弱小湘北野球部



「キャッチャー!? この天才が!?」
「また赤木が怪我したら困るだろーが。オラ、行くぞ」

 三井にずるずると引き摺られていく桜木を、マネージャー二人がすこし呆れた顔で見送る。引き合いに出された赤木は、先日ファーストでの交錯の際に負傷した足のテーピングを一人黙々と巻き直していた。

「フン、少なくともお前より軟弱ではない」
「お兄ちゃん……!」

 晴子が慌てて兄に駆け寄るのと、三井が桜木の首根っこから手を離したのはほぼ同時だった。

 そもそも湘北高校硬式野球部は、これまでに輝かしいと呼べる成績がなかった。それどころか、今年奇跡的に五人の一年生が入ったお陰でギリギリ存続出来ている崖っぷち部活動である。公立高校と私立高校とで顕著にチームの強さの差が開くこのスポーツにおいて、湘北高校硬式野球部はむしろ同好会に近い存在であった。
 そこに突如として入部してきたのが、冒頭の桜木――ではなく、流川楓である。
 地元神奈川の少年野球を続けていれば、いつかはどこかで耳に入る名前だ。赤木も木暮も、最初に彩子から入部届を渡された時は己の耳を疑った。なぜ、あの流川楓が公立の湘北高校に。本人曰く『家が近い』との事だったが、引く手あまただった彼の学力が実にお粗末なものであったという本当の理由を二人が知るのは、もう少し後の話である。
 そしてこのスーパールーキー、とにもかくにも我が強い。
 少ない部員で試合をする以上、出来そうなポジションは練習しておこうというのが代々湘北高校硬式野球部の暗黙のルールだった。それを見事に跳ね除けたのがこの流川である。『ピッチャーしかしない』の一点張りで、協調性の欠片もない。
 そのルーキーに対抗するように現れたもう一人の問題児が、何を隠そう桜木だ。高校野球の花形、四番でピッチャーを目標に掲げてはいるものの、幼少期から抜群のセンスでエースを譲らなかった流川には遠く及ばず、パワーやバットコントロールはまだまだキャプテン赤木の足元にも及ばない。しかし、天性の身体能力や強肩を活かしてサード、最近では外野の守備にも参加していた。

「誰が軟弱だって? アン?」
「おいミッチー、オレは嫌だぞ! あンのクソキツネ野郎とバッテリーを組むなんて!」

 閑話休題。
 副キャプテンの木暮が委員会で遅刻する日に限って、とほとんどの部員が頭を抱える。知らぬ存ぜぬの流川は準備運動中で、そんな彼に宮城が珍しく話し掛けた。君子危うきに近寄らず。面倒事は避けるのがイチバンとばかりにさっさとその場を離れて流川とキャッチボールを始める。
 その一方、赤木に詰め寄る三井と、その三井に詰め寄る桜木。おおよそ百九十センチの男達が睨み合っている様子は、街中ですれ違えば十中八九逃げ出す光景だった。





ここまで書いて力尽きた。
少年野球でエースで四番だった三井寿は、肩を壊して内野に転向します。花道はポテンシャルSSS。宮城リョータくんはショートでもセカンドでも。ヤスと仲良し二遊間してても良。流川は絶対にピッチャーしかしません。意地でもおれが完投。木暮先輩は花道ほどの体格はなくてもユーティリティプレーヤー。赤木はキャッチャー以外考えられない……。


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