王様ゲーム
「なあなあー王様ゲームやろうぜ」
とある高校の休み時間の教室で、クラスメイトの男子一人がそう言った。
「いいねー俺やる!」
「俺も!」
「私も〜!」
「やるやるー」
賛同するように、次々と教室にいた生徒達がその男子の周りに集まる。
「ナナシさんもやろ?」
「あっ、私はいいや…」
クラスメイトの言葉に、ナナシごんべいは笑顔で断る。
大人しく控えめなごんべいは、そういうノリノリの明るいゲームなどに加わりたくない、というのが本音であった。
ほおっておいてほしいと、ごんべいは本を読み始める。
「よし、じゃあ一つずつ引いていけよ」
言い出した男子がくじを作り、参加した生徒達はそれを引いていく。
「何番?」
「あたし十番ー」
「俺六番だー」
教室中が盛り上がる中、静かに本を読むごんべいの元に、一人の男子がくじを持って現れる。
「ナナシ、お前も引けよ」
「え…」
目の前にくじを出した男子は、クラス一、学校一の不良ヒーローヒロであった。
話した事などないごんべいは、彼が目の前に来た事だけでビクっとなってしまう。
「で、でも私参加してないから…」
「ここにいる奴は全員参加なんだよ、良いから引け」
茶色のサラサラの長い髪を揺らし、ヒロは問答無用とばかりにごんべいの腕を掴み、そのままくじを引かせる。
「えっ…!」
「…十一番か、ほれ、ちゃんと持っとけよ」
ヒロはニヤリと笑うと、ごんべいにくじの紙を渡し、みんなの輪の中へと戻っていく。
「な、なんなの…」
今まで話した事もない男子に話しかけられ、更に腕まで掴まれるなんてと、ごんべいの頭は少し混乱していた。
「王様はヒロだー!」
「きゃーヒロ君!」
「ヒロ君なら命令されてもいいー」
王様がヒロに決まり、女子生徒からは黄色い声が上がる。
素行は不良だが、端正な顔立ちを持つヒロはクラス、学校中の女子から熱い視線をいつも集めていた。
「ヒロ、命令どうするんだ?」
「ああ、もう決めてある」
ヒロはニヤリと笑うと、ごんべいの方に視線をやり、命令を放った。
「十一番が俺の昼飯を買ってくる」
「へ…」
十一番とは、ごんべいの引いた番号であった。
「十一番って誰だ?」
「いやー私じゃない」
「私も〜」
女子生徒が悲痛の声を上げる中、ごんべいはくじの紙を見つめる。
「おいナナシ、お前だろ十一番」
再びヒロがごんべいの前に現れ、先程と同じくニヤリと笑みを浮かべていた。
「わ、私だけど…」
「王様の命令、聞けるよな」
あなたが無理やりさせたんでしょうと言いたかったが、相手は学校一の不良、何をされるか分からない。
ごんべいは仕方なく頷き、椅子から立ち上がる。
「ほら金。メロンパンだけでいい」
「え…」
そう言い、ヒロはごんべいに小銭を手渡す。
まさかお金を渡されるとは思わなかったので、ごんべいはポカンとしてしまった。
それを握り、ごんべいはパンの購買へと向かい、メロンパンと自分の食べるクリームパンを買い、教室へと戻る。
「はい…メロンパンとお釣り」
ヒロにメロンパンとお釣りを渡すと、彼はそのままごんべいの腕を掴む。
「なあ、王様の命令って何回でもして良いんだよな?」
「え、ああ。王様が気がすむまでは…」
ゲームを言い出した男子にヒロは聞き、その答えを聞くとごんべいの方へと振り向く。
「王様の命令その二、ナナシ、俺と昼飯一緒に食え」
「え…で、でも私一人で食べたいから…」
パンを買ってきて終わりだと思ったのに、ごんべいはヒロの発言に驚く事しか出来ない。
「王様の命令だ。俺が気が済むまで聞いてもらうからな。行くぞ」
「そ、そんな…」
断わる事も出来ず、ごんべいはヒロに腕を引かれ教室を後にするのであった。
「ここ、屋上…?」
立ち入り禁止の筈だがヒロはそんな事は気にもせず、ごんべいの腕を掴んだまま屋上へと入っていく。
「俺の穴場だ。ここなら誰もいねぇし、ゆっくり出来るからな」
そう言いヒロは腰掛けると、ごんべいにも座れと腕を引っ張る。
仕方なくごんべいは少し離れてヒロの隣に座ると、彼はメロンパンを取り出し食べ始める。
「ナナシも食べろよ」
「…食べるけど、あの…どうして私なの?」
クリームパンを掌に乗せながら、ごんべいは疑問に思っていた事を聞く。
「私達、話した事も無かったのに…」
「お前と仲良くなりたかったからな、それだけだ」
「え…」
ヒロの言葉に、ごんべいは驚きの表情を浮かべる。
「お前、明らかにこの俺を避けてんだろ。だから無理やりにでも仲良くしてやろうと思ってな」
メロンパンを食べながら、ヒロはニヤリとごんべいを見やる。
端正な顔立ちが意地悪く微笑み、ごんべいは思わずドキッとしてしまう。
「べ、別に、避けてなんかいないよ」
「避けてんだろ、さっきの王様ゲームだって参加しなかっただろーが。お前は今日一日、この俺の言う事を聞けばいいんだよ」
ヒロはそう言い、再びごんべいの腕を掴む。
「今日一日、この俺がお前の王様だ。命令は絶対聞けよ…」
「っ…」
間を空けて座ったのに、ヒロは間を詰めてごんべいに近づく。
ごんべいは恥ずかしくなってしまい、それを悟られない様にクリームパンを口に含む。
ごんべいが食べる姿を、既にメロンパンを食べ終わったヒロはじっと見つめていた。
「あ、あの…見ないでくれる…」
じっと見られては落ち着いて食べる事も出来ない。
ごんべいはヒロを見ずに、真っ直ぐ前を見たまま言った。
「何しようが俺の勝手だろ。俺が今日一日お前の王様だ」
「でも、王様の命令って一回済んだら次の人になるんじゃ…」
「俺の王様ゲームは関係ねぇ」
何処まで俺様なんだろうとごんべいは思ったが、ヒロはニヤリと笑いごんべいの肩に手を回す。
「ちょ…やだ…」
ぐいっと引き寄せられ、ごんべいはヒロの胸に顔を打ち付けてしまう。
「王様の命令その三。…ナナシ、俺とキスしろ」
「…へ…んっ!」
キスという言葉に驚き、ごんべいは思わず顔を上げる。
すると、直ぐに唇をヒロに奪われてしまっていた。
「んっ…や…っ」
「ん…」
ごんべいが嫌々と首を振ろうとしても、ヒロの片手が肩に置かれ引き寄せられ、片手は顎を掴まれ逃げる事が出来ない。
メロンパンの甘い味が口の中に広がり、ごんべいのクリームパンの味も楽しもうと、ヒロは舌を入れ、口内を荒らしていく。
「ん…ふぁ…っ…」
ギュッと目を瞑り避けようとしても、ヒロの舌はごんべいの口内でくちゅくちゅと音を立て掻き乱していく。
「ちゅっ。…良い味だったぜ、ナナシ」
やっとの事でごんべいを解放すると、ヒロはニヤリと微笑む。
ごんべいの胸の鼓動が熱く早く、顔は真っ赤に火照っていた。
「どうして…命令でもキスまでしなきゃ、なの…?」
押しの弱いごんべいでも、流石にキスまではおかしいと、頭の中で思っていた。
それにファーストキスを奪われたと、後になって理解した。
「王様の命令は絶対だろ。それにさっき言っただろ、お前と仲良くなりてぇって」
戸惑うごんべいと違い、ヒロははっきりとそう言った。
「さっきも言ったけど、お前この俺をずっと避けてただろ。まあ、俺の事怖いとか思ってたんだろうが。…だからだな、お前をいつも目で追ってて、いつかぜってぇ俺のものにしてやるって」
「え…っ」
ヒロの言葉に、ごんべいは目を丸くする。
ごんべいがヒロを見やると、先程とは違う優しい表情を、彼は浮かべていた。
「…ナナシ、お前の事が好きだ。この俺と付き合えよ…」
言葉は俺様であったが、ヒロははっきりと、ごんべいを見つめて言った。
「っ…」
告白などされた事がないごんべいは、どう答えたら良いか分からない。
ヒロの目線を逸らす事も出来ず、顔を真っ赤にしたまま黙っていた。
ヒロはごんべいの肩を抱いたまま、何も答えられないごんべいに口を開く。
「…王様の命令その四、ナナシの胸…触らせろ」
「!あ…っ…!」
再び、ヒロが意地悪くニヤリと笑っていた。
顎を掴んでいた彼の手がするりと下へ降り、制服を大きく膨らませている山に触れ、ぐにゅりと掴んでいた。
「や…っ、ヒーロー君やだ…っ」
「ヒロって呼べよ…。お前が俺の事好きになれねぇなら、ぜってぇこの俺に惚れさせてやる…」
耳元でそう囁きながら、ヒロは制服の上から円を描くように乳房を揉み始めている。
「あ…っ…そ、んな…ぁ…」
乳房を揉まれると、甘い痺れのようなものが身体を駆け巡り始め、ごんべいの口からは声が漏れ始めていた。
王様の命令だとしたって、これは流石にやりすぎだ。
頭の中で分かっているのに、ごんべいは抵抗をしようとは思わなかった。
「ナナシ…」
声だせよ、と言うように、ヒロはごんべいの制服のブレザーを脱がし、ブラウスのボタンも器用に第三ボタン辺りまで外してしまっていた。
「可愛いじゃねぇの…」
「やあ…」
白いブラに包まれた乳房を見てヒロが笑みを浮かべて言うと、頬を更に赤く染めるごんべい。
ブラウスからブラ毎溢れさせると、再び乳房を揉み始めていく。
「あ…っ、ぁ…」
男性に胸を揉まれるなんて初めての経験であったが、こんなに甘い感覚が走るのかと、ごんべいは思った。
「お前を見てて思ったけど、胸でかいな…しかも柔らけぇ…」
ヒロの頬は、心無しか赤く染まっている。
彼の掌の中に乳房はおさまりきらなく、その柔らかさを堪能する様に指を食い込ませながらぐにゅりと揉んでいく。
「あ、ぁ、ん…ヒーロー、君…っ」
「王様の命令だ、嫌がるなよ…」
どんどん強くなる甘い痺れに逆らう様に、ごんべいは首を横に振るが、ヒロは止めようとはしない。
それどころか、屋上の壁にごんべいを押し付け、胸の谷間に舌を這わせ始め、もう一つの乳房もブラ毎一緒に揉み始めていた。
「あ、んっ…!ヒーロー君…っ、だ、だめ…」
自分の胸元にいるヒロの両肩を掴んで押そうとするが、まるでビクともしない。
「王様の命令だって言っただろ、ナナシが俺に惚れるまで…止めねぇからな」
「そ、んな…あ、ああっ!」
ごんべいは思わず、大きく声を上げてしまった。
乳房を揉んでいるヒロの指が、中心で尖っている突起に触れていたからだった。
「…良い声じゃねぇか。…乳首、感じるのか…?」
顔を上げ、ヒロはニヤリと笑いながら囁くように言う。
「っ…分からない…声が、出ちゃって…」
自分でも、どうしてあんな声が出てしまったのか。
ごんべいの頬は、ゆでだこの様に真っ赤に染まっていた。
ヒロはもう一度ククッと笑うと、再び深い胸の谷間に舌を這わせる。
そして、両方の人差し指を立てると、薄いブラの下でピンっと尖っている乳首に触れ、スッと左右に撫でていく。
「あんっ!あっ…あん!」
乳首がブラの下で擦れながら動かされると、なんとも言えない強い痺れが伝わり、ごんべいは再び声を大きく上げてしまう。
「ッ…」
ごんべいの声を聞き、ヒロは思わず声をつまらせる。
そして、ブラの裾を掴むと、ぐいっと一気に上へとたくし上げてしまった。
「!やっ…ヒーロー君やあ…っ」
プルンッと大きく揺れながら露わになったごんべいの大きな乳房とピンク色の乳首を、ヒロはじっと見入っていた。
「王様の命令その五だナナシ…。この俺に抱かれろ…ッ」
ごんべいを見つめ、ヒロはそう言い放った。
その瞳は熱を帯び、潤んでいた。
「ヒーロー君…っ…」
ごんべいももう、嫌だという気持ちはなくなっていた。
それ以上に、ヒロに触れて貰いたい、そんな思いの方が強くなっていた。
「ナナシ…ッ…」
ヒロの顔が再び下を向き、目の前で露わになった硬い実へと、その唇を寄せていった。
「っ…」
ごんべいはギュッと、目を瞑る。
キーンコーンカーンコーン
「きゃっ!」
「ッ?!」
昼休みの終わりを告げるチャイムが、熱を帯びた二人の身体に響いていく。
驚いているヒロの動きは止まっており、ごんべいはその隙にブラを元の位置へと戻し、ボタンを留めていく。
「!おいナナシ、何服着てんだよ!」
立ち上がったごんべいの腕を掴み、ヒロは表情を強張らせる。
「授業始まるから、ヒーロー君も行こう?」
「…お前、王様の命令無視する気か?」
ヒロも立ち上がり、ごんべいを逃さない様に距離を詰める。
「無視してない。…ヒーロー君の事、好き…になったから」
「!」
ごんべいの呟きに、ヒロは再び驚きの表情を浮かべる。
「だから…命令の続きは、学校終わってからでもいいかな…」
「…ったり前だ。ナナシ…」
「ん…」
命令とは言わず、ヒロはごんべいにキスをする。
メロンパンの味は薄くなっていたが、優しく甘い味が漂う。
「…逃げんなよ?」
「逃げないよ、王様っ」
ごんべいはそう返事をし、ヒロの手を握る。
ヒロは満足そうに微笑むと、そのままごんべいの手を強く握りなおし、二人は屋上を後にした。
「ヒーロー君が王様になったのって、偶然だよね?」
「いや、仕組んだ、俺が王様になる様にな」
「え…」
「クク、彼奴らに協力して貰った、お前を俺のものにする為にな…」
ヒロの顔は、自信に満ち溢れた王様そのものの顔であった。
ごんべいは見事に、王様の策略にハマり心を奪われたのであったー。
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