Pale blue | ナノ

 
「さあ、午後の演習を始めようか」

定刻通りにヤマト先生が現れ、アラームのセットが完了した。

午前の演習ではっきりしたが、私たちは単独ではまずヤマト先生には勝てない。つまり、全員別別に挑む時点で、完全に勝機を失っているのだ。やはりこれは3人で挑まなければならない試験に違いないと思うのだが…

「午後もどんな手を使ってもいいからね。それじゃあ、開始!」

ザッ

私たち3人はそれぞれ一斉に身を隠す。
広場の中央に立ったまま動く気配のないヤマト先生に向けて、私は分身を使い2方向から手裏剣を投げた。私は午前と同様の戦法…まあ午前の時の結果は本意ではなかったのだが…本体と見せかけた分身の私がクナイを投げた後にさらにクナイを投げ軌道を変える。

「午前と同じ手か…もう少し考えた方がいいね」

そう言ったヤマト先生は、目にも止まらぬ速さで私の分身のいる場所に向けてクナイを投げる。あまりのスピードに避けきれなかった分身は、2体ともボフンっという音と煙とともに消えていった。

そして地面を蹴ったヤマト先生は、本体の私のいる場所に向かって距離を詰めた。
私が午前同様手元のワイヤーを切ると、四方八方からヤマト先生に向けてクナイや手裏剣が襲いかかる。

「まったく、ボクもナメられたものだ」

それをいとも容易く弾き返すヤマト先生。

…しかし、弾き返し終えて一歩踏み出そうとしたところには私が仕掛けておいたトラップのワイヤー。…はフェイクで、本命はそれを避けたところに張ってある2本目のワイヤーだ。1本目のワイヤーより見えにくく加工してある。

「フェイクワイヤーか…少しは考えたようだけどこれだけでは甘…」

「火遁・豪火球の術!」

「何ッ!?」

ゴオオォ

これはアカデミーで習ったものではない。サスケがフガクお父さんから教わり会得した術を教えてもらったのだ。
人は勝てると思った瞬間に隙が生まれるものだと昔イタチ兄さんに教わったことがあった。私の両親を、一度ならず二度までも奪ったイタチ兄さんを許したわけじゃない。が、学んだことは例えそれが憎い相手から得た知識だろうが、自分の糧にして強くなっていくんだ。

クナイや手裏剣、ワイヤーの対処をしているヤマト先生の傍らで、私は木の影で火遁の印を結び大きな火の球を起こす。ヤマト先生が本体だと思って距離を詰めてきた私も分身だった。真の本体の私は、豪火球を放つタイミングを見計らって身を潜めていた。

炎と土煙が収まった場所を見る。

「っ…いない…」

地面は丸く抉れていたが、ヤマト先生はいなかった。私は背中の刀を抜き、気配を辿る。

「後ろ…?上…?」

「ここだよ」

ヤマト先生の声が聞こえてきた時にはもう、私は木のようなもので拘束されていた。

「っ…!」

「しばらくそこで大人しくしてもらうよ。」

身動きが取れない私に、ヤマト先生は近付いてくる。すぐ目の前に鈴があるのに取れないもどかしさ。

「それにしても、その年でこれだけの火遁が使えるとは驚きだなあ。そういえば、火遁はうちは一族が得意な忍術だったね。あのうちは一族の子と一緒に暮らしているんだっけ?」

「まあ…そうですけど」

サスケから教わった術…もとい、フガクお父さんから教わったと言っても過言ではない術が、いとも簡単に回避された私は自分の無力さを痛感する。それでも沸き起こってくるのは絶望ではなく無力な自分に対する怒りだ。もっと修行を、もっと実践を積まなければ。

なんとか拘束から逃れようとするが、ピクリとも身体が動かない。

「この術何ですか?木の術があるなんて習ってないですけど」

「ああ、それは木遁だよ。ボクはちょっと特殊でね。」


リベンジマッチ

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