尋問と返答


剣呑な空気は一転。え、嘘だよね、なんて銀時は呟きながら桂の手の中にある警察手帳をふんだくると***の許可もなく中を見る。それを横から興味津々とばかりに万事屋の2人も覗き込んだ。

「副長助勤って書いてるネ。銀ちゃん助勤って何アルか?」
「あァ?じょきん、なんだよそれ、マヨラーを除菌すんの?副長退治しちゃうの?」
「いやしないでしょ!どんな仕事だよそれ」

ましまじと中を見ると何を見つけたのか***と手帳を交互に眺める。特別見られて困るものは入ってない。なのに物凄く居心地の悪いような違和感のある視線が3人から送られた。

「ねえ、###***ちゃん?これなに。お前真選組にちゃんと馴染めてる?」

名前を呼ばれ心臓が跳ねるも眼前に晒されたものにそんな気持ちは掻き消えた。根性焼き宜しく焦がされた顔写真。穴が開き、首から上が丸く無くなっていた。真選組を出た時は何ともなっていなかった。思い至るのは煙管を吹かしていた男。
***は顔を引き攣らせると溜息を吐き目の前に突き出されていた警察手帳を奪い返した。

「え、馴染めてんの?馴染めてないの?」
「馴染めてます!」
「じゃあ隊服は?ほらあの何かのブランドのように高そーな税金無駄遣いの制服。なんで着てないの?」

ああ、もうなんでこの男は痛いところを突いてくるのか。
『いいか、お前に隊服はない。それと公務や巡察、公の目に触れる仕事は一切させないからそのつもりでいろ』
瞳孔が開いた上司の言葉を思い出すと溜め息が出てくる。

「イジメか!!女だからってイジメられてるアルか!?」
「真選組は男社会ですからね。女性は居づらいんじゃないですか?」

真選組と関わりがあり、あの風変わりで個性の強い連中を良く知っているからなのか神楽と新八は先程とは打って変わって心配をしてくる。だがそんな流れをぶち壊す人間が一人。

「え、て言うかそもそもの問題。何で真選組隊士が、それも一人で鬼兵隊の船に居た訳?」

手錠を外し楽になった腕を擦りながら桂が挙手をしたかと思えばピンポイントで銀時よりも更に痛いところを突いてくる。

「確かに、なんでお前ひとりだけ?」

桂の意見に銀時も同意をし、なんで?と聞かれても答えなんてない。
そもそもふたりに遭遇する予定なんて皆無で、それらしい言い訳も用意していないし本当の理由なんて口が裂けても言えなかった。

「せ、潜入捜査?」

言い訳に思い付いたのは地味な監察の男。

「潜入捜査だぁ?女ひとり敵陣に突っ込むのが真選組のお仕事ですか。それで失敗して捕まったのか」
「え?」

それ、と銀時が指をさす先には両腕についた縛られた痕。また子と高杉に縛られた痕だった。

「そう、失敗」

***にとってそもそもの目的は高杉に会うこと。だから失敗ではなくむしろ成功だったのだが、ここで否定をして更に突っ込まれれば言い訳が苦しくなる。

「なるほど、失敗して捕まえられていや〜んあは〜んな事されたわけだな」
「されてないから」

桂のくだらない相槌に溜め息をひとつ。

「じゃあなんで裾、破れてるんだ?高杉の船で会った時から裾だけは破れていたではないか」
「これは、、」

銀時の止血の為に使ったから。
でもそれを口にするのははばかられた。
あの時、似蔵と対峙した時思わず無意識に名前を叫んでしまった。それも愛称で、昔の様に。意識は殆ど無かったと思うが、もし聞いていたとしたら知らないと言い張った女があの時の女と同一人物だなんて違和感しかない。

「邪魔、、だったから。女の着物って裾がこう、すっごい邪魔だったの!」

ていうか、そもそもなんでこんな尋問みたいなことされてる訳?
現状に納得いかない気持ちになり桂を見れば楽しそうな顔をしている。その意味が分からずに頭に?を浮かべていれば伸びてきた腕が肩を抱いた。

「で、今回のこと真選組はどこまで予測していた?」

コイツっ……!!
上手く誘導して情報を得るつもりだったのか。
腐ってもあの攘夷戦争を生き抜いた英雄。常に周りを見ている。

「お生憎様、私はそこまで知らされる権限が無いのよ。悔しかったらすっからかんなその脳みそでよーく考えたら?」

本当は知らされることは無かった事。それを昨日、土方とのやり取りで上手く聞き出してはいたものの、高杉の居場所も確定できていないため今後の動きなどは決まってはいない様だった。

「ただ、あれだけ空で派手にやってたら誰でも気がつくんじゃない?」

鬱陶しいと桂を押しやり舷に寄ると見えてくる現状。紅桜を積んでいた船舶の残骸漂う水面周辺では調査の為か何隻かの船が停泊し、傍の港にはパトカーが何台も停り警察が集まってきている。その中に和装ではない洋装の黒い集団を見つけて***は即座にへりから離れた。

やばい、真選組じゃんあれ。
こんな場面を見られたら勝手な行動をとった事に言い訳も何も通用しない。というか今度こそ沖田くんに捌かれる!!!獄に繋がれる以前に沖田くんというヘルが待っている!!!!

「ちょ、桂さん、お願い。早く降ろして?」

出来ればあの港からかなり離れた場所に!!!

「何が見えたアルか?」

***の狼狽える姿に疑問を持った神楽と新八がへりから頭を出そうとしたのを既のところで引き止める。かなり距離はあるから向こうから顔は見えない筈だ。でも、神楽の頭の色は危ない。

「ストップ!……って、ふたりとも!!」

何となく予想のついていそうな表情を浮かべた銀時と桂が眼下を覗き込もうとするのを手が足りず為す術なく見送れば、***と同じ反応をする銀時とそれと相反する反応をした桂が振り返った。

「どうします、白夜叉どの?」
「ヤメロオオオオ!!!そのニヤけた面やめろ!!!そして今すぐ船をどっかに降ろしてくれェェエエ工!!!!」





物騒な沖田くんの顔が過ぎりました

♭19/04/13 (土)

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