家に帰ると玄関にはサスケの靴があった。先に帰っていたようだ。そのままリビングに入ると寝る時用のラフな格好をしたサスケがいた。
「よう」
「……」
お風呂上がりのようで、髪は濡れ、肩にはタオルが掛かっていた。冷蔵庫から牛乳を取り出したサスケはグッと飲み干し、リビングの入口で突っ立ったままの私の方に向き直る。
「飯食ったか?」
「…いらない」
少し涙声になってしまった。それに、なんだかサスケとの会話が久しぶりに感じる。
今日という1日はとても長かった。あまりにもこのサスケといる空間が穏やかで、先ほど言い渡されたヤマト先生からの不合格の言葉は夢だったのではないかとすら思えた。
「…なんかあったか」
私の異変に気付いたサスケが、持っていたコップを流しの中に置くと私の前まで歩み寄る。しかし、目の前にサスケが来ても私は顔を上げられず、目いっぱいに溜まる涙を溢さないように瞬きを我慢するので精一杯だった。
でも、きっとサスケは合格しているのに、同じように修行を積んできた私だけが落ちてしまった、取り残されてしまったことを伝えることができるほど私の心は強くなかった。
酷い劣等感に苛まれる。サスケが手の届かない人になってしまったようにすら感じた。
だんまりを決め込む私を見かねたサスケは私の手を取り、洋服が入っている箪笥がある方へと導いた。私はそのまま手を引かれ、大人しくついていく。
「明日は?」
なんかあるのか、という意味だろう。聞きながらも洋服箪笥の引き出しを開けて何やらゴソゴソと探すサスケ。下忍選抜試験に落ちた私の予定は何もなかったので、1〜2回横に首を振って答えた。
「じゃあとりあえず風呂入ってこい。待っててやるから。」
これ持ってけ、と洗い立てのタオルを渡され、再び手を引かれて着いた脱衣所へと押し込まれる。ちゃんとあったまれよ、という言葉と共に。
言われるがまま、散々演習で浴びた土埃等を洗い落とし、温かい湯船に浸かると、今日の出来事が走馬灯のように頭の中に流れてきて、涙が止まらなかった。
溢れ出す劣等感