漆黒の中へ


「うわ…今日は一段と凄いな…」

朝の通勤ラッシュの電車は、正に人の波だった。
ナナシごんべいは、勤め先の会社まで毎朝通勤ラッシュの電車に乗って、通勤をしていた。
毎日乗っていると流石に慣れてくれが、今朝はまた一段と凄い。
電車が揺れる度に、人の揺れも傾き波のように押し寄せてくる。

「ふう…窓際確保できて良かった」

運良く、降りる側の窓際に立つ事が出来、ごんべいはほっと一息つく。
流れる景色を見ていれば、気休めかもしれやいが、結構早く駅に着くような感じがしていたからだ。
そして、ごんべいが流れ行く景色に身を委ねながら、駅に着くのを待っている時であった。

「…え…」

明らかに、お尻に違和感を感じ声を上げる。
揺られて間違って触っているのではなく、故意にごんべいのスーツのスカートの上からお尻を撫でるように触られていた。
ごんべいは周りを見るが、両隣には女性がおり、背後にどんな人物が立っているか見る事が出来ない。
そうしてる間にも、お尻を触る掌が大胆になり、ごんべいのお尻の形になぞる様に力を込めて撫でている。

「っ…」

ゾワゾワと、段々と鳥肌が立っていくのが分かる。
あまり勝ち気ではないごんべいは、声を出そうか迷っていた。
声を上げれば、誰かが助けてくれるかもしれない。
だが、誰も助けてくれなかったら、と思うと声をなかなか上げられない。
ごんべいが抵抗しないのをいい事に、お尻を撫でている手と、もう一つの手が彼女の身体に伸びていく。

「!」

その手は、ごんべいの前に回り込み、スーツの上から彼女の自慢である、大きな胸をぎゅっと掴み、こねる様に揉み始めてきていた。

「や…っ」

ごんべいは身を捩り初めて抵抗するが、その手は離れる事なく胸を揉み、お尻をさわさわと撫でている。
段々、ごんべいは脚の間がきゅっと疼くのを感じていた。

(彼氏もいないから、こんな風に触られるのかなり久しぶり…でも、相手は痴漢よ?感じたら負けだわ…)

自分にそう言い聞かせても、現れていく快感を止める事は出来そうになかった。
そして、胸を揉んでいた手が、スーツのなかに忍び込み、ブラウスの上から包み込み、ぐにゅぐにゅと少し強めに揉まれ始めた。

「ぁ…」

思わず、ごんべいの口から吐息が漏れていた。
その手は優しく、時に強く強弱をつけ、ブラウスの上からでも分かる彼女の大きな乳房を揉んでいる。

(や…っ、これ以上ダメ…っ)

ごんべいは、声を我慢するのも辛くなってきていた。
そんなごんべいを嘲笑うかの様に、ブラウスに皺が出来る程、強くこねる様に揉まれている。
そして、愛撫されている事により、ごんべいのブラウスの下のブラには、硬く尖り始めた突起が、その存在を強調していた。
乳房を揉みながら、その指先は乳房の中心をなぞる様にクルクルと回り始める。

「や…やぁ…っ」

突起に触れられたらと、ごんべいは首を横に振る。
が、その指先はブラウスの上からでも分かるその突起を見つけ、その部分を素早く左右に撫で始めた。

「ぁんっ」

突起を擦られた快感で、思わず、ごんべいは声を漏らしてしまった。
幸い、隣に立つ女性には気付かれておらず、ごんべいは口に手を当てる。

「…乳首が感じやすいんですね」

それは、若い男性の声であった。
ごんべいの身体を弄る本人であろう。
耳元で囁き、まだ胸の突起のある部分をクルクルと撫で回している。
その手を、ごんべいは目を開けて見てみると、細く、スラッとした綺麗な指をしていた。

「や、めて下さい…」

力無く、ごんべいは背後の青年に呟く。
だが、彼は止めようとは思っていないのか、ごんべいの乳房を再びぐにゅぐにゅと揉み込んでいく。

「ぁ…ん、は…ぁ…ん」

一旦火のついた身体はおさまらず、抵抗したくても自然に声が漏れてしまう。

(どうしよう…気持ち良くて…こんな、見知らぬ人に…っ)

ごんべいの理性と快感が混ざり合い、自問自答を頭の中で繰り広げていると、電車のスピードがゆっくりと落ちていく。
いつの間にか、ごんべいの降りる駅に着いていた。
プシューッとドアが開くと、ごんべいは逃げる様にドアの外へと走る。

「はあ…っ、助かった…」

駅に着いてなければ、あのままごんべいはあの青年にされるがままになっていただろう。
ごんべいは、皺になったブラウスやスーツを直しながら、鞄を持ち会社へと向かう。
だが、歩きながら脚の間がきゅっと締まり、ビクッとなるのを感じ、ごんべいは思わず自分で頬を染める。

(私最低…痴漢されて感じちゃうなんて…。でも、凄い気持ち良かった…)

彼氏もいなく、久しくそういう行為をしていないごんべいにとって、あの愛撫は官能の渦を刺激するのに十分なものであった。
だが、今から仕事をするのにそんな事考えている暇はなかった。
ごんべいは頬を叩き気を引き締めると、スタスタと歩き出すのであった。




「おはよう」
「おはようごんべい」

社内で同僚に行き合い、そのままごんべいは彼女と廊下を歩く。

「きゃーっ、ヒロ先輩よー」
「素敵ねえー」

女性社員が黄色い悲鳴を上げる先には、この社内一番仕事が出来、社内一番優しく、社内一番美形のヒロロウが、重役何人かと話し込んでいる所であった。

「わお、朝からヒロくん見れるなんてラッキー」

同僚の女性も、目をハートにしロウに見惚れている。

「ヒロ君て凄い人気なのね」
「それはそうよ。なんて言ったってあの美形、それに仕事も出来る、誰にでも優しい!もう完璧過ぎて怖いくらい素敵!」

同僚の言う通り、ロウは誰にでも優しく親切な美青年であった。
ごんべいも、ロウとは同期であり何度か話した事はあるが、その物腰の柔らかさに驚きを隠せなかった。

「それに、なんて言ってもあのサラサラの長い髪が、ヒロ君に似合い過ぎて素敵よねー」

ロウの髪は、黒く長いサラサラのストレートヘアであった。
それを仕事の時は一つに結び、帰宅する時は垂らしており、そのギャップがまた良いと、社内の女性達を虜にしていた。

「ごんべい、ずーっと黙ってるけど、ヒロ君に興味無いの?」
「え、うん。あんまりね」
「えー、なんで?美形好きじゃないの?」

信じられないという感じで、同僚は言う。

「嫌いじゃないよ?でも、ヒロ君は完璧過ぎて、何か裏がある様な感じがして」

あの柔らかな笑顔の裏に、何かとんでもないものを秘めている様な気が、ごんべいにはしてならなかった。

「裏があっても、私なら大歓迎だわ!ヒロ君になら無理やり抱かれたっていいもの」
「あ、それ私もー!」
「私も!ヒロ君になら何されてもいいわー」

周りに次々とロウファンが集まり、とんでもない発言を繰り広げる。
ごんべいは話についていけないと思い、先にオフィスに入る。



「…」
「ヒロ君、どうかしたかね?」

騒ぐ女性達の合間を抜け、オフィスへと入っていくごんべいの姿を、ロウはじっと見ていた。

「…いえ、何でもありませんよ」
「そうかい?いや、いつ見ても君は人気者だねー羨ましい限りだ」
「どうも」

重役に言われ、ロウは笑顔を浮かべる。

「今度是非、女性の口説き方でも教えてくれたまえ」

重役はそう言い、笑いながら去っていく。

「…相手が堕ちればそれで口説き方は終わりですよ」

ニヤリと不適な笑みを浮かべると、ロウはそのまま自分の部署へと向かうのであった。




「ふー、やっと昼休みだ…」

仕事がかなり忙しく、昼休みだけは、ほっと一息つける時間であった。

「ごんべいお弁当?じゃあ、ちょっと私外まで買ってくるね」
「うん、待ってるよ」

同僚は財布を持ち、オフィスを出て行く。
ごんべいも、コーヒーか何かを社内の自販機で買おうと思い、財布を持ってオフィスを出る。

「ふう…仕事が忙しいから、今朝の事忘れられてたけど、こうやって休むとやっぱり思い出しちゃうな…」

毎朝通勤ラッシュに乗っていたが、痴漢に遭った事も、遭遇した事もなかった。
少し油断していたのかもしれないが、自分がまさか経験するとは思っておらず、同僚にも話せていなかった。

「まさか言えないよね、痴漢されて…感じちゃってたなんて…」

幾ら最近ご無沙汰であっても、痴漢に感じてしまうなど最低だと、ごんべいは自分に言い聞かせる。
そして、自販機に着くと、小銭を取り出す。

「…あれ、10円足らないし。もう、あんまりお札崩したくないのになぁ…」

そうは言っても、財布の中に10円玉は無く、諦めるしかなかった。

「ナナシさん、ですよね?」
「え?」

背後から声を掛けられ振り向くと、そこにはあの噂の美青年が立っていた。

「ヒロ、君?」
「どうも。ナナシさんが何か困っている様に見えたんで」

爽やかな笑顔で、ロウは言う。
思わずごんべいもドキッとしてしまいそうになるが、どうにか堪える。

「あ、うん。小銭が足らなくて、お札出すのを渋っていただけなんだ」
「そんな事、だったら僕のをどうぞ」

そう言い、ロウは自分の財布から10円玉を取り出す。

「えっ、そんな悪いよ。お札使うから気にしないで?」
「10円位返さなくて良いですから。さ、どうぞ使って下さい」
「…じゃあ、お言葉に甘えて…」

ロウから10円玉を受け取ると、ごんべいはそれを入れ、コーヒーのボタンを押す。

「ありがとうヒロ君」
「これくらい、お安い御用ですよ」

爽やかな笑顔で答え、ロウも同じコーヒーを買い、自販機から取り出す。

「ナナシさんって、電車通勤ですか?」

コーヒーを飲みながら、ロウはごんべいに質問をする。

「うん。毎朝通勤ラッシュに揉まれてここまで来るんだ。最初は大変だったけど、今はもう慣れちゃって」
「確かに、あの混雑は半端ないですよね。僕も同じ電車通勤ですが、結構髪を引っ張られたりして大変なんですよ」

ロウの黒く長い綺麗な髪が、サラサラと揺れている。
この髪があの混雑に押し潰されていると思うと、凄くもったい無く可哀想だとごんべいは思った。

「ふふ、確かに。髪の毛が可哀想かも」
「そうなんですよ、でも、やっぱり切る気になれなくて」
「切ったら勿体無いよ!凄く似合ってるし…」
「…ありがとう、ナナシさん。君にそう言って貰えると嬉しいですよ」

ロウの笑顔に、ごんべいは思わず胸の高鳴りが響くのを感じた。

(私…ヒロ君の事なんか興味無いって言ってたのに…)

同僚達にそう言った手前、自分の気持ちを認めたくはなかったが、やはり、ロウにドキドキしてしまっているのは事実であった。

「あ、じゃあ僕そろそろ行きますね。お互い、午後も頑張りましょう」
「あ、う、うん、そうだね。頑張ろうね」

しどろもどろになりながら、ごんべいはロウと別れを告げオフィスへと戻る。

「はあ…あんなにヒロ君と話したの初めて。やっぱり…かっこいいんだね」

皆が騒ぐのも分かる気がすると、ごんべいは思った。

「あれ?そういえば、ヒロ君も電車通勤なんだ…」

今まで気が付かなかった、と、ごんべいは思った。

「通勤一緒になったら嬉しいかも…ふふ」

一人るんるんと気分を上げながら、ごんべいはオフィスに戻るのであった。





午後五時を過ぎても、殆どの者は帰る事が出来ず、残業に追われていた。
中には徹夜するという者まで現れ、今夜はオフィスの明かりは途切れる事が無い、という感じになっていた。
ごんべいは流石にそこまで仕事をする気にはなれず、切りがついたら帰ろうと思っていた。

「はあーっ、やっと終わった、ごんべいどう?」
「うん、後もう少し…。先に帰っていいよ?」
「じゃあ、先に上がらせて貰う、ごめんね」
「気にしないで、気をつけてね」
「うん、ごんべいもね、じゃあね」

同僚が帰っていくと、残っているのは既に徹夜すると決めた何人かだけであった。
ごんべいも仕事に集中し、やっとキリの良い所まで終わらせる事が出来た。

「はあ、やっと終わった…」

息を吐き直ぐに帰る支度を始め、残りの徹夜組みに挨拶をし、ごんべいはオフィスを後にした。

「帰りの電車は、朝よりは全然空いてるから良いけど…」

歩きながら自分で呟き、ごんべいはまた今朝の出来事を思い出してしまう。

「…っ、私、何考えてるんだろ」

仕事で夢中の時は全く平気なのに、自由になった途端に思い出してしまう。
ごんべいは思わず、側にあったトイレに駆け寄る。
中には誰もおらず、電気が明るく点いているだけであった。

「はあ…しっかりしろ私」

トイレの鏡を見て、ごんべいは頬をぱしっと叩く。

「そういう事をしたいのなら、まず彼氏を作りなさい。…でも、なかなか出来るものじゃないし…」

自分でそう言っておきながら、ごんべいは項垂れる。
合コンなどに言っても、皆如何にも身体目当てという男ばかり寄ってきて、最近は行ってもいなかった。

「…あの痴漢の人も、身体目当てだから触ったのよね」

それにしては、優しく巧みな愛撫だったと、ごんべいは思い出してしまい、頬を染める。

「…暫く、この感覚は抜けそうにないかも…」
「すいません、何方か残ってますか?」

ごんべいが1人呟いていると、男性の声が外から上がる。

「あっ、はい!」
「もう消灯するんで、回ってきたんですが」
「…ヒロ君?」

それは、昼間話し込んだロウの声であった。

「ナナシさん?まだ残っていたんですか?」
「うん、なかなかキリが付かなくて。今帰る所だったんだ」
「そうだったんですか。僕も帰る所なんで、良かったら一緒に帰りませんか?」
「是非!きゃっ」

ロウの事が気になり始めていたごんべいは、喜んでその誘いを受けた。
が、その拍子に鞄の中身が飛び出し、床に転がる。

「大丈夫ですか?!」

ロウが心配し、慌てて女子トイレの中に入ってくる。

「ご、ごめん。中身が飛び出しちゃっただけなんだ…」

ごんべいはロウにそう言うと、急いでティッシュやポーチなどを拾う。
そして、ロウの足元に転がったリップを、彼がゆっくりと拾った。

「あ、ありがとうヒロ君、ごめんね」

女子トイレに男性を入らせてしまい、ごんべいは申し訳ないと、ロウに謝る。

「…」

だが、ロウはリップを持ったままじっと無言で立ち、ごんべいを見ていた。

「…くく」

ロウは、ごんべいを見たまま低い声で笑い始める。

「ヒロ君?…きゃっ!」

ごんべいは何が起こったか、一瞬分からなくなっていた。
気がつくと、トイレの一番奥の個室の便座の上に座らされ、目の前には黒髪長髪の美青年が、妖しく微笑んでいた。

「くく、ナナシさん、凄い動揺してるみたいだけど、どうかした?」
「ど、どうかしたって…ヒロ君、なんでこんな…っ。早く外に…」

立ち上がろうとするごんべいの膝を、しゃがみ込んだロウの両手が、しっかりと押さえていた。

「ナナシさん、真っ直ぐ帰ろうとしてたのに、どうしてトイレに寄ったんですか?」
「え…」
「貴女がトイレに入るのを見てたんですよ。幾ら経っても出てこないから、どうしたのかなって。お腹が痛い風でもなさそうでしたし」
「そ、それは…」
「1人で慰めようとしてたんですか…?」

ロウがニヤリと微笑んだ瞬間、ごんべいは咄嗟に手を上げていた。
だが、それはいとも簡単にロウの腕に捕まり、そのまま強引に唇を奪われていた。

「んんっ!」

ごんべいは首を嫌々と振るが、ロウは離れず、舌が割り込み、歯列をなぞられていく。
捕まれた手首もビクとも動かず、ごんべいは今更ながら男性との力の差を思い知る。
舌を見つけられると、強く絡ませられ吸われ、力が入らなくなっていく。

「…良い顔だ」

キスを終え、真っ赤になったごんべいの顔を見て、ロウはニヤリと笑う。

「ヒロ…君…はあ…っ、何で、何でこんな事をするのよ!」
「あんたが1人で慰めるんじゃ可哀想だと思ってな。手伝ってやろうとしてんだよ」

そう言ったロウは、今までの彼ではなく、口調も性格もまるで違い、物腰の柔らかい彼はどこにもいなかった。

「そ、そんな事頼んでないっ!」

ごんべいは負けじと、強く言い返すが、ロウはククッと笑う。

「…今朝、俺が触ってやったら、良い声で喘いでいたんは誰だよ」
「!」

今朝の痴漢の正体は、目の前にいる二枚目の同僚であった。

「な、何で…どうして?」
「さっきから質問ばっかだな。…たまたま電車の中であんたを見かけてな、それで触ったら、良い声で鳴き始めた。良い所だったのに駅に着いたから、きっとあんたは欲求不満になってるだろうと思ってな」

そうニヤリと笑うロウに、ごんべいは図星を突かれ何も言えなかった。
身体が疼いていたのは事実であったが、こんな会社のトイレで1人慰めようとは思っていない。

「欲求不満になんかなっていないから!早く退いて!」
「そうか、なら俺が触っても文句はないよな?欲求が溜まっていないんだからな」

そう言い、再び立ち上がろうとするごんべいを押さえつけ、ロウは彼女の首元に噛み付くようなキスをする。

「い、やぁっ…!」

首筋のある一点を強く吸われ、赤い痕が残されているだろう。
ごんべいは脚をジタバタとさせるが、間にロウが入っており、まるで効き目がない。

「暴れんなよ…まあ、嫌がってるのも今の内だ。直に良くなる」

別人の様に、冷たく鋭い瞳を浮かべているロウ。

「ヒロ君…あんなに、昼間は優しく話してくれたじゃないっ…どうして…っ」
「悪いが、今の姿が本当の俺だ」

首筋に噛み付いたまま、ロウは質問に答える。
そして、空いている片手でごんべいのスーツのボタンを器用に外していく。

「や、いやっ!」
「あんたの知ってるヒロは、昼間の俺だ。だが…本当の俺は今あんたを抱こうとしている」
「そ、んな…っ、人を、人を呼ぶから!まだ徹夜の人が残ってるんだから…!」
「くく、呼べよ。呼んだ所で、俺はあんたがトイレで倒れてたと言ってやる。俺とあんた、社内で評判が良いのはどっちか、分かるよな?」

ロウの綺麗な黒い髪が揺れ、瞳が妖しく光る。
ごんべいは、同僚達にこんな所を見られたらと、そして、誰もが社内一番の成績を持つロウの方を信じるに決まっていた。
ごんべいに残された事は、ただ黙って事が過ぎるのを待つしか無かった。

「…」
「くく、聞きわけの良い女は嫌いじゃない。自分の置かれている立場が分った様だな」
「最低よ…痴漢なんかしておいて…無理やり、今…っ」
「最低で構わないな、あんたを抱けるのならそれでいい」

顔を上げ、真っ直ぐロウはごんべいを見つめる。
不覚にも、ごんべいの頬に赤みが走ってしまっていた。

「な、んで…っ、私、なの…?」
「…何度目の質問だ、少し黙れ」

そう言い、ロウははだけたスーツの中から現れたブラウスの上から、今朝と同じ様にごんべいの自慢の大きな胸を掴み、ぐにゅぐにゅと揉み始める。

「ぁ…っ!」

胸を揉まれると、再び今朝の快楽が蘇っていく。
ロウもそれを分かっているのか、首筋に舌を這わせながら、こねる様に揉んだり、優しく円を描く様に揉んでいた。

「ん…ふ…」

声を出さない様、ごんべいは唇を噛み締める。
だが、やはりロウの愛撫は上手く巧みであった。
皺が出来る程強くぐにゅぐにゅと揉んだかと思えば、優しくゆっくりとこねる様に揉む。
ごんべいの中に、今朝と同じ快楽が現れ、どんどん強くなっていく。

「ん…ぁ…っ」

ロウの自分を掴んでいない方の手が動く度、ごんべいは声を漏らしてしまう。
その内に、ロウの揉む手が止まり、ブラウスの胸のボタンだけを3つか4つほど外していく。

「いや…ぁっ」
「くく…」

あっという間にボタンが外れ、ロウは低く笑いながらはだけたブラウスの隙間からブラに包まれたごんべいの大きな乳房を、片手で一つずつブラウスの外に出していく。

「良い胸だ」

ロウはもう片方の乳房を出すと、ブラの上からぐにゅりと揉みだしていく。

「あ…ん…っ」

嫌なはずなのに、ロウに揉まれると気持ち良いと感じてしまい、ごんべいは声を先程よりも大きく漏らしてしまう。
ブラウスの胸の所のボタンが3つ程空いた隙間から、ごんべいのブラに包まれた乳房が外に出され、何とも妖艶な雰囲気を保ち出している。
ブラ毎、乳房をこねる様にぐにゅぐにゅと揉んでいると、ロウの掌には、ブラの下からその存在を強調しようと突き出ている突起が当たり始めていた。

「欲求が溜まっていないと言った割には…この実は何なんだ?」

ロウは乳房を揉むのをやめ、ブラの真ん中にある突き出ている突起を、親指と人差し指でブラ毎摘んで捻る。

「あんっ!」

思わず、ごんべいは大きく声を上げてしまう。

「くく…今朝と同じく、良い声だ」

ごんべいの思わず漏れてしまった甘い声を聞き、ロウはニヤリと笑って言う。
ロウが飽きるまで、ひたすらごんべいには我慢するしか道が無い。
だが、ロウの巧みな愛撫は、徐々にごんべいの官能の渦をうごめいていくのであった。
ロウは、首筋を舌で這いながら、片方の指はブラの上から乳首を摘み捻り、片方は大きくブラ毎乳房をこね回していた。

「あ、ぁん…っ、や、ぁ…あ…」

ごんべいは、自然と口が開き喘いでしまうのを自分でも分かっていた。
乳首は快感を感じ、ブラの中で硬くそそり立っている。
その乳首を摘まれる度に、心地良い快感に包まれていく。
そして、ロウの指と手が乳首と乳房から離れていく。
ごんべいは解放される、と思ったが、考えが甘かった。
ロウは便座に座るごんべいの両膝を掴むと、ぐいっと横に開かせていた。

「!いやぁ…!」
「黙れ、あんたは喘いでいればいい」

ロウは問答無用でそう言うと、開いた拍子で少し託し上がったスーツのスカートを掴み、更に上まで捲り上げ、ごんべいの下着を完全に視界に入らせる様にした。

「やだぁ…見ないで…っ」
「クク…こんな可愛い姿を何故見てはいけない」
「…え…っ、ぁ…ッ!」

ロウの可愛いという言葉に、ごんべいは一瞬驚きの表情を浮かべたが、直ぐにまた、頬を赤く染めていた。
ロウの片手が下着の上に這うと、そのまま上下にゆっくりとなぞられていく。

「やぁ…あんっ、やめて…ぁあ…っ」
「あんたの口は素直じゃないな、身体の方が素直で良い子だ。…こんなに濡らして」

ロウが指でなぞると、下着はどんどん湿り気を帯びていく。
そして、ひとしきり下着の上からそこをなぞると、ロウは下着の裾を掴み、一気に膝の下あたりまで下げてしまった。
ごんべいの濡れたそこがロウの眼前に広がり、ごんべいは脚を閉じようと力を込める。

「閉じるな、誰が閉じていいと言った」
「お、お願い…ヒロ君もう…やめて…。ヒロ君なら、私じゃなくて他にもっと綺麗な人とかいるでしょう…っ」

必死に懇願し脚を閉じようとするごんべいの内腿を、ロウが両手で掴みそれを阻止する。

「…あんた、やはり馬鹿だな」

ごんべいの両方の内腿を押さえながら、ロウは顔を彼女の下着が守っていた場所へと近づかせる。

「ば、馬鹿って…っ」
「俺はあんたを抱きたいと言っただろう、ただそれだけだ…ん、ちゅ」
「あぁあんっ!!」

夜の社内のトイレに、ごんべいの甘い声が響き渡る。
ロウが顔を埋め、ごんべいの蜜が溢れるそこを舌で舐め上げ始めていた。

「ふ…ちゅ…」

ロウの熱い舌が、ごんべいの蜜を丁寧に舐め取り、時にはじゅるっと水音を立てて吸い上げていく。

「ああんっ、やだ…やぁあんっ」

ロウが脚の間におり脚を閉じる事も出来ず、ごんべいは両手を胸の前で組み、首を横に振りながら喘いでいた。
ごんべいの内腿をしっかりと押さえながら開かせ、溢れる蜜を下から上へと舐め取り、そして、ちゅううっと蜜溢れる入り口に触れ吸い上げる。

「ああんっ、はぁ、あん」

ごんべいの理性が無くなり始めていたが、それでも首を横に振り続け、嫌々としていた。
だが、ロウの舌が動くのと同時に、快楽が全身へ駆け巡り声を大きく上げてしまっていた。

「ちゅ。ふ…。気持ち良いのか…?」

蜜が溢れる入り口を、今度は舌先を尖らせツツツと突くと、ごんべいの腰がよじれていた。

「はぁあん…だめぇ…や、め…て…」
「…まだ、抵抗する言葉が出るとはな。…なら、この実に触れれば…嫌でも抵抗などしなくなるだろ」

ロウの舌先が、赤く硬くなっている実を見つけると、ツンツンと優しく突く。

「ああぁんっ!!」

たったそれだけの事だったのに、ロウがクリトリスを突いた途端、ごんべいの全身に電流が走っていた。

「クク…やはりこの硬い実がいい様だな」

ごんべいの素直な反応に、ロウは満足そうに言う。
そして、クリトリスに舌先を当て、ペロリとゆっくり舐める。

「やぁあんっ!」
「ちゅ…そうだ、もっと声を上げろ…」

そう囁き、ロウがクリトリスをチロチロと突こうとした時であった。

「ねえ、でさー」
「うん、だよねー」

トイレの中に、女性社員の声が上がり始めていた。
ごんべいの中に、一気に緊張の汗が流れ始める。
ロウも一端顔を上げ、女性社員の動向を伺っている。
幸い、2人は個室に入らず洗面所で化粧を直している様であった。

「ねえねえ、ヒロ君って彼女いるんかねー?」

話の話題は、今ごんべいの目の前で脚の間にしゃがんでいる、社内一の美青年の事になっていた。

「そりゃああの外見と性格だもん、いない方が可笑しいでしょ」
「だよねぇ。でも、ヒロ君が彼女いるって聞いた事ないし。はぁ、ヒロ君になら無理やり抱かれたって絶対文句言わないよー」
「分かる!ヒロ君なら大歓迎、無理やりだってされたいよねー」
「ねー」

とんでもない会話を、2人の女性社員は繰り広げている。
ごんべいは、今正に自分がその状況に置かれているなどと、少し呆然として思っていた。
だが、そんなごんべいに不意打ちをかける様に、ロウが再び動きを開始していた。
ロウはごんべいの脚の間から顔を上げ、両手も内腿から離すと、ブラのカップの裾を掴んでいた。

「な…っ」
「くく…」

ごんべいが驚いているのを尻目に、ロウは笑いながらブラのカップの裾を持ち、上にぐいっと上げてしまった。
上に上がるその拍子に、ピンッとそそり立ち硬く尖っている乳首がブラの裾に当たり、ごんべいは思わず声を漏らしてしまった。

「ああんっ」

声が出てしまってから、ごんべいはハッとなり口を慌てて押さえる。
幸い、女性社員はロウの事でお喋りに夢中でごんべいの喘ぎ声には気づいていなかった。

「クク…声、出して良いんだぜ?我慢するなよ…」

ロウは意地悪くごんべいを下から見上げると、そのまま露わになった乳首に吸い付いた。

「ふあ…っ!!」

口を両手で押さえ、ごんべいは思わず目を瞑る。
ごんべいの右の乳首に吸い付いたロウは、ちゅうっ、じゅるっと音を立てて乳首を吸い付い、左は乳房をぐにゅりと掴み、その柔らかさを堪能する様にこねくり回していた。

「はぁ…あ…ん…や…ぁあん」

口を押さえていても、溢れ出る官能の渦に巻き込まれていき、ごんべいは声を我慢する事が出来ない。
そして、ちゅぱっと右の乳首がロウの口内から引き抜かれると、今度は優しく、弱く、歯を立てられ上へと引っ張られる。

「はぁあんっ!」

その瞬間、ごんべいは思わず手を離し声を上げてしまった。

「…ねえ、今の聞こえた?」
「うん…」

ごんべいの頭の中が一瞬でパニックになる、外の2人に聞かれてしまったのだ。
ここは一番奥だが、近くまで来れば閉まっている事に気付かれてしまう。

「クク…良い声でお鳴きになるんですね。もっと、外のお2人にお聞かせしましょうか?」

ロウは何時もの口調に戻っており、何も危機感など感じておらず、この状況を楽しみ、再び乳首に舌を這わせ、乳輪に押し付けながら、コロコロとぐるりと転がし始める。

「はぁ…ぁん、お願…っ、やめ…て…っ」

口を押さえ首を振るごんべいだが、ロウは聞き入れず、本当に外の2人に聞かせるように、転がした乳首をまた口内に含み、じゅるっと音を立てて吸っていた。

「やぁ…あん…ヒロ…君お願…っ、ぁ…んっ…」
「ねえ、誰か入ってるんじゃない?」
「奥に行ってみる?」

女性社員の声が、段々と近付いていた。
ごんべいは声を漏らすまいと、唇を噛み締め脚に力を込める。

「ねえー誰か入ってる?」

入り口の方から、別の女性社員の声が上がる。

「あ、うん、けどもう出るよー」
「もう残っている女性社員は私と貴女達だけだから、トイレの電気消すけど、いい?」
「あ、待って、今行くー」

タタタと駆ける音が上がると、パチッという音ともに、トイレの電気が消え真っ暗になっていた。
真っ暗と言っても、青いLEDを使っているので、お互いの顔や身体なら十分見えるぐらいの灯りはあった。

「…残念だな、あんたと俺がシてる所、見せつけてやろうと思ったのに」

乳首から一端唇を離し、ロウは青い光の中、妖しく微笑む。

「っ…絶対そんなの嫌よ…っ」

女性社員達が去ってくれた事に、ごんべいは心からホッとしていた。
それと同時に、身体は再び熱く熱を帯びていた。

「…あいつらが話してた会話、聞こえたか?」

ロウは、自分が今まで舌で愛撫した右の乳首を人差し指で押さえ、左右に弾く様に転がす。

「はあぁ…ぁあん」

愛撫が再び始まり、ごんべいは我慢していた声を漏らす。
乳首は濡れて滑りやすくなっており、ロウの指に合わせコロコロと倒れていた。

「俺になら、無理やりにでも抱かれたいと言っていたな」
「あぁあ、ん。そういう…人、もいる…わ…」
「…だが、俺は何とも思わない女など抱きたいとも思わない」
「…!」

ごんべいはロウの言葉を聞き、自惚れだが、彼は自分の事を想っているのかと、思い始めていた。
ロウはそう言うと、今度はごんべいの左の乳首に吸い付き、ちゅうぅと音を立てて強く吸い始める。

「はぁあんっ!」

強烈な刺激に、ごんべいは思わずロウの頭を抱えてしまう。
彼の愛撫は止まる事はなく、左の乳首をちゅぱっと引き抜き、根元から乳頭までゆっくりと舌先で舐め上げると、そのまままた口内に含み、ちゅうちゅうと強弱をつけ吸い上げる。

「ああぁん、ああんっ」

女性社員達の出現によって、ごんべいの理性は逆にもう殆ど残っていなかった。
もっとシてほしいと、ごんべいは首を反らせる。
ロウは、左の乳首を吸い、左手で右の乳房を円を描く様に揉み、右手を脚の間へと滑らせていく。
そこは先程よりも蜜が溢れ、ロウの指を濡らしていく。

「ああぁん。あっ、あん」

ロウの指がそこを上下に擦りながらなぞり始めると、切なげなごんべいの声が上がる。
その声をもっと聞こうと、ロウの指は先程あまり愛撫出来なかった、クリトリスへと這わせる。
乳首と同じ様に硬くなったそれを指に当てると、そのまま上下に擦っていく。

「はあぁんっ、やあぁんっ」

敏感な実に触れられ、ごんべいは悦びの声を上げ首を仰け反らせる。

「ん、ちゅ…俺の手でイけ…ごんべい…」

ロウは、初めてごんべいの名前を呟いた。
そして、クリトリスを弾く様に指を2本使い、押さえながら素早く指を動かした。

「あぁあんっ!だめぇイくっ、イっちゃう!はぁああん!!」

ロウの巧みな愛撫に、ごんべいの身体はあっという間に快楽の果てへと登りつめていた。
脚を震わせ、トイレに声を響き渡らせながら、ごんべいはイってしまった。

「…イったか」

ロウは、口元に付いたごんべいの蜜を舌でペロリと拭い取ると、そのまま立ち上がる。
イった事でぼうっとなってしまったごんべいの腰を掴み立ち上がらせると、彼女をトイレの壁に押し付ける。

「ヒロ…君…」
「あんたのイった顔…最高だ」

ロウは、ごんべいの右足を左手で持ち上げると、硬く熱くなっている自身を、彼女のそこへと擦り当てる。

「あぁ…っ、ヒロ…君…っ」
「あんたのせいだ、責任…取れよ?…っ」
「ふぁあっ!!」

グッと、ロウのものがごんべいの入り口をこじ開け、中へと進入を始める。
蜜で濡れきり、イったばかりのそこは、ロウのものの挿入を簡単にしていた。

「あぁん、ヒロ君の…硬い…っ」
「言っただろう、あんたが可愛いからだ…っ」

硬く熱いロウのものは、どんどん奥へと入り全てが中におさまると、彼は空いている右手でごんべいの肩を持ち、ぐいっと腰を動かし奥へと突き上げる。

「はあぁんっ」

その瞬間、じわじわとごんべいの中に快楽が広がっていく。

「く…あんたの中、キツイ、な…。だが…このキツさがいいな…ッ」

ロウは自身を少しだけ引き抜き、そして一気に奥へ入れ突き上げる、という動きを繰り返す。

「あぁんっ、はあんっ、気持ち…良い…ぁあん」

頬を上気させ、女の悦びの声を上げるごんべい。
ぷるんぷるんと、腰が動くと揺れる乳房の頂きにある硬く尖る突起に、ロウは吸い付きじゅるじゅると舌を滑らせていく。

「はぁあん、ああん。ロウ…っ」

ロウにしがみつき、ごんべいは彼の名を呼ぶ。
ちゅぱっと乳首を引き抜くと、ロウはそのまま自分の名を呼んだ唇を奪う。

「ふ…あぁん…ん」

腰の動きは止まらず、ごんべいの膣の中の刺激も止まないので、彼女は吐息を漏らしながらロウのキスを受け入れる。

「ん、ふ…ちゅ。…ごんべい…あんたは何故自分なのかと…聞いたな。その理由…教えてやる…」

そう言うと、ロウは一端自身をごんべいの中から引き抜いた。
ロウのもので満たされていたそこが、一気に空腹感の様なものになり、ごんべいはひくっとそこを疼かせる。

「…ふ、そんな顔をするな。直ぐにまた挿れてやる…」
「ぁ…っ」

ごんべいをくるりと後ろに向かせ、お尻を突き出させると、そのまま一気に自身を挿入させる。

「あぁあんっ!」

再び満たされた悦びに、ごんべいは両手でトイレの壁を押し付ける。

「っ…俺は…興味がない女など、見向きもしない。眼中になど、ない」

ごんべいの腰を持ち、大きく腰を動かしながら、ぐいっと彼女の膣の奥へと突き上げる。

「ふぁああんっ!」
「ただヤるだけなら、先程の女の様に…幾らでもいるからな…。この意味、分かるよな…ッ」

ごんべいの腰を自分に打ち付ける様にぐんと押し込めると、彼女は顔を上げ喘ぐ。

「はあぁんっ!じ、じゃ…ぁ…ロウ…は…私…を…っ?」

ごんべいは顔を横に向け、後ろのロウを見やる。
ロウの髪を縛っていたゴムが取れ、黒くサラサラの髪が揺れ、ごんべいの背中をかすめていく。
その姿はとても綺麗で、妖艶であった。

「ふ…意味が、分かった様だな…」
「ロウ…はあん、んっ」

横に向いたまま、再び唇を奪われ、ごんべいも自ら舌を入れ、ロウの舌と絡ませていく。

「ごんべい…俺の女になれ。いいな…」

キスの合間にそう囁くロウに、ごんべいはコクンと頷いた。
その瞬間、前にロウの両手が回され、乳房を掴まれると、そのまま激しく腰を打ち付けられる。

「はぁあんっ、ふぁあんっ!」
「く…ッ」

ロウの長い髪が揺れ、青白い灯りの下、二人はお互い快楽の果てへと向かって、腰を打ち付け合う。

「あぁんっ、あんっあんっ!イくっ、またイっちゃう!」
「ッ…!」

パンパンという肌のぶつかり合う音、ごんべいが押さえるトイレの壁がガタガタと軋み、二人の激しい行為を物語っていた。
ロウが大きく突き上げた時、ごんべいは仰け反り、彼のものを強くきゅっと締め付けた。

「はああん、イッちゃう!あぁああん!!」
「く…ッ!」

ごんべいの締め付けで、ロウも自身を波打ちさせ、快楽の果てである証をごんべいの中へと注いでいった。




青白いトイレの中、二人の息だけが上がっていた。

「…」

ロウは、自分の身なりを素早く整えると、無言でごんべいの服を丁寧に直していく。

「…ロウ…」
「…何だ?悪いが、謝る気はない」
「…気持ち、良かった…」

素直な気持ちを、ごんべいは伝えた。
最初ここに連れ込まれた時、女性社員が来た時、どうなるかと怖くて仕方なかったが、それでも、ロウの愛撫は丁寧で優しかった。

「…ふ、あんたのそういう素直な所に、俺は惚れたのかもな」

ロウは笑顔で微笑むと、長い黒髪をゴムで縛る。

「ロウ…垂らしてた方がかっこいいのに」
「…女どもが煩いからな。一度このまま出社したら、休み時間の度に囲まれ身動きが取れなかった」

なんとなく、そのイメージが分かり、ごんべいはふふっと笑ってしまう。
そして、トイレを後にし廊下へと出ると、幸い誰もいなく、誰にも見つからないで二人は会社を後にした。
終電近い電車はガラガラで、朝の満員電車は嘘の様であった。

「私を見つけたのも…たまたまなの?」
「あんたが電車通勤してると噂で聞いてな。車通勤からこっちに変えた」
「え…っ」

自分の為にそこまでしてくれたのかと、ごんべいは嬉しくなってしまった。

「あんたは俺に興味がなさそうだったからな。きっかけを作るには、俺の指を忘れない様にさせるのが一番だと思ってな…くく」
「だ、だから痴漢したの…?」
「俺に一切興味を持たないあんたに、俺の方が興味が湧いてな。…痴漢という名であんたを口説いただけだ…」

妖しく微笑むロウの瞳に、ごんべいはどんどん吸い込まれていく。
あまり興味など無かったロウに、ごんべいはその瞳と共に、惹かれていくのであった。

「…ごんべい。明日は、下着を履かないで電車に乗って下さい。良いですね?僕の言うこと…聞けますね?」

作り物の口調になっているロウ、だが、その妖艶なオーラまで変わってはいない。

「…うん…分かった…」

ごんべいは直ぐに頷いた。
ロウにまた触れて貰いたい…その事で頭が一杯になっていた。

「良い子ですね…明日、一杯ご褒美をあげますから…」

そう囁き、長い髪を揺らすと、誰もいない車内でごんべいとロウは唇を触れ合うのであったー。


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