと言いながらも、強引にごんべいの身体を求めている。
それだけで、ごんべいの理性はもう既に無くなっていた。
ヒロの片手がすらりと太ももを撫で、スカートの中の下着へと触れると、そこは既に濡れてしまっていた。

「こんなに濡らして…気持ち良かった?」

ヒロは顔を上げ、ごんべいの顔を見つめながら言う。
ギラリとその瞳は妖しく光り、男性としての欲望を秘めている。

「ん…気持ち、良い…」
「クク、お利口さん…」
「ふっ…ん…あぁ…っ」

再びヒロにキスをされながら、指はそのまま下着の間から入り込み、蜜で濡れたそこをなぞっていた。

「お客様、此方でお願い致します」
「はーい」

試着室の並ぶ部屋に、人が入ってきていた。
ごんべいは声を漏らさないようにと、ヒロの舌を自ら味わおうと、絡ませていく。
ヒロもごんべいの思いが分かっていたが、敢えて指を動かし、硬く尖っているもう一つの突起を探し当て、指を動かし突起へ振動を送る。

「ああっ…!!んっ…ふっ…」
「クク…ん、ちゅ…」

ごんべいは瞼を開け、目の前にいるヒロを見やる。
その表情は意地悪く微笑んでいたが、どことなく優しさが篭っていると、ごんべいは感じた。
そして、突起を弄る指の動きが変わり、指全体に突起を押し当てると、そのまま擦り撫でていく。

「とてもよくお似合いですわ」
「じゃあ、これ買わせて頂くわ」
「ありがとうございます」

そんなやり取りが聞こえ、ごんべいは声を出すのを必死に我慢していた。

「クク…声、出せよ?もういなくなったから…ん、ふ…」

ヒロは唇を離し、人の気配がなくなった事を確認し、ごんべいに意地悪く囁く。
そして、硬く膨らんだクリトリスを優しく転がし、再び乳首を口に含み、ちゅうちゅうと吸い上げる。

「あっ、ああん!あぁあん!だ、だめぇ!あぁああん!!」

我慢していたものが弾け飛ぶかの様に、ごんべいは身体を震わせそのままイってしまった。

「…」

ヒロはごんべいがイった事が分かると、彼女のキャミソールやスカートを元の位置へと戻していく。

「はあ…はあ…」

イった事の余韻に浸りながら、ごんべいはヒロを見つめる。

「…ここで抱こうと思ったけど、止める。あんたの可愛い声、他の奴らに聞かせたくないから」

そう言ったヒロの頬は、赤く染まっていた。

「ヒロ…っ」

ごんべいはヒロに抱きつき、ぎゅっとその逞しい身体に腕を回す。

「…ホテル、行こ?買い物はもう、良いから…」
「可愛い事、言うんだな…」

一瞬驚きの表情を浮かべていたが、ヒロはそのままごんべいを抱き締める。

「大好きだ、ごんべい…」
「私も、ヒロが大好きだよ…」

二人はそのまま試着室を後にし、真っ直ぐ二人きりになれる場所へと入っていった。
裏表の顔を持つヒロに、ごんべいはすっかり虜となっていたのであったー。


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