if…02 (if…01の続き)


ざぁざぁと雨の降る音だけが鼓膜を叩く。それはまるで世界から***と2人、隔絶されたかのような感覚を銀時に覚えさせた。
先程までの戦いの跡を洗い流すかのように、強く降る雨。
追いかけてくる敵もこの雨では視界も悪く諦めてくれるのではないか、だったらこのまま暫く止まなくてもいい。そう思うも、隣で余すとこなく雨に濡れた***を思うとそうも言っていられなかった。

必死に捜して見つけたときは刺すような寒さに体を縮こまらせ目をつぶり耐えていた。今は心做しか頬は赤みがさしているとはいえ、長く濡れたままでいると体を壊してしまう。
と、横目で***を見ていれば首筋を濡らす水滴がするり、胸元へと流れていくのが目に入った。つい目で追ってしまう。

やべぇ、落ち着け俺。今はそんなことを考えてる場合じゃねェだろ。

そもそも***の着物の下なんて一度も見たことも直に触れたこともない。恋仲なのに。
でもだからだろうか、想像すると止まらなくなる。

「…ちッ」

思わず無意識に舌打ちが漏れていた。
さわり、隣で動く音がして不思議そうに見上げてくる***の顔。

「何?突然舌打ちして」
「べつに」

特に気にならなかったのだろうか、***は話題を変えた。

「雨なかなか止まないね」
「そうだな」

少し変なことを考えていて顔が赤いかもしれない。そう思うと***の方から顔を逸らした。
すると耳の後ろ辺りをさわり、くしゃくしゃ。そんな感じに冷たい指が触れた。

「ふふ、銀ちゃんの髪の毛ストレート」

思わずその冷えた手を掴むと口元へと押し付ける。
俺の熱がこの冷たい指に伝われと。
へにゃり、そんな感じに笑っていた***の頬がさっと赤くなる。

「何がおかしいんですか?」
「あ、いや、ストレートもいいけど、私はいつもの方が好きだなって」

笑いながらも寒さからか緊張からかどちらか分からないが、震える肩をぎゅうと抱きしめると、顔を寄せる。

「ちゅーしていい?」
「ええ、なにそれ?」
「お前が急に可愛いことぬかすから無性にしたくなった」
「え、ちょっと、ま」

最後まで言わせず、冷えていつもより色を無くした口唇に熱を移すように重ねる。

「ん、、いい、って、言ってな、ん」

腕を回した着物は濡れて分からなかったが、触れた口唇はじわり、体温が上がった気がした。
でもそれでは足りないような気がして、頬に瞼に、額に。

「あ、ぎんちゃ、そこは…んっ」

首筋に顔を埋めて顎下に、項に…キスを落としていく。

「寒くねェか、…辛くねェか」

ぎゅうと全身で温めるように抱きしめたけど、お互いに濡れた着物を身につけたままでは上手くはいかなかった。

「…、大丈夫だよ、ありがとう」

体を離した時には色が少し戻っていて安堵する。
こつりと額と額をぶつければまた***は小さく笑った。

「早く止むといいね。そしたら銀ちゃんの頭、爆発しちゃうけど」
「好きなんじゃなかったけ?」
「ふふ、好きだよ」

そう言って寄せてくる体はもう震えてはいなかった。




♭22/09/27(火)

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