モブでも知り合いでもなく特別な人
体育祭を二週間後に控えた日、ホームルームで体育祭の概要が説明された。
学年別総当たり戦と、レクリエーションに分かれていて、学年別総当たり戦はヒーロー科に合わせているらしい。

噂ではヒーロー科の入試は色んなロボットがいて倒したりするとポイントがつくという試験と聞いた。つまり、体育祭もロボットがいて、それ以上の色々なギミックもあって、私には無理ってことだ。

ヒーロー志望は普通科からでもアピールするチャンスがあったり、プロヒーローが観戦に来ていたりするらしい。
確か母親も毎年体育祭に行っていた。仕事として行っていたから私は行かなかったけど。
今年の体育祭はオールマイトが確実にいると分かっているから、観戦者も増えるんだろう。オールマイトが解説に加わる可能性もある。

放課後、鞄に教科書やらを入れて帰る準備をしていると、クラスのみんなは盛り上がっていた。ヒーロー科の様子を見に行こう、と。

今見に行かなくても体育祭本番で見ることになるから、私は行こうという気になれない。盛り上がりに参加せずにスルーしていると、声をかけられた。

「陶子ちゃんもA組見に行かない?」
「あー、うん。いいけど……何で?」
「陶子ちゃん幼馴染がA組にいるんでしょ! いてくれると助かる」
「なるほどね」

クラスのほぼ全員が教室まで行ったら出てこれないだろう。私からかっちゃんを迎えに行くのもいいかな。

かっちゃんはクラスの人に私のこと彼女か聞かれると、すごい顔をする。だから私からA組に迎えに行くことはなかった。

これだけ野次馬がいれば揶揄う余裕はあるまい。ヒーロー科の教室に、向かうまでにどんどん人は増えていき、ヒーロー科の教室の前の廊下ではサポート科らしき生徒も大勢集まっていた。

「何でみんな集まるんだろう」

今、教室に行っても顔くらいしか分からないのに。何で行くんだろう。周囲から独り言のつもりだった疑問の答えが大勢寄せられた。

「事前に知っておいた方が体育祭を楽しめるじゃん!」
「敵情視察」
「この間の襲撃を切り抜けた奴らを見たい」
「ヒーローの卵を見ておきたい!」
「本番はプロヒーロー来るからそれの慣らし!」

テンション上がってつい口から出てしまったのだろうけど、一部めっちゃ失礼な発言も混じってる。みんなはとても興奮していた。

教室の前には大量の生徒がいて、出入り口を完全に塞いでいた。

「意味ねぇからどけ、モブ共」

教室の方からかっちゃんの声が聞こえた。
うわ〜〜かっちゃん機嫌悪いせいか口調が乱暴だな。
普段、私に言うより口悪くない? 普段こうやって過ごしてるの? マジで? もしや私には優しい方だったの?

「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!」って声には同意する。


心操くんはかっちゃんの態度に煽られたのか煽りながら宣戦布告してるし、驚愕でいっぱいだ。心操くんそんなキャラなの!? クラスではそんな風に見えなかったよ!?

B組の人もかっちゃんに威勢よく言い放っているし、喧嘩や口論になるのかなぁ、と思ったのに、かっちゃんは彼らを相手にせず人垣を押し退けて教室から出てきた。

途中で私を見つけるとついでに私の腕を引いて人垣から抜け出す。
そういうところが器用だと思うし、彼女とか聞かれる原因なんだよとか色々言いたいけど、今は言わないでおく。
絶対機嫌悪いし。

「何でいた」
「クラスのみんなが見に行くって行ってたから、たまには私が迎えに行くのもいいかなって。大勢いて、みんなが別のことに夢中なら彼女とかって聞かれないでしょ」
「物見遊山的なあれでもないんか」
「うん。本番で見られるし。宣戦布告しても戦う気ないしね。まぁそもそも戦えるほど強くないんだけど」
「ほーん」

かっちゃんは興味なさそうだ。もしくは興味ナシを装って疑っているのか。

「てかさ、モブはないよね。モブは。いつもモブとか言ってんの?」
「関係ねえだろ。お前はモブじゃねぇんだから」
「いやいや知り合い以外をモブ呼びはないって。驚いたんだけど」

かっちゃんは大きく舌打ちをして、ズサっと地面を蹴った。

あーーー、地雷踏んだかも。何かマズかったかな。母親ヅラしたみたいだったとか。それとも私に伝わらなかった別の意図があるとか。

「そんくらいでビビんなよ」
「体育祭でお行儀よくする気ないんだね」
「したところでボロがでるならしない方がいいだろうが」
「まぁお行儀よくしてなくても応援するよ。一位狙えるんじゃない?」
「初めから一位取るつもりだわ」
「いいね〜。頑張れ〜! 終わったらお祝いしようね!」
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