「落ち着いたかよ」
私が風呂から上がると、ソファに座っていたサスケが顔だけこちらに向けて聞いた。
先程まで濡れていたサスケの髪は乾いており、ラフな黒のTシャツにスウェット生地の半ズボンといった格好だ。
風呂で泣き腫らした赤い私の目を見たサスケは、座ったまま私の方に左手を差し出す。
私は大人しくその手に自分の手を重ね、引かれるままにサスケの足の間、ソファの下のラグの上に腰を下ろした。
ゴォォとドライヤーの音が静寂な室内に響く。サスケの手が私の頭のラインに沿って動かされるたび、擽ったいような、心地の良いような、不思議な感覚に襲われた。
しばらく経って、カチッというドライヤーの電源を切る音と共に、サスケの手の動きが止まった。
「で、何があったんだよ」
回りくどい言い回しをしない、サスケらしい聞き方。それでも私は中々言い出せず、両膝を抱えて下を向く。
「黙ってちゃ分かんねぇだろ」
ほら、と抱え上げられて膝の上に乗せられる。縮こまっていたのが仇となった。一気に近くなった距離に一瞬ドキッとしながらも、昼間の出来事がフラッシュバックし、サスケの肩に顔を埋め、少しずつ言葉にし始めた。
「今日ね、下忍選抜試験…みたいなことをやったの」
「ああ、それなら俺のとこでもやった。」
やっぱり。サスケもやっていたんだ。それに、この感じだと受かっているとみて間違いない。一瞬次の言葉を言い淀んだ私を見て、サスケは「で?」と続きを促した。
「それに、落ちちゃって、でも、チームワークを試されてると思ったから、トビオとアミに、協力しよって言ったんだけど、やだって言われて、でも結果的に落ちちゃったことには変わりなくて、でもやっぱり悔しくて、」
サスケの首に腕を回し、肩のところを涙で濡らす。話し出したら止まらなくて、どんどん言葉が溢れてきた。サスケの手が私の後頭部をゆっくりと自分の肩へと押しつける。
「…また来年、挑戦して受かれば良い。なまえなら受かるだろ。」
未来への期待