「遅くなっちゃったね」
「早く帰ろう!なまえ、暗いしオレから離れちゃだめだよ」
「うん、分かった!」
アカデミーの放課後、私とサスケは居残って手裏剣を投げていた。今日は死角の的の数を増やし、どれだけ正確に当てられるか勝負していたら没頭してしまい、気付いたら辺りは真っ暗だったのだ。
いつもは明るい木ノ葉の里も、日が沈むと静かになりまだ子供の私は一抹の不安を抱く。それでも、サスケと一緒にいれば怖いものはない、この時はそう思っていた。
「ねえ、サスケ…」
静かすぎる。暗いといってもそんなに遅い時間ではない。それなのに、誰ともすれ違わないし、物音もしないのはおかしい気がした。
不審に思った私は隣を走るサスケを呼び止める。
その時、電柱の上、何かいる気がした。私が見上げるとサスケもつられて上を見る。
「気のせいかな…」
「いや、オレも何かいた気が…」
そう言って揃って目線を元に戻した時だった。
「な、何だよ…これ…」
「ひっ…」
いつも優しくしてくれるおばさん、朝すれ違う時に挨拶してくれるおじさん、よく見知った人たちが血を流して地面に倒れていた。
サスケと顔を見合わせ、私たちは家に急ぐ。
「父さん!母さん!」
「サスケ…来てはならん!」
扉の奥からフガクお父さんの声が聞こえた。その声にいつものような覇気はない。
嫌な光景が頭の中を過ぎるが、それはサスケも同じだったようだ。開けなければ、と頭では分かっていても恐怖で身体が動かない。
舌を強く噛み、痛みで恐怖からくる身体の硬直を解いた私が恐る恐るドアを開けると、そこには倒れているサスケの両親と、奥に立つイタチ兄さんがいた。
「兄さん!父さんと母さんが!なんで!どうして!一体誰がこんなこと…」
「ミコトお母さん、フガクお父さん、今止血するから!」
兄に詰め寄ろうとするサスケ。肩掛けのショルダーバッグから包帯を取り出し応急処置をしに一歩踏み出した私。
しかしそれ以上前に進むことは叶わなかった。
投げられた2つの手裏剣。それはサスケと私のスレスレの場所を通って背後のドアに突き刺さった。2人の服の袖がピッと切れ、肌にはスパッと傷が付く。
「くっ…!」
「ッ!」
何故イタチ兄さんに攻撃されたのか分からず、その眼を見た時だった。
「万華鏡写輪眼…!」
「ぎゃあああああああああああ」
「いやあああああああああああ」
横でサスケが倒れる音が聞こえる。私もほぼ同時に倒れこんだ。
「どうして…兄さんが…?」
「己の器を量るためだ」
「本当の、両親じゃないの…!!?」
一緒にいたくてもいれなかった私には、己の器を量るためという理由で自らの両親に手をかけたイタチ兄さんの気持ちは理解できなかった。
「許せないッッ!」
「ふざけんなァ!」
唇を強く噛み、同時に走り出した私とサスケは左右に分かれ、イタチ兄さんに攻撃を仕掛ける。サスケと私がそれぞれの位置から拳を振りかざした時だった。
「くっ…!」
「ケホッ…」
腹部に鈍痛が走り、床に倒れ込む。少し向こう側では同じようにサスケが床に転がっていた。
イタチ兄さんはサスケの方に足を進めると、背中に背負っていた剣を抜いた。
「サスケ…!」
ザシュッ
私は残りの力でサスケの元に向かい、覆いかぶさるとすぐさま肩に激痛が走った。
「あああああああああああッッ!!」
「なまえ…!」
私の下でサスケが慌てる声がする。その後、サスケに何度も名前を呼ばれ、朦朧とする意識の中でサスケに肩を借り家の外に出た。イタチ兄さんとサスケの話す声が聞こえるが、私はそこで意識を手放したのだった。
悪夢の再来