女大名


戦国時代。
男大名が国を支配する中、一つだけ女大名が治めている国があった。

「皆、民の者の声を聞いてほしい。今何が不足しているか、私は知りたい。頼むぞ」
「はっ!」

ナナシ家当主、ナナシごんべいの言葉に家臣はそれぞれ散っていく。

「ごんべい様」

ナナシ家重臣であるロウが、ごんべいの前に膝をつく。

「ロウ、其方には騎馬の調達を頼みたい。馬の扱いは、其方が一番だからな」
「もったいないお言葉でございます」
「ああ。飛雪と協力してやってほしい」
「はっ」
「姉上、呼んだ?」

ひょっこりと顔を出したのは、ごんべいの弟飛雪。

「飛雪、ロウと共に軍馬の調達をして貰いたい」
「りょーかい。俺とロウなら馬も懐いているしね。伊雪には全くダメだけどー」
「兄上、何かおっしゃったか?」

また現れたのは、もう一人の弟伊雪。
明るくおちゃらけた飛雪、そして生意気だが頭が良い伊雪。
統率力のある、女大名ごんべい。
ナナシ家は、三姉弟で成り立っていた。

「伊雪には、馬の扱いは向かないって事さ」
「如何にも。俺は馬より銃を扱ってる方が良い」

伊雪はふんと言う。

「伊雪、其方は火事場に行き、銃を調達して貰いたい」
「言われなくてもその予定だ。じゃあ、早速」

伊雪はそう答え、そそくさと立ち去る。

「俺らも行こうぜロウ」
「はい。では、ごんべい様」
「うむ、頼むぞ」
「はっ」

ロウは一礼し、ごんべいに背を向ける。

「なーロウ」

牧場で、馬の手綱を引きながら飛雪は言う。

「なんでしょう?」

馬を撫でている手を止め、飛雪の方へ向き直る。

「ロウは姉上の事、好きなんだろ?」
「な…」

ロウは、思わず頬を染めていた。

「やっぱりそうか。な、ロウ、姉上と夫婦になっちまえよ」
「そ、そんな事は滅相もありません。ごんべい様は気高い存在です。私にとって…手の届かない存在です」
「なーに言ってんだよ。姉上にも支えとなる夫が必要なんだぜ?」
「ですが、私には手の届かない存在ですから」

ロウはそう言い、馬を連れて行ってしまった。

「なんだーつまんないな。けど、ロウは本気で姉上様が好きだな…なー馬ちゃん」
「ブルル」

馬もブルッと鳴いて答える。





「ごんべい、やはり戦になりそうか?」

ごんべい達の父、知雪だ。

「はい。私としては避けたいのですが…相手は我が国の農家の者を襲ったのです。私はそれが許せなくて…」
「うむ。その様な残虐な振る舞い、許せんな」
「はい。ですが、今回は私と飛雪、伊雪だけで行きます。その様な行いを止める様、まずは説得をしてみたいので」
「うむ。…だが、其方らだけで大丈夫か?」
「はい」

ごんべいは、父に力強く頷く。

「ごんべい、其方はこの国の大名として本当に良くやっている。だが…そろそろ良い夫を見つけて婚約しても良いと思うが…」
「父上…私は、夫などいりません。私一人で、そして飛雪と伊雪でこの国を支えたいのです。婚約して子など授かれば…国を動かすのも大変になります。ですから…」
「分かった。ごんべい、そちの思う通りにやれば良い」
「はい、父上。…申し訳ありません」

ごんべいはそう言って、父の部屋を後にする。

「知雪、ごんべい様は手強いな」

新たに入ってきたのは、ロウの父だ。
知雪の親友でもある。

「…そうだな。やはり、わしが隠居しなければ良かったやもしれん」
「いや、女大名としてごんべい様はよくやってる。其方がわざと隠居し、三人の子達に国を任せたのは、正解だ」
「ああ。…だが、ごんべいは勿論、飛雪も伊雪も婚約するには程遠いな…」

知雪は、そうがっくりと項垂れる。
早く孫を見たいというのが、父の本音であった。

「そうだな。うちのロウかワキと、ごんべい様が婚約して頂ければ…」
「わしもそれを望んでいる。二人はごんべいの事はどうなんじゃ?」
「二人とも、幼い頃からごんべい様に惚れておるよ」
「そうか。…まあ、こればかりは本人次第じゃからな…」

二人はお互い、大きく深く溜息を吐いたのだった。






「ごんべい様、襲われた農家が新たに畑の種が欲しいとのことです」

帰ってきたのは重臣の一人、ロウの弟ワキであった。

「そうか。全く、酷いことをする。直ぐに手配してやってくれ。それと、もう二度とそんな事をさせぬから安心してくれと、伝えてくれ」

ごんべいは手を動かし、ぐっと拳を握り締める。
その反動で、ごんべいの大きな胸が着物の下でぷるんっと揺れた。
それを見て、ワキは思わず頬を染めビクッとなっていた。

「どうしたワキ?具合でも悪いのか?」

顔が赤くなったワキを見て、ごんべいは歩み寄り彼のおでこに掌を当てる。
同時に、ごんべいの豊満な胸が、ワキの顔に当たっていた。

「…熱はないようだな」
「は、はい…だ、大丈夫です!で、では失礼します!」

ワキは慌ててごんべいから離れると、一目散にその場から去っていった。

「なんだワキは…どうしたというんだ」

ワキの態度に疑問に思い、ごんべいは彼が去っていった方を見つめる。

「姉上、火縄を確保しておいた」

伊雪だ、彼は冷静なごんべいのもう一人の弟。

「ありがとう、伊雪。じきに、私達だけで出陣する」
「ああ。武器を持っていない農民を襲うなど、卑劣極まりないからな。少し痛めつけた方が良い」
「私も戦は好きではない。だが、国の者を痛めつける者は容赦はしない」
「ああ。俺ら姉弟の騎馬鉄の技、見せてやろうぜ」

伊雪はニヤリと笑い、ごんべいも力強く頷く。



そして数日後、ごんべい、飛雪、伊雪とお供の何人かで出陣する事になった。

「ロウ、ワキ、後の事は頼む」

ごんべいは鎧に身を包み、ロウとワキに言う。

「はっ、お任せください」

ワキはその場に膝をつき、はっきりと答える。

「ごんべい様…どうか、お気をつけて」

ロウは、ごんべいを真っ直ぐ見つめる。

「ああ、大丈夫だ、頼むぞロウ」

ロウの肩に手を置き、ごんべいは真っ直ぐ彼を見る。

「はっ…」
「うむ、頼りにしているぞ」

笑顔で頷くごんべいに、ロウの頬は赤く染まっていた。
三姉弟は、農家を襲った敵国を、少し注意を兼ねて出陣するという事だった。
なので、軍馬も鉄砲も最小限に抑えていたー。




三姉弟が出陣してから一週間程経った頃、三人が帰国するとの知らせが入った。
ロウはいち早く城門に向かい、ごんべい達を待った。

「大変だ!」

兵士が声を上げ、ロウの元へ駆け寄る。

「何事だ?」
「ごんべい様がお怪我を…っ」
「何だと…?!」

ロウは、いつも先頭で帰ってくるごんべいの姿が無い事に気がつく。
彼はそのまま、飛雪達の元へと急ぐ。

「飛雪様!ごんべい様は…?!」
「うん、大丈夫。胸に少し切り傷が出来ただけだから」

飛雪は、ごんべいが乗っている籠を指差す。

「けど、念の為籠で帰らせたんさ」
「そうですか…では、直ぐにお部屋へ運びましょう!」

ロウは城へ戻ると、家臣達に手際よく指示をする。

「早くごんべい様の寝床を準備しろ!」
「はっ!」

家臣達に指示しながら、ロウは気が気ではなかった。

(ごんべい様…貴女にもしもの事があれば、絶対に貴女を傷つけた輩を許さん…!)

ロウが拳を握り締めていると、ごんべいが飛雪と伊雪と共にやってきた。

「ごんべい様!お怪我は?!」
「大丈夫、少し切り傷を負っただけだ」

そう言ったごんべいの顔は、少し痛みに歪ませていた。

「俺達がいっくら言っても、奴等聞く耳もたないし、しかも攻めてきたんさ。だから…」
「俺達の騎馬鉄で蹴散らしてやったら、大人しく帰っていきやがった」

飛雪の言葉を遮り、伊雪が得意げに言う。

「その通り、戦は勝った。姉上は合戦の最中に刀で少し斬られてしまった」
「大丈夫、大した事は無い」

飛雪の言葉に、ごんべいは笑顔を浮かべる。

「ですがごんべい様、少しお部屋でお休みになられた方がいいです、さ、此方へ」
「…そうだな、すまない…」

ごんべいはロウの手を取り、部屋へと入っていく。

「なあ伊雪、あの二人、お似合いだと思わないか?」

手を取り合う二人を見て、飛雪が小さな声で言う。

「…まあな。ロウなら、義理の兄になってもいい」
「だろ?けど…姉上が婚約したら俺達にも来るよな…」
「…女はごめんだ」
「俺も馬一筋でいい…」

弟二人は、別の意味で深く溜息を吐くのであった。





「はあ…私としてはドジを踏んでしまったな」

ごんべいは部屋で横になりながら、胸の谷間に出来た傷を指でなぞる。
銃で撃つ事に必死で、近くにいた敵に気づく事が出来なかった。

「こんなドジは二度と踏まぬようにしなくてはな…」

ごんべいは固く、心にそう決めた。

「父上は婚約しろと仰るが…婚約などしたら国を治めるのに支障が出る。まだするわけにはいかないな…」

布団からゆっくりと起き上がると、傷口がズキズキと痛む。

「ごんべい様」

部屋の外にいる付き人の声が上がる。

「ロウ様がお目通り願いたいと申しております」
「よい、通してくれ」
「はい」

暫くすると、ロウが入ってくる。

「失礼します。ごんべい様、お加減は…。っ!!」

言葉を言い終わらないうちに、ロウの頬が一気に赤く染まっていた。

「どうしたロウ?」
「い、いいえ!も、申し訳ありません、失礼します…!」

ロウは慌てて出て行ってしまった。

「なんだロウは…どうしたというのだ?」

ごんべいは不思議に思い、自分の身体を見つめる。
そこには着物がはだけ、胸の谷間が露わになっている自分の姿であった。

「っ…これか。私とした事が…ロウに謝らなくてはな…。明日、謝りに行こう」

ごんべいはそう自分に言い聞かせると、床に身を伏せた。



「っ…ごんべい様…」

ロウは城の廊下を歩きながら、口元を押さえる。
先程のごんべいの胸の谷間が、頭から離れなかった。
幼い頃からごんべい達三姉弟と過ごしてきたロウは、その時から彼女に惹かれていた。
同時に、ごんべいを自分の手で守りたいと思っていた。
先程の光景は、ロウにとって刺激過ぎるものであった。

「ごんべい様…やはりお美しい。あの身体に傷を付けた奴…許さん」

ロウの顔は、未だに真っ赤に染まっていたー。





朝から、ごんべいはロウを探していた。

「ロウは何処にいるか知っているか?」
「兄上ですか?そういえば今朝から姿が見えなくて…」

ワキが不思議そうに答える。

「ごんべい様、同盟の使者が参っております」
「…同盟?まさか…」

同盟という言葉に、ワキが顔を歪ませる。

「分かった、会おう」

ごんべいがその使者の元に向かうと、昨日まで戦っていた相手の家臣であった。

「ごんべい様、ナナシ家の騎馬鉄砲の技、見事でございます。そのお力を見込んで、是非我が国と同盟をお願いしたいのです。我が当主の娘を、飛雪様のご正室としてお迎え頂ければ…」
「は?何言ってんだよあんた。勝手に人の婚約話を進めるなよ」

飛雪がすぐさま、相手の家臣に言い返す。

「申し訳ありません。ですが、姫様は飛雪様に相当お惹かれの様子で…是非」
「嫌だね。俺は結婚しない主義だから」
「申し訳ないが、この同盟は結ぶ事が出来ない。お引き取り願おう」

飛雪の言葉の後に続く様に、ごんべいはびしっと言い放つ。

「私は、女性を戦の道具にするのが大嫌いでな。その様な国と同盟する気はない」
「ごんべい様そ、そんな…」
「帰れ」
「は…はっ!」

ごんべいの厳しい一喝に、相手の家臣は慌てて去っていった。

「姉上…」

飛雪がそれを見て、心配そうに姉を見やる。

「飛雪、無理に結婚などしなくてよい。本当に好きな女子とするべきだ、良いな?」
「うん…ありがとう姉上…」

飛雪の表情が、いつもの明るい笑顔へと戻っていく。

「勿論、伊雪もだ、良いな?」

もう一人の弟伊雪の方に、ごんべいは向き直る。

「俺は婚約する気はないから」

いつも通りのクールな伊雪の答えであった。

「ふふ、其方らしいな。だが、同盟を断った理由でまた攻めてくるやもしれん。気を抜かずにやってほしい。皆、宜しく頼む」
「はっ!」

当主ごんべいの言葉に、家臣達は一斉に返事をする。

「…やはりロウはいないか。飛雪、伊雪、ちょっと町へと出てくる」
「了解、姉上」
「 ああ」

弟二人に城を任せ、ごんべいはロウを探しに城下町へ向かうのであったー。





「ごんべい様!」
「ごんべい様だ!」

国の者が、ごんべいを見て頭を下げる。

「皆、良くやってくれているな。感謝する。何か不都合があったら、遠慮なく言ってくれ」

ごんべいが皆にそう言うと、歓喜の声が上がる。

「ではな、宜しく頼む」

ごんべいは町の者に頭を下げると、その場を去っていく。

「ごんべい様はなんて優しい方なんじゃ」
「あのお優しさには頭が下がる思いじゃ」

町の者から、ごんべいを讃える声が上がっていた。



「ここに来るのは久しぶりだな…」

町外れの川へと、ごんべいはやってきた。
幼い頃はよく、ロウ達と水浴びをし遊んでいた思い出がある。

「懐かしいな…」
「ごんべい様?」

背後から声が上がり振り向くと、ロウが上半身裸で刀を持ち立っていた。

「!ロウ…っ」

幼い頃に見たロウの身体と違い、逞しく、鍛えられた男の身体へと彼は成長していた。
それを目の当たりにし、ごんべいは急に恥ずかしくなってしまった。

「こ、ここで何をしておる?」

ロウを見ない様に、ごんべいは下を向いて言う。

「はい、ごんべい様をお守りしたく、鍛錬をしておりました。勝手に申し訳ありません」
「そう…か…」

ごんべいの胸が、ドキドキと鼓動が高まっている。

(この胸の鼓動は何だ…?私は…ロウに…ドキドキしている。まさか…私は…)

「ごんべい様?」

ロウが、動かないごんべいを心配し歩み寄ってくる。

「よ、よるな!」

ごんべいは驚き、ロウの前で手を横に振る。
ズルッと、その途端ごんべいの足元が水で滑ってしまった。

「きゃあっ!」
「ごんべい様!」

間一髪、ロウの手がごんべいを掴み抱き寄せる。
目の前にあるロウの整った綺麗な顔に、ごんべいの顔は真っ赤になってしまった。

「大丈夫ですかごんべい様?!」
「っ…!だ、大丈夫だ…。!は、離せ!」

ごんべいは無理やりロウから離れると、その場を足早に去る。

「ごんべい様…」

ロウはごんべいの後ろ姿を見、何故かやりきれない気持ちになっていた。




それから、ごんべいはロウと一切関わらない様にしていた。
自分の気持ちに気付いてしまい、どう対応したら良いか分からなくなってしまったからだった。

「ごんべい様…お話しても宜しいですか?」
「飛雪か伊雪に聞いてくれ。では」

ごんべいはそう言って、ロウから足早に去っていく。

「ごんべい様…」




そして、ごんべいが射撃場で一人で銃を撃っていると、ロウがやってきていた。

「ごんべい様」
「!ロウ…な、なんだ?用なら後にしろ」
「…何故、ごんべい様は私を避けられるのですか?」

ロウは、ゆっくりとごんべいに歩み寄りながら言う。

「別に…避けてなどいない」
「なら何故、私を見て下さらないのですか?」

ロウは、ごんべいの直ぐ後ろまで近付いていた。

「見ていないなど…」
「ごんべい様…!」
「っ?!」

ロウに、ごんべいは後ろから抱き締められていた。
お腹の所に両手を回され、しっかりと固定されている。

「な…何をする!離せロウ…!」

慌ててごんべいが言うが、ロウは動かない。

「離しません…ごんべい様が私を見てくださるまで、離すつもりはありません」
「ロウ…っ」

ロウの早い鼓動が、背中を通じて伝わってくる。

「私は…ごんべい様に避けられるのが何より辛い。…どうか、私を見て下さい…!」
「ロウ…」

ごんべいはそこでやっと、自分の気持ちに気付けた様な気がした。

「…ロウ、夜、私の部屋に来てほしい。付き人も外しておく。…来てくれるな?」
「ごんべい様…」

そこで漸く、ロウはごんべいを解放する。

「待っている。では…」

ごんべいは心が吹っ切れて、軽くなった事を感じていたー。






「失礼します」
「ああ、入れ」
「は」

その夜、約束通りロウが部屋に訪れ、ごんべいは彼を招き入れる。
部屋の側で見張りに立つ付き人も、今夜はいない。

「来てくれて嬉しい、ロウ」
「…い、いえ」

髪を下ろし、寝巻きの着物を着ているごんべいに、ロウの頬は赤く染まる。

「側に来てくれないか」
「…はっ」

昼間はごんべいを自分の衝動で抱き締めてしまったロウだが、やはりいつもと違うごんべいの姿に鼓動が高まる。
側に寄ってきたロウの手を、ごんべいは取る。
そして、そのまま自分の胸の傷に触れさせる。

「ごんべい様…?!」
「ロウ…其方は幼い頃から私を守ってくれたな。私は…それが本当に嬉しい。そして、私は気がついた…其方に、惹かれていると」

そこまで呟くと、ごんべいは傷の所から下に更に降ろさせ、ロウの手を自分の乳房に触れさせる。

「私に…触れてくれないか?ロウ…其方が好きだ…」
「っ…ごんべい様…!」

ロウはそのままごんべいの乳房を掴むと、片手で彼女を引き寄せ唇を奪った。

「ん…ふ…ロウ…」
「ごんべい様…。私も、幼少の頃から貴女をお慕いしておりました。…貴女を守りたい。貴女を…私のものにしたい」

キスの合間に、ロウが潤んだ瞳でごんべいを見つめる。

「そうか…其方の気持ちに気付くのが遅すぎたな。すまぬロウ…」
「いいえ。こうして…ごんべい様が自分の腕の中にいるだけで…十分すぎます」
「そうか…ありがとうロウ。…私を、抱いてくれ。其方のものに…なりたい…」
「ごんべい様…」
「ごんべいで良い。それと…敬語もいらぬ」

にっこりとごんべいが微笑むと、ロウは彼女を布団へと押し倒した。

「…ごんべい。なら、俺も本気で貴女を抱く」
「それでよい…んっ!」

ごんべいは再びロウに唇を奪われる。
今度は激しく、舌が入ってきて、歯列をなぞられていく。
そして、同時に彼の両手はごんべいの乳房を掌で包み込み、優しくゆっくりと揉み始めていた。

「あ…ん…んっ…」
「…可愛い声を出すんだな」

漏れ始めたごんべいの甘い声を聞き、ロウは優しく微笑む。

「すまぬ…っ、気持ちが…良くて…な」
「もっと聞かせてくれ。ごんべいの声が聞きたい」

乳房を揉まれているうちに着物がはだけ、胸が露わになっていく。
乳房が現れると、ロウの手が直に包み込み、円を描く様に優しく揉む。

「あっ…あんっ…」
「ごんべいの胸は大きくて柔らかいな。…ずっと、触れたいと思っていた」

まるで壊れ物を扱うかの様に、ロウの揉む手つきは優しい。

「ロウ…そんなに私の事を…」
「…ずっと、触れたかった。俺だけのものに貴女がなったらどんなに良いか。ずっと、そう思っていた」

そう言うと、ロウはごんべいに覆い被さりちゅっとキスをする。

「…今が、今迄で一番幸せだ。ごんべい…愛してる」

そう言うと、ロウの唇は唇から首筋へと這わされていく。

「ぁ…ロウ…」

ごんべいは、ロウがいかに自分を想ってくれていたかが分かった。

(ロウとなら…ナナシ家を支えていける…)

ロウの愛撫に身を任せながら、ごんべいはそう考えていた。
そして、直ぐにそんな事も考えられなくなってしまうのであった。
ごんべいの乳房を捏ねる様に揉むロウの手は、段々と動きが激しくなり、思わず大きく反応してしまった。

「あんっ!あっ…ぁん」
「…可愛いな」

大きくなるごんべいの反応に、ロウはもっとその先を聞きたいと思った。
そして、肩からずれ下がり着物が胸の下まで露わにさせると、ロウは乳房の弾力を確かめる様に指を食い込ませていく。

「あっ…あ…っ」

乳房を揉むロウの掌には、硬く存在を強調する突起が当たっていた。
その突起を、人差し指の腹ですっと左右に撫でると、ごんべいの身体がビクンと跳ねる。

「あんっ!やぁ…」
「…ごんべい…この実が良いのか…?」
「やあ…ち、違…っ」

撫でた突起を、今度はくいくいっと乳輪に付く様に左右に倒していく。

「あん!やっ…あん」
「感じるんだろごんべい…?」
「っ…感じ…る…」
「…素直で可愛いな」

家臣の時とは全く違うロウの男の姿に、ごんべいは驚きを感じたが、怖さは全くない。
ロウの舌が、首筋から鎖骨へ、谷間にゆっくりと這わされていく。
そうしながらも、両方の突起はロウの指でコロコロと円を描きながら転がされている。

「ああ…あんっ。ロウ…ふぁ…あ」
「ごんべい…」

ロウの舌が、谷間から左の乳房へと移動していく。
乳輪をひと舐めすると、指で転がされすっかり硬くなりそそり立つ突起を、一気に口の中に含む。

「ああんっ!!」

大きく声を上げるごんべい。
ロウは、口の中に含んだ乳首を、根元から優しく噛んでいく。
そして、右の乳首の根元を親指と人差し指で摘み、コリコリと擦る。

「あぁんっ!あっあっ…」

乳首から伝わる強い快楽に、ごんべいは大きな声で喘いでしまう。
根元から先端まで噛み終わると、ちゅうちゅうと音を立てて吸い、右の乳首は人差し指の腹で大きくコロコロと円を描きながら転がしていく。

「はあんっ!あっああんっ」
「ん、ちゅう。…こんなに硬くして、もっとしてほしいのか…?」

乳首を吸う度に、硬さが増しロウの唇にその硬さが伝わっていく。
限界まで硬くなった乳首を、ちゅうちゅうと再び吸いながらロウは囁く。

「ああんっ、あんっ。して…ほしい…ロウ…っ」
「…本当に、貴女という方は…ッ」

ロウは、両方の乳房の根元を掴み真ん中に引き寄せると、突き出た両方の乳首を同時に口の中に含み、強弱をつけながら吸い始めた。

「はあぁんっ!やぁんっ、ロウやあ…ああんっ!」
「ん、ちゅ…こんなに硬くして…」

吸った乳首を引き抜くと、ピンっと光り宙へとそそり立つ。
それを再び舌先で触れ、コロコロとゆっくりと上下に弾く様に舐め上げる。

「ふああ…っああ…っ」

舐め上げた乳首を、再び口内に入れ強くちゅうぅっと吸い上げていく。

「あああんっ、ああん。イい…っはあん」
「ちゅ…ん、ごんべい…ッ」

今迄聞く事の出来なかった、想い人のごんべいの甘い声に、ロウは既に限界であった。
だが、彼女の一番敏感な所にも触れたい。
ロウは、乳首を両方ちゅぱっと音を立てて引き抜くと、そのままお腹、着物を更にはだけさせ足の付け根まで唇を下ろさせていく。

「やあ…っ!ロウそ、こは…っ!」

驚きのあまり、ごんべいは両脚を閉じようとするが、ロウがそれをさせない。
両手で脚を開かせると顔を埋め、蜜溢れるそこへ舌を差し出す。

「やああっ…」

ビクンと跳ねるごんべい。
そうしている間に、ロウの舌が蜜に触れ、ぴちゃりと水音を立て舐め上げる。

「はああんっ!やああ…はあんっ」
「くちゅ。…ごんべい…舐めても溢れてくる…」
「やあんっ、言…言う、な…ロウ…はあぁん」

次々に溢れ出る蜜を丁寧に舌で取り、それを舐め上げていく。

「はあっあんっ、あんっ」

ロウの舌が動く度、ごんべいは声を上げずにはいられず甘く声を出す。
そして、脚を押さえていた右手も蜜の所に入り、指先でもう一つある突起を押さえる。
そして、ゆっくりと上下になぞり始める。

「ふあぁんっ!はあぁん!」

クリの刺激は、想像以上に強く甘いものであった。
指でひとしきりゆっくりとなぞると、今度は温かい舌をクリに当てると、そのまま指と同じ様に上下に舐め上げていく。

「やああぁんっ、ロウだめぇ!あぁあんっ!」
「ちゅう…ん。…ごんべい…ッ」

舌の動きがゆっくりな動きから段々と早くなり、クリに舌の振動が伝わっていく。
なんとも言えない強い快楽に、ごんべいの身体は震え、頭の中が白くなり始めていた。

「あぁああん!はぁあっん!だ、だめぇ!イくっ!」

ごんべいの限界を感じ、ロウは両手を伸ばし乳首を摘む。
先程よりも、ピンっと乳首は尖っていた。
クリに振動を与えながら、ロウはそのまま唇を使いちゅううっと吸い上げていく。
その途端、ごんべいの腰が浮いていた。

「やあぁんっ!あんっあんっ!イくっ、イっちゃう…はあぁあんっ!!」

ビクビクっと大きくごんべいの身体が震え、乳首も最大限に硬くなってしまった。
ごんべいは快楽の頂点へと、登りつめていた。

「ごんべい…イった様だな」

顔を上げ、ロウはごんべいを優しく見つめる。

「はあ…はあ、ん、ロウ…っ」
「…貴女のイった顔…本当に可愛いな…」

ロウは再び、ごんべいに覆い被さっていく。
自身を、ごんべいのイったそこへと当てると、くるくると動かし蜜を絡めていく。

「あぁ…っ、ロウっ…」
「貴女を俺のものに…ッ」

そう言うと、ロウはごんべいの蜜溢れる入り口に自身をグンッと力を込め中へと挿入させた。

「はああっ!!」
「く…」

熱く濡れたごんべいのそこに、ロウのものが入ると、それを逃すまいと、彼女の膣がそれをきゅぅっと締め付けていく。

「ああんっ、ロウの…硬い…っ」
「ごんべいが可愛いからだ…ッ」

根元までごんべいの中に自身が入ると、ロウは一気に最奥へと自身を突き上げる。

「あぁあんっ!!」

ロウのものが動いた事と突かれた事で、電流の様な快感がごんべいを襲う。
そして、ロウは腰を動かし始め、自身を上下に動かしていく。


「はあぁあん、あんっ、あん」

膣の壁とロウのものが擦れ合い、甘い快楽を引き起こす。

「く…ッ」

ロウの表情も、快感に歪んでいた。
ロウのものの根元が膣の外に出ると、くちゅりという水音が上がる。

「やあぁ…抜、かない…で…ロウっ…」

快楽を引き起こすロウのものが抜かれると思い、ごんべいは彼の肩を掴む。

「…可愛い顔をして…。その顔、俺以外に見せたら…許さない」

頬を赤らめ涙ぐむごんべいを見て、ロウはそう言うと、自身を完全に抜いてしまう。

「あっ、いやぁ…」
「ごんべい…お尻を突き出して後ろを向いて」

抜かれたそこは、蜜を溢れさせヒクヒクと疼いている。
早くまたロウのもので満たしてほしいと、ごんべいは言われた通り後ろを向き、お尻を彼に向ける。
着物からはだけた、丸く形の良いごんべいのお尻を見ながら、ロウはそのお尻を両手で掴む。

「ごんべい…」
「ロウ…っ、はあぁあん!」

待ち望んだロウのものが、今度は後ろからゆっくりと蜜を掻き分け膣の中へと再び入っていく。
その嬉しさから、悦びの声を上げるごんべい。

「く…キツイな…そんなに締め付けて…ッ」

お尻を持ち腰を動かし始めると、ロウの自身がごんべいの膣によってきゅっ、きゅっと動く度に締め付けられていく。

「ああんっ、だっ…てぇ…ロウの…いい…から…っ」
「ごんべい…貴方って方はどうしてそんなに…ッ」

腰の動きを早め、膣の締めつけに負けじと激しく自身をごんべいの最奥へと打ち付けていく。

「はあぁあん、ああんっ」
「可愛い事を言うんだ…く…ッ」
「ああんっ、ああんあんっ」

首を仰け反らせ、ごんべいは快楽に喘ぐ。
好きな人と身体を繋がせる事は、これ程気持ちが良いのか。
ごんべいは自分でもお尻をロウに打ちつけながら、快楽に身を任せていく。

「はあんっあんっ、ロウ…愛してる…貴方、を…っああっ」
「ごんべい…ッ!」

ロウは再び自身を抜くと、ごんべいを仰向けにしまた元の体位で彼女と繋がる。

「はあぁん、ああっあん」
「ごんべい…俺も、貴女を愛してる…二度と、離しはしない…ッ!」

ロウが覆い被さり、ごんべいにキスをする。
その間にも、自身は奥を突き上げ、お互い限界を迎えていく。

「はああんっ、ロウだめぇ!またイっちゃ…あぁあんっ!」
「ごんべい…ッく…ッ!」

ごんべいがビクンビクンと身体を震わせると、ロウのものもドクンと波打ち、彼女の中へ欲望を果たしていく。

「はあ…はあ…っ」

大きな乳房が上下に動き、ごんべいが呼吸を整える。
そんな彼女を、ロウは背中に手を回し抱き締める。

「ごんべいすまない…貴女を抱けた事が嬉しくて…激しくしてしまった…」

触れられたロウの胸が、ドクンドクンと波打っている。
行為の激しさを、彼も感じていた。

「謝るなロウ…私は…ロウに抱かれてとても嬉しいんだ…」
「ごんべい…」

ロウは顔を上げ、ごんべいを見つめる。
そこには、満面の笑みを浮かべる彼女がいた。

「近々…父上に私と其方の事を報告したい。…良いだろか?」
「…勿論。俺の父上にも、きちんと報告したい」
「ああ…二人で二人の父に報告しよう。飛雪や伊雪、ワキにも、な」
「ああ…。ごんべい、必ず、貴方は俺が守る。二度と…こんな傷負わせたりしない」

ロウは、ごんべいの谷間に顔を埋め、痛々しい傷跡を舌で舐め上げていく。

「ぁ…ん」

快楽を知った身体は、ロウの舌に再び反応し始める。

「…愛してる、ごんべい。また貴方に触れたい…」

ロウが傷跡から乳首へと移動し、ちゅうっと音を立てて吸い上げる。

「ああんっ。ロウ…はぁあん」
「ちゅっ、ごんべい…」

二つの影は、再び重なり合っていった。

そして、ナナシ家は、二人の当主に若き夫婦に支えられ、未来永劫長く栄えていったー。


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