はなかご*続2



寝苦しさを感じた。体があまり自由に動かない。まだ眠っていたいのに***は重い目蓋を押し上げた。
寝起きでぼんやりする視界を何度も閉じては開けて。繰り返すと現状がだんだんと飲み込めていく。楼主の腕の中にすっぽりと収まって布団を被っていた。
じんわりと昨日の事を思い出して気持ちが沈んでいく。
楼主さまが私に飽きるか、死に別れるかしないと花街から離れることも、楼主さまから離れることも出来ない。

昨夜投げ捨てられた懐剣が部屋の隅で転がっているのを思い出す。
死ぬのは怖い。それに花街でこんな生き方、きっと贅沢だ。拐われて売られたのに体を売らなくてすむのだから。他の遊女からすると羨ましいと思うだろう。でも夫婦になってもそこに心がないのは辛い。物と所有者。きっと飽きたら捨てられる。惨めだ。
好いた男性でもない相手になにをって自分でも思う。
でも頼れるのは楼主さましかいなくて、少しだけ心を許せると思ったのだ。現状を受け入れて変わるのを待ってくれた。見世の姉達にも話をつけてくれた。化粧だって髪飾りだって着物も揃えてくれた。
なにより生かしてくれた。少し考えればわかる事だ。拐った女が売れなければどんな目に遭うのか。役に立たない物は捨てられる。人拐いにとっては人も物と同じだ。ただ捨て置かれるだけならいいが最悪、殺されていたかもしれない。
楼主さまにとっては商品という物を買っただけで、遊女は客を取るために身綺麗にしておかなければならないからかもしれないが、拐われた時とは違い生きることに関しては不自由はなかった。買われた事で命を救われた。
こんな苦しい中で僅かでも信頼できる人に物として扱われて、飽きたら捨てられるかもしれない。堪らないくらい怖かった。
それならまだお嫁さんという立場ではなく、楼主と遊女の関係の方が割り切っていられたのに。いつか外に戻る事だけを考えていればよかったから。

ぽふっと頭に軽く何かが当たる。
***の思考がぷつりときれた。
それは髪を梳きながら離れていくとまた頭に優しく触れては髪を梳く。何度か繰り返すと頬を滑って顎を掴まれた。ぐっと上向かされて、伏せていた目蓋の裏に影が迫ってくるのを感じてそっと目を開ければ近い距離に銀色の髪と赤い目があった。
眠たいのか不機嫌なのか分からないが、細めた目と目が合う。楼主には躊躇いも何も無く、互いの顔が近づくと口唇が触れた。いつもと違い控えめに舌が口唇をなぞってちゅうと音を立てて口づけられる。
落ちた思考のせいか思わず顔を逸らしていた。咄嗟の行動にすぐに後悔が襲う。
何を言われ何をされるのか想像に難くなく、まぶたを伏せて待った。
なのに暫くしても楼主の口は音を発することはなく、逸らした顔を強引に引き戻すこともしない。ふにっとこめかみに柔く暖かい感覚があった。
口づけられてる。そう気がつくとぎゅうと胸が痛くなる。
なんで、昨日もやっぱり強引だったのに急にこんな触れ方をするのか。怖いのと苦しいのでいっぱいになって抗議するように思わずまぶたを上げれば、やっぱり近くに赤い双眸があった。

「何泣いてんの。まだ今日は何もしてねェよ。それとも朝っぱらからそういう気分?いいよ、お嫁さんに付き合おうか」

顎に添えられていた手が寝間着の襟から侵入してくる。その手が濡れていて、思わず自分の手で目元と頬を触っていた。

「楼主さま、ちがいます、待って、」

なんともいえないべちゃりとした感覚に涙を零していた事に気がつく。触れ方がいつもと違うことに不安がじわりと心に染み込んできて、胸が痛いなんて。
楼主さまにとってのお嫁さんはそういう風に労る様な触れ方をする相手なのだろうか。所有物からお嫁さんに名称が変わっただけだと思っていたのに。

「違わねェよ。昨日入れて祝言後2日はこの宿に泊まる予定で見世空けてきたから、お前がそういう気分になってなくてもこれが夫婦の仕事だよ」
「ふつか…」

ここにふたりきりであと一夜を過ごして淫蕩にふける気なのか。

「遊女屋の楼主がお嫁貰って、何もなく帰ったらみっともなく思われちまう。お前が自分の足で帰れない位が丁度いいだろ」

淫蕩にふけるだけでなく、良くない状況を作ろうとしている事に、無意識に体が逃げようとしていたのか布団を掴んでは体をずらして芋虫のように布団から出ようとした。

「***、逃げるのか」

なのにたった一言。それだけを言われると手が止まる。

「夫婦の初夜も営みも嫌で逃げようとする花嫁は折檻が必要かもな」

楼主は布団から出ると背を向け近くの棚から何かを引っ張り出す。取引のある宿屋だ。楼主にとっては何がどこにあるのか、ここがどういう場所なのかよく知っている。布団に戻ってくる楼主の手には男の大事な部分を模した様な拳大の太さと長さのある鼈甲が握られていた。

「お湯で温めてからにする?それとも自分で大きく口開けて舐めしゃぶってからにする?」
「あ、…っぁ、それ、…嫌ですっ」

逃げたいのに逃げられない。逃げたらきっと捕まえられて無理やりあの張形を押し込まれてしまう。

「だ、だいたい、夫婦の営みは子供をつくるためにするので、それは、…必要ありません」

小さく楼主が笑ったのが視界に入った。

「そうだよな。お前がしたいのは折檻じゃなくて子作りだもんな」

布団にくるまっていた体から容易に布団が剥がされていく。

「何をどこにどうして欲しいか、きちんと俺に教えろ」

完全に素面で甘い恋人の様な雰囲気もない状態で求められた事に軽く思考が止まりそうになる。
これは単なる役割を口にするだけの行為。淫蕩に耽りたいと自分で進んで頼むようなものでは無いからと自分に必死に言い聞かせて震える手を手で押さえ込んで口を開いた。

「わ、わたしの事を…、抱いてください」
「いいけど、足腰立たなくなるまでするよ。明日見世に帰る時はおんぶか抱っこだけどいい?」

何も知らない人からすると、後先考えず淫蕩に耽った夫婦が仲の良さを知らしめるかのような見世への帰り方に、嫌悪感を抱くも嫌だと首を横に振れなかった。嫌がったら折檻になる。
今まで通り気持ちいいことを追うだけの行為の方が受け入れられる。折檻なんて、そこに心がないことか明瞭で苦しいだけだと思うから。
だから静かに頷いた。

「じゃあ、脱げ」

ひくり、喉が鳴った。
楼主の命令に躾をされた体が嫌だと思いながらも勝手に動く。言われた通りにしないと酷くされるから。

「脱いだらおいで」

寝間着を肩から落とそうとするも、怖くなって手が止まる。自分から脱ぐなんて初めてだ。
そんな***に皮肉げに楼主は笑う。

「俺の嫁になりたくないなら、これ。自分で入れるか」

ごろりと***の目の前に差し出されたのは別甲の張形で息を飲む。

「!…いやです」
「嫌なの?これずっと入れとけば拒絶の意味にはなるからお前の意思は貫けると思うけど。まあでも俺が使いたい時は抜いてから突っ込むけどな」

体が震える。襟を掴んだまま手が動かなかった。
酷い。優しく触れてみたり、物のように扱ってみたり。それに振り回されて辛くなってくる。
こんなふうに振り回されて苦しい気持ちに苛まれるなら、楼主さまのお嫁になりたくない。でも痛いのも嫌。気持ちの行き場がなくて、何とか止まった手を動かして肩から寝間着を落とした。
下着も外すと楼主さまの側までいって座った。
お客様に話しかけ、上品に、でも艶やかに誘うようにしていた姉様達を思い出して、寝間着を着たままの楼主の腕に触れてみる。そっと肌をなぞり絡めようとしたが楼主と腕に引かれて、かぶり。向かい合うように抱きしめられると首に噛み付かれた。
背中に腕が周り逃げようにも上手くいかずに、噛まれたところがちりっと痛む。ちゅぅと吸われていた。

「…んっ、…、お前、そーいうの要らないから」

要らない。***が今した行為はお客を酔わせるための手練手管だ。

「それとも何、俺のお嫁さんは旦那の気を引きたいの?」

もう既に夫婦で心の伴わない俺達には必要のない行為だと楼主は言いたかったのだが、***の中には全く違った風に入っていく。
悲しくなった。悲しくて悲しくて堪らなくなった。
まるで私が楼主様に気があるみたいな言い方。見透かされた気がした。
きっと情のようなちっちゃいもの。救われた感謝の気持ち。全部が少しづつ積み重なって、信頼になって心に居座っている。そして、少しだけ気を引きたい。私を物じゃなくて一人の人間として見てほしい。そんな気持ちを言い当てられて、笑われたような気がした。

ぼろり、堪えていた涙が零れ落ちる。
言葉にならなかった。ぼたぼたと涙が勝手に出てきて二人の間の褥に染み込んでいく。

「り…えん、して…ください」

言葉にできたのはそれだけだった。
耐えられないと思った。いつか飽きられるかもしれない。捨てられるかもしれない。それが怖かったが、それ以上に所有物でしかない自分が楼主さまの気を引こうとしていたことに気がついて、これから先楼主さまのお嫁として隣にいることのあまりの惨めさに耐えられないと。

「何言ってんの。誰と誰が離縁すんの」

楼主の手に肩を押されて褥に押付けられる。

「前に言ったよな。お前は俺が金で買ったものだ。自由にできるのは俺だけで、そこにはお前の意思は関係ない」

怒気を孕んだ声から逃げるように耳を塞ぐ。

「りえん、して、…!おねがい…」
「なに、聞こえねェな。もう一回躾直さねェとダメか」
「…!や、楼主さま…、!」

片足首を掴まれて大きく足を開かされる。

「だって嫌なんだろ、俺と夫婦になんの」

転がったままの鼈甲の張形を手にすると開かされた足の中心に押し付けられる。冷たい無機物が女芯を擦った。

「どうする、濡れてねェけど入れるか、それとも『離縁』なんて二度と口にしないって誓えるか」

苦しい選択を迫られて呼吸が浅くなる。
すごく怒ってる。なんで?
そう大きくもない金額で買った女なんて手元に置いておいて。それも特別に綺麗なわけでもない。秀でた才能もない。ただ花街の外で育っただけの女というだけなのに。

「どうして、どうして私なの……、姉様たち、みんな綺麗で賢くて、私とは比べ物にならないくらい素敵なひとたちなのに」

少し前だ。お座敷をまた任せて貰えるようになった時から姉達と他愛のない話をして、お給金の殆どない***にお菓子を分けてくれたりしてくれた。そしてお座敷に上がればたくさんの顔を見せてお客さんを楽しませるプロばかり。

「言ったはずだ。お前がお前だったからって」

どうしても理解に苦しむ言葉だった。

「それより、どうする」

すり付けられていた張形が角度をつけて押し当てられて先がぐぷりと入り込む。

「っ、!…やめてぇ」

全く濡れていないそこが、つやりとした鼈甲に引っかかれて痛みが走る。

「じゃあさっきの言葉を撤回しろ」

ぎゅうと唇を噛んで頭を振った。

「拒んでも俺はお前を手放す気はない。どうする。撤回するか、それとも罰を受けるか」

押し付けられた張形がぐるりと捻りながら外へ出る。そうしてまた押し当てられて軽く入れられ同じことを繰り返された。

「あ、あぁっ、…ひ、やだ!あっ」

褥を引っ掻いて上に逃げようとするも片足首を掴まれたままでは逃げようもない。
抜けた張形が角度を変えて少し上を探る。くにゅりと女芯を押し潰して上下に動かされた。

「こっちのが今は気持ちいかもな。入んねェからちゃんと濡らせ」

手ではなく無機質な物で弄ばれる。
そこに情がないのが垣間見えた気がして堪らなく辛かった。

「罰は、受けますっ、でもそれは嫌!」

思わず手で払い除けていた。
張形はことりと音を立てて布団の上に落ちる。

「お前さ、罰は嫌な事じゃねェと意味ねーだろ。それにそんな悪くなさそうだけど」

楼主の指が秘裂を数度なぞると、ぐうっと侵入してくる。

「ああ、っは…、あぁっ」
「なか濡れてきてる。知ってるか、張形はな、奥の開発をするためにあるんだ。最初はこっちが気持ちいいが、本当に気持ちいいのは奥」

楼主の長い指が奥を探るのと同時に女芯を親指の腹で転がした。内側と外側から気持ちのいいところを押されてぐじゅりと濡れてくる感覚に体が震えた。
やだ、濡れたらあれを入れられる。

「いや!やだ!絶対やだ!」

みっともなく子供みたいに喚いてしまう。
それに楼主は舌打ちを零すと***の体をうつ伏せにさせて両手を背でまとめると膝を立てさせた。
腕が自由にならずに顔が褥に押し付けられた上に、上から覆いかぶさられて上手く動けない。
冷たい感覚が秘裂に押し付けられた。

「やっ!…楼主さまっ!おねがい、します」
「嫌ならどうするか教えたよ、俺は」

秘裂が押し広げられて冷たい物が入ってくる。
所有物としてではない、人として見られたい。これ以上惨めになりたくない。

「楼主さまがいい…っ、」

思わず口を突いて出た言葉だった。
秘裂を進む冷たい感覚がピタリと止まる。

「は、っ…なんだそれ。どこでそんな手管覚えてきた。お前の大っ嫌いな男の方がいいくらいこれ嫌なの」

こつんと楼主の指が張形を軽く叩いてきてその振動が伝わると背が勝手に跳ねた。

「いや、ですっ…」
「…そう、」

はぁ、っと楼主の大きく息を吐く音が耳元に落ちると同時に秘裂に埋まりかけた張形が抜けていく。

「いいよ、聞いてやる。その代わり、ここに何を入れて欲しいのかちゃんとおねだりして。出来なきゃ張形入れて奥突いてやるから」

背で纏められていた腕が開放されると、股下から秘所に持っていかれる。

「ほらココ、指で広げろ。俺がお前のここに入れたくなるようなくらい卑猥なおねだりな」

ぴとりと押し付けられた指が触れる秘所はすっかり濡れていて思わず離しそうになる。

「何躊躇ってんの。昨夜は自分で濡らすために指入れて手淫に耽ってただろう」

かぁっと体の熱が上がった。

「それは、っ楼主さまが」
「そうだよ、だから今度もやれって言ってんの。手伝ってやろうか。ほら」

ぬるりと滑る秘裂の中心に楼主の指が宛てがわれる。そのままぐっと人差し指と中指に力が入るとくちゅりと音を立てて左右に押し拡げられた。

「ひっ、!」
「こうやって、入れて欲しいところ教えろ」

再び手を押し拡げられた秘裂に導かれると震える指で言われたようにした。
普段は包み隠された場所が空気に触れてひやりとする。

「もっと拡げろ」

なのに、楼主の言葉は非情だった。
ただでさえお尻を高く上げて恥ずかしい部分を見られている。さらに秘された場所も無理やり晒させられて羞恥が積もっていく。

「いいのか」

するりと腿に冷たい物が擦り付けられる。
それが何か分かって秘裂を開く指を動かした。

「そう、いい子。あとは何を入れて欲しいのかちゃんと言えるよな」

顔を押し付けた褥はもうぐしゃぐしゃだった。
恥ずかしくてどうにかなりそうで、でも逃げられなくて、どうすることも出来なくてかわりに気持ちが全て涙になって零れ落ちる。

「あ、ぅ、…」

しゃっくり上げて上手く言葉が出てこない。
必死に息を整えている間だった。

「っあ、…ひぃ!」

指で開いて無防備になった粘膜をぬるりとした温い感覚が撫でた。じゅるじゅると這っていく感覚にそれが舌だと悟る。
尖らせた舌に膨らんだ女芯をぐりゅうっと押し舐められる。

「〜〜っ、っうああっ、ああっ、だめぇ、ろうしゅさまあっ、、!」

ぬりゅぬりゅと唾液を塗りつけられて苛まれると、とぷりとあふれる蜜をじゅるりと吸われる。

「ひ、っ、あああっ、あ、ぁ、やぁぁ!ひぃぃ、」

立てた足が震えて秘所を露わにする指を離しそうになるのを腕を掴まれて押しとどめられた。

「…は、っ、いいの、やめたらこっち突っ込むよ」

喋るために一旦離された舌に、一気に言葉を押し出す。

「う、ぅ…楼主さまの、いれてください!」

べちんっ!
おしりを軽く叩かれる。

「やり直し。誰がそんなヤケクソで色気のねェ催促しろっつったよ。それともなにか、えろい気分にまだなれてねェの?」

気がついたら楼主は***の股下に上を向いて頭を入れていた。顔を上げれば視界は全て***の秘された場所。
楼主からは秘裂を広げられた内側に顔を出す赤く色付いた花芽のような女芯がよく見えた。
高く上がっていた腰を引き寄せるように両腿を掴んで腰を下ろさせると口唇が触れるくらいで止める。

「今からお前が無防備に晒してるここ、吸ってやるから喜べ」

つうと指が開かれた秘裂をなぞる。女芯までたどり着くと人差し指と親指でぷにっと膨れたそれを摘んだ。
ぎくりと***の腰が固まる。

「ぁ、…ぁ、」

強弱をつけて過敏なそこをきゅむっと揉むように摘まれて息が詰まる。と再び舌が触れた。指とは違うどろりとした唾液がぴちゃぴちゃと音を立てて女芯を潰しながら転がされ飴のように舐められた。

「ふっ、あ…ぁあ、ああっ、」

緩やかに、だがじわじわと追い詰めるように繰り返される。そして舌の上でコロりと転がしていた女芯にちゅうっと吸い付く。ちゅっちゅっ、ちゅぽっ。
はれたそこをすぼめた唇で扱くように吸って口の中で舐めていたぶる。
勝手に腰が揺れた。すぎる快感に逃げようとするも太腿に楼主の指がくい込み上手くいかない。

「あああっ、だえ、っ、とけちゃ、あつくてとけちゃぁあぁ…!」

楼主の熱い口内と舌に下半身が溶かされるような感覚に陥る。びりびりと甘い痺れで腰から足の指先までが自由にならない。
突き出した腰だけがびくびくと達する度に跳ねた。
溢れた蜜が楼主の口元を濡らしてどろりと褥まで垂れていく。

「えろい気分にはなれたみてェだけど、なにひとりで気持ちよくなってんだ」

ぴとりと冷たい張形が濡れた秘裂に押し付けられる。
何度も絶頂して霞む思考をなんとか手繰り寄せると、できるだけ卑猥な言葉を選んだ。

「あ、っ、あ、あぁ、わたしの、どろどろになったここに、ろうしゅ、さまの、いれてくださっ」

なのに今度は弄られすぎて真っ赤に腫れた女芯を指で弾かれ指の腹で挟むように擦られる。

「ひいっっ!!ああっ、!」
「抽象的すぎんだよ、どこに何入れんの?」

泣き所を攻められると何とか開放されたい一心で口が動く。

「っ、…ぅ、わ、たしのほとに、楼主さまの、魔羅を…いれてください」
「もっと上手に誘えって言ってんだろ。まだ気分が乗らなくて足んねーなら久しぶりにこれ使うか」

***の足の下で楼主が何かを取り出すと、かさりと音を立てる。紙に包まれた粉がしゃらしゃらと振られて音を立てた。

全身から血の気が引くのを感じた。なのに薬を使われた時の気持ちよさは体に染み付いていてお腹の奥は勝手にきゅうと切なくなる。
嫌なのに、薬を使えば全て薬のせいにできる。そうすれば下手な誘い方も少しは楼主の要求するものになるのかもしれない。そんなふうに思うと逃げそうになる体を押しとどめる。
かさり。包を開く音がして目をつぶった。

「何もわかんなくなるのは楽しくねーから、ちょっとだけな」

ざりっ。粉がついた指が腫れた女芯を潰してくる。蜜が絡んですぐに溶けるとぬるぬると指で摘ままれてびりっとした強い電気のような痺れを感じる。今度は秘裂の奥に塗り込むように薬を纏った指が数度行き来した。じわりじわりと侵食してくる熱と強い痺れに、敷布をきつく握る。

「ぁ、…っ、ぅ、はっ、あぁんっ」

じりじりと焼け付くように疼いて堪らない。

「ははっ、すっげー垂れてきてる。指2本じゃ足りねェんだろ」

薬を塗りつける指は緩慢で指の腹がとろりと内側を撫でるだけ。

「太くてエラの張ったもので抉られてェんだろ。こんな風に」

中で指が曲げられると恥骨の裏、ざりとした女の感じる部分をぐじゅりと引っかかれる。

「ひぁああんっ、!」

強い刺激にびくりと腰が跳ねて達した。
びくびくと締め付ける内側を楼主は曲げた指で蹂躙する。

「っ、ああっ、やぁああん、!いっ、た!いったぁあ!、ひっ、やめぇてぇ、ぇああっん!」

秘裂を顕にする手が震えてもうほとんど添えるだけになる。それを楼主は薬のせいだと思うと咎めることはしなかった。

「ここだけじゃなくて奥、何で突かれてェ?」

ぷちゅくちゅ、ぐちゅっ…
曲げた指を元に戻してぬるぬるの秘裂の奥を宥めるように撫でる。

「あ、っ…、ろ、しゅさまのおっきくて太いの…っ、わたしの、ほとにいれてください」
「入れるだけなら張形でもいいだろう」
「あ、っ、はぁ、あ、いっぱい…おく、突いて、してっ、んん」
「お前の奥、突くだけなら張形でもできんだよ」

宥めるようにゆっくり動かしていた指がぐるりと回されて抜けていく。
楼主は***の股下から顔を上げて背中からまた覆い被さると耳元でぼそりと言葉を落とした。


遊女じゃなくなってから、忙しそうにしていた楼主とは暫くこういうことはしてこなかった。だから避妊の薬を飲んでいないのは楼主に囚われたあの時と、昨夜だけ。
普通の夫婦なら当たり前の行為だろう。でも、***はまだ楼主から逃げたいと思っている。

「言うの、言わねーの」

逃げる道筋を自ら消してしまうその言葉は、張形に犯される事とを頭の中で天秤にかけると僅差で落ちた。

「ろうしゅさまの、おっきくて太いので、わたしのぐちゃぐちゃになったほとを突いて、いっぱい中にびゅーびゅーって、だしてください」

例え楼主さまに気持ちがなくても、物としてしか見られていなくても、自ら物になる事を選ぶことはできなかった。

「……いいよ、お前の胎の中にたくさん出してやる」

覆い被さったままあつい熱が押し付けられると秘裂を行き来する。とろりと蜜が溢れて楼主の熱に絡むとにゅちにゅちっと粘っこい音を立てる。と、擦り上げる角度を変えて秘裂に先端がはまると押し広げて入ってくる。それに押し出されるようにとろりと溢れる蜜が零れ落ちた。

「ああ、あ、っ〜〜!」

あつい。入れられただけなのに薬の効果も相まってお腹のなかが熱くてたまらない。

「だめぇ、ろぅしゅさま、…っうごくのまって」

体が勝手に逃げそうになるのを、覆いかぶさった楼主の腕に抱き止められて押しとどめられる。

「じゅるじゅるに濡らしといて何言ってんの。俺にとっちゃ拷問だ…っ」

ずるりと熱が掻き出されると、ぱちゅんっと腰を押し付けられた。

「あ゛あぁっ、!!〜〜っ」

体の奥を抉られる感覚にびくりと腰が跳ねて簡単に上り詰める。じんっとした痺れが脳天を貫いていく。
そんな***を気に止めることも無く楼主は体を起こすと突き出された腰を掴んで何度も何度も腰を叩きつけた。
ぶちゅ、ぐち、と音を立てて泥濘を熱が行き来しては攻め立ててくる。

「あ゛っ、〜〜、っああ、ぃあぁっ、やめ、あああ」

頭の芯が痺れて達したまま戻って来れない。息をするのも苦しくて、褥に頬を押し付けて耐えた。

「お前が望んだんだ。俺ので胎の中掻き回されて、突かれたかったんだろう。望み通りにしてやってんだ、喜べ」

とちゅとちゅ、ばちゅっ!ぐちゅっ──
繰り返し押し寄せる絶頂に楼主の熱で抉られ解された奥がとろりと口を緩ませる。

「〜〜〜っあああっ、ああ」

だめ、そこはだめなところ。
なのに楼主の熱はそこをこじ開けるように叩いて熱をごちゅりと押し付けられると勢いよく欲を吐き出した。

「あ゛あああっ、!あっ、〜〜っ!ひぃ、あっ、ああ」

どろりとした欲を出し切るように何度も感じる部分を緩く突かれると甘えるように、強請るように締め付けてしまう。
びゅっ、びゅくりと残りを出し切るとずるりと抜けていく。それにすらひくりと腰を揺らして反応をしてしまった。
楼主は煩わしそうに髪をかきあげると、ぽたぽたと***の背中に汗が落ちる。

「あっ、ろぅしゅ、さま…、」

上半身をべたりと褥におしつけてお尻を上げていた格好からころりと体を反転させられ上向かされる。反動でどろりと出されたものが垂れてきてお尻を伝う。

「…んっ、ちゅっ、はぁ」

じゅるっ、息も絶え絶えな口を塞がれて楼主の寝間着を掴んで耐えた。

「もっと?、いいよ」

それを勝手にお強請りと捉えられ力無く首を横に振る。なのに足を掴まれてぬぶっとまた入ってくる熱。

「ちがぅぅ、っ、あ…あ、あ〜っ!、むり、あっ…あ…こわれちゃ」
「大丈夫、こんなんで壊れねェから」

くすりが染み込んだ下半身がただでさえ疼いているのに、楼主の熱に掻き回されて欲を吐き出されて燃えるようにあつい。その反面、頭の芯はいつもより少ない薬の量のせいでしっかりしていた。
もっと、もっと楼主さまで体の奥を満たしてもらいたい。疼いてたまらないところに触れてもらいたい。きもちよくなりたい。いっぱいして欲しい。
薬を使われると何も分からなくなって思考をすべて投げ捨ててしまうし、薬を使わない普段は「して欲しい」「もっと」なんて淫らなことはなかなか考えない。普段と違う思考に頭がくらくらする。
腰を叩きつけられて淫らな水音が鳴る度に体を揺さぶられて、褥の上に投げ出した手が視界の端に映ってはじわりと歪んだ。

「やぁっ、あ、あっ、ろぅしゅさま、やだっ、!ああっ」

乳房を捕まれふにゅりと掴まれ円をかくように揉まれ、指が先端を引っ掻くように弄られる。きゅうと摘ままれ強すぎる快楽にぱちりと目の前が弾けてちかちかしだす。
これだめ、強いの来ちゃう。

「あ、ぁ、」
「***」

咎めるように名前を呼ばれると手を伸ばして楼主の首に縋り付いてしまう。

「あっ、い…く、いっちゃう!つよいの、きちゃ、〜〜っ!あ、は、…っ」
「好きなだけいけ」
「〜〜っ」

息が詰まって目の前が真っ白になって体がつっぱる。今までで一番の痺れが体の中心を刺すように走ると弾けた。
勝手にひくひくと腰が跳ねるのを楼主の手が捕まえてきて、きゅうと狭まる肉壁を無理やり押し進んで抉っていく。強く楼主の熱を感じるとまた波が押し寄せてきて全く引かない。

「いやあっ、!、ああっ、あ、っ…!」

ぐじゅんっ、じゅぶっ、ぬじゅっ、
卑猥な水音が頭の中まで犯していく。

「すっげェえろい音。きもちい?」
「きもち、ろぅ、しゅさま…あ…、も、やだ、!、きもちいの、や、ぁっ」

頭の中と体の欲することが違って言葉がめちゃくちゃになる。

「気持ちいいんだろ、だったらなんて言うんだっけ」
「っ、…もっとして、ください」

なのに反射的に楼主の求めている言葉を痺れる頭で必死に返した。

「もっとね、すきは?ここ、扱かれるの好きだろう」
「あ゛ああっ、いっ、ゃ!あ…す、すきっ、すきぃ!」

女芯を指の腹で掴まれると嫌と答えそうになるも、ぎゅうと押し潰すように挟まれてぬりゅりと摩擦されびりりとした甘い痺れが体を満たすと答えはひとつしかなかった。

「っ、ああああ!!」

勢いよく楼主の熱が迸る。擦られすぎてぽてりと腫れてしまった肉壺に叩きつけられる熱にすら感じてしまう。奥の子宮の入口は収縮する度にかけられた欲をこくりと飲み干していく。
妊娠しちゃう。自分で選んだことなのに逃げる道が消えた事に心の奥は絶望で黒く塗りつぶされていく。
これから先どうしよう。どう生きたらいいのか。そんな風に考えながらまだ咥えた熱が収まらず緩く突かれ始めるのに諦めて身を任せた。


* * *


疲れて眠る***を横に寝かせ、窓から見える花街を見ていた。
特に何という訳では無い。***が眠っていて手持ち無沙汰だから。日も落ちて眩しいくらいの灯りに照らされ通りを歩く何組かの男女の姿が目に入る。
ひと組は見知った顔だった。他所の見世の楼主と、花街の外からやってきた商家の娘。2人は夫婦だ。娘の方はしゃきしゃきとしていて実家が商家だったこともあり、よく見世を切り盛りをしている女将だとは聞いていた。
楼主に嫁ぐなんざ下の下の下。女を売る仕事で食べていくなんて世間の目は厳しい。なのにその女はよく笑った。男をまっすぐに見て。それを男は嬉しそうに見つめている。
楼主は2人から、ふいと顔を逸らした。

楽器の音と賑やかな話し声が聞こえてくる。花街の夜の時間が始まった。
楼主は寝たままの***の頬を軽く叩くと起こそうとする。と既に起きていたのか、虚ろ気な目が覗いていた。

「お腹減ってないか。朝も昼も食べてねェし夜は食べねェとな」

虚ろ気な目が覚醒したように開かれると布団を頭まで掛けて拒絶を示した。

「……いらない、です」

いらない。その言葉の裏に隠れた意味がすぐに分かってため息をついた。

「食べないと死ぬぞ。それともそうしたいからするのか」

布団に籠った***からは反応は無い。

「喉を懐剣で突くより楽だと思ってんの?」

布団が揺れた。

「それとも孕んでたらって考えて、腹の子流す気か」

がばりと布団がめくれ上がって***が起き上がった。

「ちが、そんなつもり」
「そうだよな、お前が望んだんだ。責任持つだろ」

子供が欲しいと思ったことはない。
そもそも家族なんて持つ気はなかった。
家族がどんなものなのかも分からないし、1人の女に執着することのなかった今までからは想像もつかなかったから。
***を繋ぎ止めるためには必要なことだが、今でも欲しいという気持ちはなかった。だから***の意識がない時に薬を飲ませている。

座ったまま自分のお腹を見て顔を歪めると諦めたように布団から出ようと***が立った。が、なにかに気がついたように顔を赤らめると蹲る。
その足首には白いどろりとしたものが垂れていた。
今までは意識の無い間に体を清めていたが今日はそうしなかった。妊娠しているかもしれない。そういう疑念を引きずらせるために。
ぎゅうと寝間着を掴んで真っ赤になる***の体を抱き上げる。

「お湯沸いてるから入るか」

抱き上げて近づく顔に、赤い顔を覗かれるのを嫌ったのか袖で視線を遮る***が頷いたのを感じた。
黒い髪から覗く耳がすごく赤い。それに誘われるようにそっと唇を寄せると耳朶に触れた。




♭2024/04/10(水)


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