はなかご*4



お祭りだった。年に数度ある花街のお祭り。それぞれの見世の人気の花魁が出し物をする。通りには出店が並びいい香りが***のいる部屋まで届いてきた。それで目が覚めた。
***には関係の無いこと。今日は部屋を出るなと言われていた。
格子窓から見える通りには綺麗に着飾った女や、それを見に来た見物客が見える。
すっかり楼主の部屋の一角の小部屋が***の部屋になり、私物もここにある。だが暇を潰すのには足りない。からりと楼主の部屋とを遮る襖を開けばそこには誰もいない。楼主が居ないことをいいことに、***は本棚を漁った。
遣り手婆から仕事中に少しは教養をつけろと口を酸っぱくして言われた。楼主も好きにしたらいいと言ってここの部屋の本は好きに読んでいいことになっている。
男女の交わり。お客の気の引き方。お座敷のお作法。最低限の遊女のマナーがまとめられた本が並べられている。多いのは春本、楼主の趣味なのだろうか、怖くてそれらは目を通せなかった。
数冊そこから抜き取ると部屋へと持っていって読み耽った。

この楼閣はここら一帯の花街の中でも格式の高い見世。引手茶屋を通して遊女が首を縦に降らなければ客は床を共にできないそんな場所。そういう見世は禿から育てて教養のある女性を太夫、天神として売りに出す。
色んな本を読んでいるとそんなことが書かれているのに気がついた。
***は朝方のことを思い出す。朝食の給仕をしていたらお祭りの為にといつもとは違った化粧をして、まだ自分のことを知らない人達に知らしめるように綺麗であろうとする女たちに目を奪われた。それはただ男と閨を共にするだけではない、仕事に矜恃を持った姿。それは遊女という言葉でひと括りにして蔑んでいいものでは無い気がした。
なのに、なんで楼主さまはこんな年増でなんの教養もない私を女衒から買ったんだろうか。
疑問が頭をよぎる。
買われてふた月は過ぎようとしている。
最低限のお座敷もできない使えない女は、取っかえ引っ変え休む間もなく男を受け入れる長屋の切見世に移される。
仕事中に通りすがった女にぼそりと耳打ちされた言葉が蘇る。
あんな辛い行為を休む間もなく色んな男にされる。そう思うと苦しくなって気持ち悪くなって、堪らなくなる。
なのに、楼主にされたことを思い出せば体の奥がきゅうと切なくなって思わず体を縮こまらせた。

「〜〜っ!」

ここの所おかしい。初めての時はクスリのせいだと思っていたが、最近はクスリを使われていない。
楼主の指が敏感なところを弾いて擦る感覚。お腹の奥まで満たされる熱の感覚。思い出してしまうととろりと秘所が濡れた。
これでは、ふしだらな女ではないか。こんなことを知られたら切見世に移されてしまうかもしれない。上品で教養も高く綺麗な花魁になるなんて到底無理な話だ。
だから何ひとつこなせない私を楼主さまはいつまで手元に置いておく気だろうかと不安になる。いつ切見世に移されるのだろうか。
そう思うと本の頁をめくる手を止めることは出来なかった。


「楼主さま、お願いがあります」
「…なに?」

仕事をしながらちらりと視線を一瞬こちらに寄越すも、すぐにそれは文机の上の紙に戻される。

「私一人じゃお座敷のこと、ちゃんと学べなくて。もう一度ちゃんと学ばせてください」

一度姉の遊女に突っ返された身だ。この見世の遊女は誰もお座敷に置いてくれない気がした。それでも、自分が変わらなければ状況も変わらない。

紙の上を走っていた筆が置かれる。

「いいよ。俺から女達には言ってやる。その代わり上手くやれなかったら分かってるだろうな」

ぞくりとした。上手くやれなかったら切見世に移される。だってお座敷を務められない遊女はただ体を男に任せることしか仕事がない。

「…はい、ありがとうございます」




ここの所***は仕事の合間にせっせと本を読んでは真剣に遊女の仕事に向き合うようになっていた。買ったからには働いてもらわなければ困る。今***の生活を繋いでいるのは俺だ。身一つで売られて、日用品、身に纏う着物。それは積み重なって***の借金になっている。買った金額と似たようなもので、借金は倍になっているかもしれない。
到底年季があけるのには時間がかかる。簡単に借金は返してしまえないだろう。
なのに頑張ろうとするその姿がいじらしくてたまらない。
俺を見る目に恨みより戸惑いが増えたのは気になるところだが、変わる努力をすることは悪いことでは無い。

昼の時間は芸事を姉から学び、夜はお座敷に上がる。必死に本から身につけた教養で、客の話し相手になり、お酒を注いで笑う。女達も変わった***を受け入れ殊の外上手くいっているようだった。

隣の小部屋から***の寝息が聞こえてくる。近頃は手隙の時間が重ならず、***の体にに触れていない。楼主も男だ。着物の下で張り詰めたものに溜め息をつく。
商品に手をつけたことはない。だが***は別だ。まだ商品ではない。俺だけの所有物。
楼主としては良くない考え方だと思う。だが何でこんな風に考えるのか、その答えが分からなくて確かめるように遮られた襖を開けていた。

疲れ切っていたのか落とされていない鮮やかな化粧が顔を彩る。結われた髪には座敷に上がるために楼主が買い与えた華やかな簪と櫛。着物も上物を買い与えた。全て***の借金だが。
買い与えたのは俺なのに、***は別の男の為にそれらを使って着飾る。酒を注ぐのも、笑いかけるのも、教養を身につけたのも、全て別の男のため。
そう思うとたまらなく吐き気がした。
寝たままの髪から櫛と簪を引き抜く。結われた髪を外して化粧を落とす。疲れ切っているのかあまり反応はなく、目を覚ますこともない。
帯を外して着物を全て脱がせると畳んで部屋の隅に押しやる。

「…***」

頬を軽く叩くも目を覚ます気配はない。

「お前はどうして急に変わる気になった」

恨めしそうに見つめてくる目が減った。戸惑いや、困惑それから、笑顔が増えた。ついこないだ***に感謝をされた時は楼主も困惑した。
遊女として必死にひとり立ちしようとしている。俺の手から離れようとしている。そうなるようにと仕向けていたはずなのに、たまらなく嫌だ。そんな感情が頭をもたげる。

意識のない足を開かせ秘された場所へと顔を埋めた。
下から上へ舌を這わせて女芯を舐め上げ口に含む。ひくりと腰が震えたが抑え込むとそこを舐めしゃぶった。
とろりと垂れてくる蜜を舌ですくって、ぷくりとたちあがってきた女芯に撫でつける。数度繰り返すととろとろになった入口に尖らせた舌を差し込んだ。じゅぶじゅぶと音を立ててぬめった粘膜をする。女芯に指を伸ばしてぬるぬるのそこを指でつまんでは爪を軽く立てて引っ掻く。きゅうと中が締まって舌を締め付けてくるのにずるりと引き抜いた。代わりに指を入れて中の具合を確かめる。2本の指を容易に飲み込んだそこは、ぐうと奥まで指を押し込むと蜜を溢れさせる。くっと指を曲げて指の腹で掻くように中で動かした。眠っているはずなのにぴくりと腰が跳ねる。それが合図のような気がして

「もう、入れていい?」

返事がないことが分かっていながら問いかけると、着物を寛げ取り出した熱を擦り付ける。

ここを他の男が舐めしゃぶって***が嬌声をあげて、あられもなく足を開いて男を誘う。いやだ。それはあってはならない。商品なのに、なんでこんな気持ちを抱く。まだ俺の所有物だから?
違う俺がこいつの花を散らしたから。他の男の手垢がつくのは吐き気がするほどに嫌だと思った。
考えがまとまらない。なんで、吐き気がするほどに嫌なのか分からない。

「…っ、はぁ、***」

ぐぅっ、と入り口を硬くなった先で押し広げてゆっくりと奥に進む。
目を覚ましていつも通りにいやいやされるともっと不快感が増す気がした。だから起こさないようにゆっくりと。こつりと***の奥まで行き当たる。
***が身動ぎをする。触ってもないのに胸の突起が硬くたちあがっていた。そこに誘われるように指がふわりと沈み込む柔いそこを掴むと顔を寄せて舐めて吸う。ぎゅう、とうちが、舌の動きに合わせて揉み込むように動く。

「ぅ、ん…っ……」

小さく零れる声に顔を見れば悩ましげな眉が、伏せられたまつ毛が震えてぽろりと涙を零した。
この顔を他の男が見る。ああ、吐き気がする。
そう思ったら止まらなかった。
足を抱えて奥まで入った熱を引き抜いて突き入れた。

「〜〜っ!!」

声を詰まらせた喉が反る。体が衝撃にびくりと跳ねた。
何をされたのか分からない。それでも開いた目が楼主を捉えるといつも通り怯えの色を見せた。
それに構うことなく奥を、粘膜を擦りあげる。

「ひっ…!や、あっ、ああ…っ!、やめっ…ああっ」

ぐちゅぐちゅと卑猥な水音と肌がぶつかる音が響く。
口では否定するのに、俺が躾けた体は、男の欲を必死に搾り取るように収縮する。
今ならまだ俺しか知らない。他の男に使わせたくない。他の男の欲を咥え込ませたくない。

「***、お前をここの遊女にするのはやっぱり止めだ」
「や、いやっ、……いやだっ!いやァ!」

うちを擦られて突かれるのが嫌なのか、そう思っていたが、***の瞳の奥が恐怖の色に変わる。

「ごめんなさ、ちゃんと、ちゃんとやるからっ!だからこの見世の遊女でいさせて…っ」

ここの遊女でいたい。
***の言葉に不快感が増した。
俺は辞めさせたいのに。

「おまえに、できんのかよ。高尚な遊女の仕事がお前にできんの。いつもいやいやばっか言ってるお前にできんの」
「あぐっ…!まっ、て…くるしっ」
「できねェじゃん、お前知ってる?俺の全部ココに咥え込んだことないの。最後まで入れたことないの」

奥まで押付けて何度も先っぽで子宮の入り口を叩いたことはある。でも、一度も根元まで入れたことは無い。

「ああ、ああっ…っ、まって!入らなっ、ああっ」

強ばりからかきつくなるうちを解すように何度か擦り付けながら、段々と挿入を深くしていく。暴れて逃げる腰を引き寄せる。

「どうする、最後まで入れる?それとも俺の言うこと聞く?」

言葉が恐怖から出てこないのか、涙を溢れさせながらずっといやいやと首を横に振る。

「どっちの嫌?言わねーと良い方に勝手に解釈するけど」
「あっ、…まって、いや…ここの、ゆ、遊女でいたい」

***の言葉にとてつもない不快感がどろりと、心の内を汚していく。
敗れてしまった袋の中から溢れる水のように止まらない。

「じゃあ、お前のココ壊れちまうかもだけどいい?ああ、壊れちまったら結局遊女とか出来ねェな。がばがばのここに男咥え込むとか無理だろ」
「ひ…っ、」

わざと***が怯える言葉を使って今からすることを伝えた。その瞳が怯えと恐怖の色を強めるのに薄く笑う。
震える体を抱き起こすとぐうと、上から力を込める。

「ちゃんと足開け、力入れんな」
「やっ、やだァ!」
「お前がこっちがいいって言ったんだろ、大人しく力抜け」

ぬるり。女芯に指を這わせて擦り上げて弾く。

「だめっ、だめぇ…っ!あ、そこは、だめなとこぉ」

ぐにっと***の深い奥に先端が当たる。その先を押し開くように上から押付けながら腰を軽く揺すった。

「あぐっ…、!」

ずぶり。そんな音がした気がした。

「くっ、入っちまったなぁ…、***」

抱き寄せた背をそっと撫でる。髪に指を絡ませると上向かせて口唇に触れた。唇を啄むように軽く食む。目を閉じて衝撃にはあはあと必死に息を吐くそこを塞がないように、頬に瞼に、額に口づけを落とす。その度にきゅう、きゅうとうちが動いて締めつける。
しばらくして落ち着いた***のまつ毛が揺れて目が開く。鋭い目付きで見つめてくる。
初めて***と会った時のような目。変わらずに俺を真っ直ぐに射抜く目にたまらなくなる。

「はっ、やっぱダメ。お前は他の男にはやんねー、絶対ダメ」

後ろ頭に手を押し当てごろりと布団の上に寝かせると、足を抱えて細かく動かす。いつもよりずっと奥の熱い粘膜の擦れ合いに、苦しそうな嬌声が***の口からあがる。それでも気持ちのいいことを知り尽くした体は、いい所を楼主の熱に擦られるとじわりと高みに押し上げられていく。
ひくりと震える目の前の喉元にじゅっと吸い付いて痕をいくつも残した。

「いきそう?なか、すげーぎゅーってしてる」
「んっ、あっ、くっ……っああ、はーはーっ」
「いつものいくいくは?」

問いかけに***は腕を顔の前で組んで視界を遮った。
珍しい反応。拒むようなそれに不快感がじわり。また顔を出す。

「……っ、いいよじゃあ手、下げたくなるようにしてやる」

まろやかな胸を両手で揉みしだく。柔いそこに腰の動きが少し早くなるのを抑えながら頂きを横から潰すように摘む。数度ぎゅうと繰り返せば息の詰まったような喘ぎ声が聞こえる。
耐える***にぴんっと指で弾いてぷっくりとはれたそこを口に含んで吸って時折歯を立て、挟み込んで舌でざらりと舐める。
手を口に押し付けてはーはーと激しく息を繰り返す***にぢゅうと、ひときわ強く吸った。

「い゙ぁ…っ!ああっ、」

びくびくと跳ねる体を手のひらで落ち着かせるようにするり残った手で撫でる。脇を撫で腰を撫で。繋がった上の女芯をすりっと撫でて剥くと、同じようにきゅうとつまんで爪で優しく掻くように刺激を送る。
***の手が顔を離れて頭を押しやってくるのはすぐだった。その手を掴み顔の横の布団に上から押し付けるのと、たまらなく蕩けた顔をして達するのは同時だった。

「あああっ!…ああ、まっ、いったぁ、」
「お前簡単すぎ、気持ちいいことに頭弱すぎじゃね」

円をかくように熱を押し付け、抜いては入れて。どろどろに溶けてびくびくとうねるそこを、捏ねるように腰を動かす。

「い、ぃく、…っああ、またいっちゃ」
「……く、俺も、でるっ…」
「あああっ!」

ぎゅうと締め付けてくる中に熱を押し当てるとびゅうっと欲を解放する。搾り取るようにうねるそこに全て吐き出すように数度擦り付けるとずるりと抜いた。

「***…」

体を引き寄せると、とろりと下がるまぶたに口づけを落とした。



♭2023/07/05(水)


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