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「いえ、肩は凝っていないので」

 ただでさえ三上の放つ危険な色香に呑まれて理性が働かなくなっているところに、肩揉みなどされては堪らない。

 陶器のように美しい指先で触れられてしまったら、自分が何をするのか分からないという恐ろしさに、伍代は慌てて首を振り、魅力的な申し出を断わった。

「残念ですね。伍代さんのは大きいから、揉みごたえがありそうだったのに」
「……」

 もちろん、三上のいう“伍代さんの”というのは、伍代の“肩”の話である。

 がっしりと逞しく筋肉質な伍代の身体は、肩幅も広いので、肩揉みのし甲斐があるだろうという話をしているのは分かっているつもりなのだが。
 悪戯なネコの瞳を輝かせて“伍代さんのは大きい”などと言われると、伍代の雄の部分が刺激されて、下半身に怪しげな熱が生まれてしまう。

「本当に大丈夫ですか、伍代さん。顔が赤いみたいですけど、風邪ですか?」
「……大丈夫です」

 厳ついヤクザ顔の客がいちいち動揺するのが面白いらしく、三上は時折こうして際どい言葉の悪戯をしかけて、伍代の心をどうしようもなく掻き乱すのだ。

 遊ばれていると分かっていても毎回期待通りの反応を示してしまうのだから、本当にどうしようもない。

「もう一杯、コーヒーをいただけますか」

 珍しく二杯目のコーヒーを注文した伍代に、美貌の副店長は細い眉を微かに跳ね上げ、上品な色気の漂う口元に笑みを浮かべて頷いた。

「かしこまりました」

 肩を揉んでもらわなくても、カフェの女王が無駄のない動作で丁寧にコーヒーを落とす姿を眺めているだけで、一日の疲れは癒える。

 新しいカップに湯を注いで温め始めた三上の姿を見つめながら、伍代は自然と、白いシャツとカフェエプロンに隠された身体のラインを脳内に思い描いていた。

 長身の高田や香田と比べると三上の背はやや低く見えるが、それでも成人男子の平均ラインは超えているはずだ。
 手足が長く、ウエストの位置で結ばれたカフェエプロンの紐が、ほっそりとした腰のラインを更に強調して見せていた。

 あの細い腰を背後から抱えて、小さな尻に、いきり立った自らの肉棒を無理矢理突き入れたい。

 白いシャツとベストに隠された胸に色付く突起を抓り上げたら、三上はどんな声を零すのだろう。

 しなやかな筋肉に包まれた色白の身体を何度も突き上げて、鼓膜をくすぐる甘い声が掠れるまで泣かせたい。
 気高い男の身体に所有の印を刻み込むように、その最奥に、自分の欲望を注ぎ込みたい。

 湧き上がってくる雄の欲望は、伍代の全身の血を熱くさせ、下半身を疼かせる。

 こんなことを考えていると知られれば、二度と口をきいてもらえなくなると分かっていながらも、手際よくドリップを続ける三上の姿を見つめながら、伍代の頭の中では不埒な妄想が膨れ上がっていた。




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