「修行行ってくる!」
最近サスケは毎日朝早くから家を出ていた。話を聞いたところ、フガクお父さんに火遁の術を教わったという。その場ですぐには上手く出来なかったようだが、「父さんが直々に教えてくれたから絶対に会得するんだ!」そう張り切っていた。
私は私で秘密の特訓をしていた。見てくれているのはなんと、あのイタチ兄さんだ。サスケが知ったらさぞ羨ましがるのが目に見えているので、イタチ兄さんには口止めされている。
しかし、この修行がものすごくキツかった。
「なまえ、遅いぞ」
「次の動作が見え見えだ」
「もう終わりか?」
イタチ兄さんは容赦なかった。
最初こそ「お前には火遁の才がある」と言われ、術の修行をするのかと思いきや、それは後からサスケに教われとのこと。
「お前には、剣術を教える」
本気で斬りかかってこい、そう言ったイタチ兄さんに私は耳を疑った。
「そんなこと…!」
「オレを傷付けるのが怖いか?これでも暗部で毎日任務をこなしているんだ…随分と甘く見られたものだな」
にこり、と挑発するイタチ兄さん。万人に優しそうに見えて、たまにこういうところあるんだよね。
しかし言っていることは確かにそうだ。アカデミー生の私を捌くなど、イタチ兄さんには造作もないことなのだろう。
「分かった」
「安心しろ、なまえが何をしようと、オレには掠り傷1つ付けられないよ」
トドメの一言。あからさまにムーッとした私を確認すると、ハハッと笑う。
私は背中に構えた剣を抜き取り、体の正面で構えた。
「ハッ!」
「クッ!」
「セイッ!」
イタチ兄さんに向けて剣を振るう。しかし一向に当たらないどころか、イタチ兄さんは抜刀すらしていない。必要最低限の動きで私の攻撃を躱し続けているのだ。
「どうした?もう終わりか?」
本当に掠りもしない。私が肩で息をしていると、汗一つかいていないイタチ兄さんが口を開いた。
「なら、そろそろ反撃といこうか」
「えっ、こっちから攻撃する一方的な修行じゃないの!?」
抜刀したイタチ兄さんは「そんなこと言ったか?」と涼しい顔で言う。「確かに言ってないけども…!!」そんな反論虚しく、イタチ兄さんは正面から剣を振り下ろす。それを私はギリギリのところで自分の剣で受けた。
あまりの重みに立っていることができず、膝をつく。イタチ兄さんは相変わらず顔色一つ変わっていなかった。
「力比べか?オレよりももっと大男に斬りかかられたらひとたまりもないな」
そう言いながらイタチ兄さんがグッと腕に力を込めたのが分かった。私は耐えきれず、のしかかる重みを剣で横に流す。
「ここまでにしよう」
そんなこんなでイタチ兄さんによる修行が終わったのは、サスケが豪火球の術を会得したのと同じ頃だった。
各々の成長